Encounter
―――ザワリ
森が騒ぐ。
フィリアはそちらの方向をじっと見つめた。
何者かが、この森に侵入しようとしている。
剣呑に、目を細めた。
ギリッと苛立ちを顕に唇を噛む。
「―――また、身の程知らずが。
…えぇ、大丈夫よ。
今、行くわ」
誰に対してだろうか、呟いて。
彼女は身を翻した。
ルークは辟易していた。
木々が鬱蒼と生い茂るこの〈祈りの森〉は、その名に似合わず暗く、じっとりとした空気が満ちている。
これで何度目になるかわからない溜め息を吐くと、同行者が堪えきれずに毒づいた。
「おいルーク、先程からいい加減鬱陶しいぞ」
「そうは言ってもバルド、さっきからいくら歩いても景色が一向に変わる気配が無いじゃないか」
ルークが言うと、同行者――バルドも仕方なしに頷いた。
「まあな、だが、ここにあるんだろう?」
「どうだろうね」
バルドはその答えに方眉をあげた。
「おいおい、お前のその腰のものがこの森に強く反応したから、俺達はわざわざこんな森に足を運んだんだぞ」
「僕にも今一よくわからないんだよな、この剣。
大体―――」
「……待て。
何か来る」
ルークの言葉を遮って、バルドは背に負った大剣へと手を伸ばした。
ルークも慌てて周囲を警戒する。
ザワザワと、梢が騒ぐ。
二人は無言で、なにが現れても対処できるよう腰を低くおとした。
ザワリ
一際大きく、木々が揺れた。
次の瞬間。
「立ち去りなさい」
目の前には美しい少女が立っていた。