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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

すべては神の言うとおり

作者: こめ
掲載日:2026/09/13

私は名の無い普通の神父だ。

ただ、人と違うところは生まれつき『ソレ』の声が聞こえる。


"それ"は時に単数であり、複数である。"それ"は時にモノであり、概念である。"それ"は時にヒトであり、カミである。


【ソレ】は毎日、私に要求してくる。〈【オレ】にリンゴを喰わせろ〉やら〈【オレ】を風呂に入れろ〉やら、酷い時には、〈アイツを殺せ〉と。

【ソレ】の要求をその日のうちに実行しなければ、その要求が【ソレ】が起こす超常的ななにかにより遂行され、数刻から数日の間に不特定多数のものにも、【ソレ】によって都合よく解釈された同じ要求が降りかかる。(これも【ソレ】の気分しだいで選んでいるのだろう)結局なにをしても【ソレ】の言ったとおりになってしまう。

そんな状況でも、『神父に殺生などできるわけがない。』とか考えている時期もあった。

つい先日までは。


「【オレ】は神様なんだ!」唐突に【ソレ】は自白した。

どうやら【ソレ】は神様だったらしい。

神父たるもの、神様の仰ったことは聞き入れなくてはならない。

神父なのだから…


私は、殺生をしてしまった。


今日の【ソレ】には珍しく実体があった。そして、いつも通り私に要求してきた、

「【ワタシ】を殺せ」

と。

要求に殺生が含まれるとなにが起こるかわからない。気まぐれで生命が滅ぶかもしれない。

『殺さないといけないのに…』

躊躇った。

〈殺せ〉と言われても生涯を共にしたかけがえのない相棒だ。そうそう殺せるハズがない。


一生涯を共にしてきた相棒と、我々、生命の存続…


愛する妻も子供もいる…


秒針の奏でる音が1音1音重くのしかかる。

日が回るまであと数分。


案外、どんな選択も天秤にかけてみるものだ。

私は、日が回る前に少しの躊躇いを見せ、【ソレ】を殺した。


すぐ懺悔した。

相棒と呼べる存在をこの手で殺めたのだから。

それで神様は許してくれるかはわからないが、とにかく懺悔した。

その結果、教会からも家族からも追い出されてしまった。

懺悔していたところを広められてしまった。

私はなんのために相棒を殺めたのか…


あまりの出来事が続き呆然と景色を眺めていた。

鳥が飛んでいる。木々が生きている。空は澄んでいる。


「あぁ、なんて…

なんて地球はキレイな──」


日付が変わる──


「!?」

唐突に体が空へ落ちていく。

──刹那、私はすべてを悟る。

そしてゆっくりと、死を受け入れた。


次の瞬間、グシャッと私の体が鈍い音をたてる。


目を開けると地球を上から見下ろしていた。

きっとここは死後の世界なのだろう。

隣には明らかに怒りを浮かべた【ソレ】がいた。

私は【ソレ】の要求を満たせてなんていなかった…

【ソレ】は確かに〈【ワタシ】を殺せ〉と言っていたが、そもそも【ソレ】の一人称は【ワタシ】ではなく【オレ】だった。

ではいったい、誰を殺せばよかったのか…

その答えは、【私】だ。

私は、今まで自分のことを【私】と呼び続けていた。

名前が無いから、他人に呼ばれることも無かった。

【ソレ】にとっての私の名前は【ワタシ】だったのだ。

その結果がこのザマだ。さらに自分が愚かしく思えてくる。

いったい要求を満たせなかったことでなにが起こるのか。

私はその結果を…

これからの地球の行く末を見守ることになる。

【ソレ】の要求を満たせなかった者として…

【ソレ】の相棒として…


数刻後──

所々で人が地球が、死んでいく…

星々が未熟な果実のように次々と地に落ち、太陽は消え、月が血に染まり、空は剥げ、地に存在するすべては焼き尽くされた。


そのあまりに凄惨たる光景は、エスカトンを彷彿とさせた。


「あぁ…」

「「すべては神の言うとおり」」

pixivの方にも投稿してます。

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