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緑の柱  作者: 美羽
Emerald
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Preparation


バルドも目を覚ましたということで、早速エメラルドを探しに行こうとした二人を、フィリアは慌てて押しとどめた。



「ちょ、ちょっと!今から行く気?

もうすぐ夕暮れ時よ?

それにバルドは目が覚めたばかりじゃない。

今日はまだ休んでないとだめよ」



不満そうにする二人にフィリアはため息を吐いた。

全くこの二人は前回ドラゴンに襲われたというのに、学習というものをしないのだろうか。



「とにかく、出発は明日の早朝よ。

夜の森は危ないんだから。

それに準備も必要だし」


「準備って?」


「ここからエメラルドがある場所まで、普通に歩いたら二日はかかる距離だそうよ。

だから少しは水と食料を持っていかないと。

というわけで、少し外に出てくるわ。

今日の分の食材ももうないしね」


「手伝おうか?」



立ち上がろうとするルークを押しとどめる。



「二人は休んでいて。

バルドは勿論だけど、ルークも看病で疲れてるでしょ。

私一人で行けるわ。

だから留守番をお願い」



なにか言いたげなルークを制し、バルドに確認の目線を送る。

バルドが頷いたので、フィリアはさっさとルークをおいて食材集めへと出かけた。











「起きてたの?」


「お、帰ったのか」



フィリアが食材集めを終え、洞へと戻るとバルドが起き上がって大剣の手入れをしていた。

ルークはどうやら寝ているようだ。

フィリアに気を使ったのか、剣をしまおうとするバルドに気にしなくていいと伝える。



「今日は肉を捕ってきたわ」



自慢げに見せたウサギに、バルドは感心したように言った。



「狩りもできるのか。

しっかりしてるな、ルークに見習わせたいくらいだ」


「ふふっ、さすがに毎日野草や木の実だけだと飽きてしまうしね。

それに体力をつけるなら肉が一番よ」


「以外にいろいろ考えているんだな」


「以外には余計よ」


「まあ拗ねるな」



膨れ面をしたフィリアをバルドが宥めると、フィリアはポツリと呟いた。



「なんだかバルドってお父さんみたいね」


「……そんなに年食ってないぞ」


「だってなんだかんだルークの心配したりしてるじゃない。

昼間私を疑ったのもルークを危険にさらさないためなんでしょ?

木が言ってた」


「まあ…なんだ。

俺はこいつの保護者みたいなもんだからな。

こいつの親に俺は返しきれないほどの恩を受けた。

その人にルークを守ってほしいと頼まれたんだ。

こんなことで恩返しができるとは思ってないが、できるならあの方の役に立ちたい」


「ふーん」


「ふーん、ってお前、真面目に聞け」



フィリアの返答がおざなりに思えたのだろう。

少し気分を害した様子の彼にフィリアは慌てた。



「ちゃんと聞いてたわよ!

でも…そうね、なんだかそういうの、実感がもてなくて」


「実感?」


「うん。

そんな風にいろんな人といろんな関係を築いていくものでしょ?普通の人って。

でも私にはそんな経験ないから。

全部、遠い世界のことのように感じるの」



遠くを見つめるフィリアにバルドは何と言っていいかわからない様子だった。



「ふふっ、気を使わせちゃったわね。

私そろそろ夕食の支度をしてくるわ。

もう少ししたらルークを起こしてあげて」



そう言うとバルドの返事も聞かずに去っていく。



「…ねえバルド」


「…やっぱり起きてたか。

盗み聞きは感心しないぞ」


寝ていたはずのルークが急に声をかけてもバルドは驚くことはなかった。


「提案したいことがあるんだけど」


「人の話を聞け。

…まあ、お前の言いたいことは大体わかるが」


「バルドは反対?」


「…料理の腕は認める。

正直、王都を出て久しぶりにまともなメシを食った。

だが、戦えるのかが問題だな。

狩りができるところを見ると心配はなさそうだが」


「じゃあ、バルドは概ね賛成ってことだね」


「あとは本人の希望次第だろう」


「なんだかんだバルドって甘いよね」


「うるさい。

そろそろメシもできたはずだ、行くぞ」


「照れ屋なんだから」



そう言って笑ったルークはバルドに一言多いと殴られた。



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