Take back
フィリアは溜め息を噛み殺した。
全く呆れる。
人の忠告を無視し、勝手に進み、勝手に戦い、挙げ句、倒れるとは。
クゥルルルル
心配するような声に顔を上げると、ドラゴンがこちらを窺っていた。
その様子がまるで悪いことをして叱られる前の子供のようで、フィリアの顔に思わず笑みが浮かぶ。
「大丈夫よ。
貴方は何も悪くないもの。
こっちこそごめんなさい、眠りを邪魔してしまって」
そう言って大きな額を撫でると、ドラゴンは嬉しそうに目を細めた。
撫でられ満足し、大きな足音を立てて去っていくドラゴンを見送りつつ、フィリアは考える。
この二人をどうするか。
男の方は酷い怪我に見えるが、ドラゴンは手加減していたため実をいうとそこまで深い傷口ではない。
青年もかすり傷が殆どだ。
ただ、ドラゴンの牙や爪には毒がある。
このまま放っておいて見殺しにするか、治療を行うか。
(人の話を聞かないから、こうなるのよ)
正直に言って自業自得であるため、フィリアとしては放っておきたい。
だが、森に穢れを撒き散らされては困る。
(―――しょうがない、か)
結局のところ、この二人の面倒を見ることしかフィリアには選択肢がないのだ。
嫌々フィリアは男達を自らの家へと連れ帰るのだった。