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幼馴染みと青春

悠君はなれた手つきで林檎の皮を剥いていく。


「悠君って、林檎剥くの上手いよね」


「ん?」


「僕が入院ばかりしているから上手くなったの?」


そう考えると、何だか胸が痛くなった。


紛れもなく、僕は自殺未遂で入院している。


そんな僕の為に、林檎を剥くのが上手くなったのであれば……。


流石の僕も、悪いと思うのだ。


「杞雪は具合が悪いんだから、そんなこと考えなくていいんだよ」


やっぱり、悠君はずっと優しい。


「でも……」


それでもまだ逃げ出そうとする僕を、悠君はただ優しく見守っていてくれる。


「いーんだって!俺が好きでやってるんだから!」


「……」


「はい、高松さーん、どうしましたかー?」


ここにして、馴染みのナースがいつものテンションで病室に入ってきた。


「あら、悠さん。今日もお見舞いね。ゆっくりしていって下さいね〜」


悠君はペコリと頭を下げ、剥き終えた林檎とフルーツナイフをサイドテーブルに置いた。


「これ、取って下さい」


僕は、いつものナースに、いつもと同じことを要求する。


何度も。

幾度も、繰り返す。


テキパキと点滴を外してしまうと、ナースはそそくさと、病室を出て行こうとする。


「何かあったら、また呼んで下さいね」


ナースが出て行き、病室に再び沈黙が訪れた。


無性に歯がゆくて、なんとも言えない気持ちになる。


「ほら、林檎剥けたぞ」


優しくされると、僕はもっと弱くなってしまうのに。


「……あ、悠君。紙袋ちょうだい?」


「ん、あぁ」


頭上の棚にしまわれた紙袋を悠君が素早く取ってくれた。


紙袋に入っているものは、もちろん着替えである。


ぱふ、と紙袋を渡される。


「ありがとう」

「おう、……ん?着替えるのか?じゃ、後ろ向いてるな」


そう言って悠君は後ろを向こうとして、振り返った。


「どうして?」


僕は何故か疑問に刈られ、悠君に話かける。


自分でもそれが、何に対するどうしてだったのかは良く解らない。


僕の沈黙により会話は途切れ、病室に静寂が満ちる。


「どうしてって、杞雪は女の子だろ」


呆れた様に悠君が言った。


幼馴染みで、昔から目の前で着替えたりしていたから悠君に対しては抵抗がないのだが。


悠君も前の入院の時は普通に見ていたような……。


「杞雪ー、お前子供の頃の乗りで言ってるだろ?よく考えろよ。もう15だぜ、俺ら」


「な〜んだ。悠君も男の子なんだね」


とか言っときながら、悠君が見ている中で僕は着替え始めた。


見せつける様に(笑)。


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