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転生紀行  作者: ◎詩友◎
第一章〜幼少期〜
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第三話〜これからの方針〜

 朝。

 それは、一日の中で最も陰鬱になる時間帯である。

 少なくとも俺の中では、最悪の時間帯としてのレッテルが貼られている。

 理由は明快だ。朝起きると、まず眠い。起きることへの拒絶反応はこの襲い来る眠気が原因だろう。

 二度寝、三度寝は日常茶飯事。それどころか五度寝して頭が痛くなることだってある。

 起きたところでいい事は無いのに、寝ていてもいい事は無いとは驚きだ。


 それだけではない。朝は、一日の始まりである。ある人は、これからの時間を夢想しその日の活力とするかもしれない。ある人は、嫌気が差しながらもその一日を頑張ろうと考えるだろう。

 しかしだ、別段俺が社畜……失礼。社会人の鑑というわけでもない。というか、ニートなのだからそんな思いを馳せる訳も無い。


 しかし、今日この部屋で覚醒したこの俺、一ノ宮隼人(イチノミヤハヤト)は違う。いや、違うというのならこの肉体であるクロム少年がなのだが……。

 ともかく、今の俺は充実している。昨日など、明日は何をしようかな〜、とか考えていたほどである。前までなら、明日はどうやって暇を潰そうかという悩みだったのでものすごい進歩だ。(しかも結局はネトゲかエロゲをする。)


 なにしろ異世界だ。一度は夢見たこともあった異世界。

 魔法があって、無双をして、某国の王女とかを助けて、ハーレム形成。男なら、そんなのを思って夢描くだろう?

 でもさ、

 最近は異世界転生の小説とかでも成り上がり系の小説は多いと思う。決して悪い風潮ではないし、むしろ小説という一つの文章を書き上げているということで尊敬できるのだが、もし自分がそうだったらと考えると恐ろしいではないか。


 何故こんな話をしているかというと……。

 今の俺の視界には、信じ難いものが映っているからだ。


 ーーーーー

 クロム・アルテミス 4歳

 魔力総量 100

 適性属性 無し

 ーーーーー


 ……お分かりいただけただろうか。

 これは、自身の適性属性を調べる事ができるという魔道具である。確かこの魔道具は説明したと思う。

 5歳で調べる、ということだったそうだが俺が直談判して使わせてもらった。

 少し上目遣いで可愛くお願いしたらコロリだ。家の両親は親バカのようだな。


 ここで両親について。

 母はアリス・アルテミスという。4歳にもなったら覚える。彼女は一言で言えば美人だ。日本人なら目を奪われるであろう眩しい金髪。それと合わさるように、俺的外国人イメージのブルーの瞳だ。更に、家庭的なお母さんの彼女は常に微笑みを欠かさない。怒っていると、それが女王様の冷笑に思えるので不思議。


  この世界には、様々な髪や瞳の色を持つ人がいる。それは緑だったり、紫だったりと本当に多種多様。本当は、体内の魔力の質とかが影響しているらしいが、難しいので異世界の不思議現象として処理しておいた。


 次に、父はウラン・アルテミスという。今更だが、俺のクロムも、父ウランも向こうでは元素記号なんだな……。

 彼は、薄いあごヒゲがダンディーなイケメンである。アリスと同じく金髪の碧眼だが、彼女と比べると少しくすんだ色合いだ。金髪といってもやはり様々だ。

 あと、挙げるべき特徴とするなら酒呑みだ。時々酒臭いのでアリスに言いつけている。

 それと、アリスには弱いようでこの家での発言力もそこまでである。


 さて、本題だ。上の三行が魔道具による鑑定結果な訳だが、最後の三行目。そこには、無しとの2文字が書かれている。どういう意味かとアリスに聞くと、無しとは適性属性が無いことを表すらしい。だよねー。

 ということで、俺の異世界無双計画は第一歩を踏み出す前に頓挫したのだった。


 俺は泣いた。

 声をあげてむせび泣いた。仕方ないだろう?転生してきた異世界で、せっかくの魔法は使えないのだから。

 そんなオレをアリスは背中をさすりながら慰めてくれた。ウランは剣術を教えてやると言ってくれた。


 ウランは剣士だ。仕事に出掛ける時はいつも腰に剣をかけている。職業は冒険者だ。この世界には冒険者ギルドがあるしな。

 反対にアリスは魔術師と呼ばれる。といっても、魔法を使えれば全員が魔術師と呼ばれるのだが……。

 その分、魔術師になり得る適性属性の発現率も少ない。

 だから、俺に適性属性が無くても仕方ないといえば仕方ない訳だが。

 そう考えると少し、沈んでいた心が浮かんでくる。

 仲間がいれば気が楽になるな。人の不幸は何とやらってやつだ。


 ちなみに、魔力総量という方は多いらしい。

 これは、自分の身体にある魔力の合計だ。これも勿論増えていくのだが、俺の場合はかなりの量らしい。普通、この年齢なら10もあれば十分なのだが……。

 魔力があっても使えなければ意味が無いので逆に悲しくなる。

 魔力は剣術などで剣に魔力を纏わせて強化したりできるので、全くの無駄ではないところが唯一の救いであろうが。


 ともあれ、起きてしまった現実はどうにもできない。だから俺は決めたのだ。

 魔法以外で頑張ろうと。

 あ、魔法を諦めたわけじゃないよ?

 折角の異世界だ。使えるならどんな手を使ってでもやってやる。


 ひとまずは剣術だな。

 オレが気をとりなおしたのを見てほっとしたように安堵の息を漏らしていたウランに言う。


「父さん、オレに剣術を教えて下さい」


 父ウランはもちろんそれを快諾。その日から、オレは訓練を開始することとなった。


 まず基礎体力をつけるための筋トレ。腕立てとか腹筋、背筋やスクワットといったものだ。

 これが大体百回で一セット。を朝昼夕に一セットずつ。

 そして、終わるとランニング。家は広くないので外でのランニングである。父ウランの監視のもと、オレの住む村を二周。これは朝と昼に行った。

 流石異世界。正直、子供にやらせる内容じゃないぞ。


 明日からも暫くはこんな感じで進めていくらしい。別に簡単だとは思っていなかったがニートには堪える内容だった。(一応、運動はしていたがそれにしても辛かった)


 母アリスお手製の食事を頂いて、部屋に戻る。この部屋は、昔ウランが使っていたらしい部屋だ。

 今では俺の部屋なわけで、ここに本を持ってきて読んだりしているため、部屋は本が乱雑に置かれており、汚い。


 この世界では紙が貴重ということはなく、本もまあ流通している。アルテミス家のような平民の家にもあるのだから相当だろう。かといって印刷技術はないのだが…。

 それと、この世界は家名といった概念は無い。貴族とかはいるのだが、それこそ王族だったりといった超超高身分のやつら位にしかミドルネームとかはつかない。


『疲れたー……』


 誰が聴いている訳でもないので、天井を仰ぎ見ながらふと日本語で呟く。

 やはりあの訓練は体にきていて今すぐにでも布団へと潜り込みたいのだが、やることがある。

 それは、魔力の増加だ。いくら多いとはいえ子供ではの話。大人とは比べるべくもないだろう。しかし、今から増やしていけば?もしかすれば大人顔負けの魔力量になっているかもしれない。

 ならなくてもその時はその時だ。努力は無駄にならない……。はず。


 オレは周囲に散らばっている本の中から目当ての本を取り出す。題名は、【魔力と魔法】だ。これは、魔力と魔法の関係について紐解いていて、それに基づいた練習方法などが書かれている。

 中には魔力増量のページもあった筈なのだ。オレはそのページを探す。目次がないのは地味に辛い。

 そしてそのページを見つける。そこにはこう書かれていた。


 ーーーーー

 魔力総量の増加は、集中力を必要とします。必ず体力を回復させて臨んでください。


【方法】

 ーーーーー


 ……ま、いいよね。明日でも!

 オレはベッドに直行し、泥のように眠って明日に備えるのだった。

暫くページ数が不安定になるとは思いますが、ご了承下さい。

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