神さま、首を傾げる。
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俺達がセリアに案内して貰っているオプスクリス開拓村は、一年の大半を闇に覆われた、太陽が昇らない大陸:オプリタス。
その南東に位置する、名前の通りオプリタス大陸を開拓するために国から派遣された人々が住んでいる、いくつかの開拓村のうちのひとつだ。
ソコは太陽が昇らない、と事前に言われては居た。
その時は何をバカなと、嘲笑しか出来なかった。
イヤ、だって、日周運動によって太陽が東から出て西へ沈むのは、常識じゃない?
もちろん北極圏の冬至前後、もしくは南極圏の夏至前後に見られる極夜のような現象はあるよ??
極夜の間は地域によって、二ヶ月もの長期間で太陽が昇らず、日中でも薄明状態にしかならない。
それくらいは、施設のマザーコンピューターに接続すると使える百科事典のような「知識」にアクセスせずとも、知っている。
だがココは異世界。
地球の常識が、通用しない。
その事を、改めて実感する事となった。
この大陸に上陸してから既に何日も経過をしているが、マジで太陽が昇らないでやんの。
それでもまだ、この辺はなだらかな地形が続いている分、マシだろう。
山が連なっていたら、遠くに見える微かな光さえ届かず、闇に閉ざされていただろうから。
施設で過ごしていた頃の、消灯時間後の暗闇とは、質が全然違う。
アレはやろうと思えば、スイッチひとつで周囲を明るく照らす事が出来た。
任意で明暗を調節可能なのだから、特に不安に思うような事は無かった。
この世界に来て、煌々と輝く太陽を、見慣れてしまったせいなのだろうか。
ずっと暗い世界にいると、言い表しようのない、焦燥感に駆られる。
日光に当たっていないから、ビタミンDが生成出来ていないのかなとか、セロトニンが分泌出来ていないせいなのかなとか、理由に当たりは付けられる。
だが原因が分かったとしても、この不安感は拭えない。
切実に精神障害が出る前に、こんな場所からはおサラバしたいものだ。
それも全て、この大陸を守護する闇の精霊の影響だ。
たった数日で身体に不調が出ると、守護と言うよりは、実は呪っているんじゃないだろうかと勘繰ってしまう。
魔物は自然環境への適応能力が高いようだが、ヒトはなかなかそうもいかない。
開拓村の皆は、どうやって過ごしているのだろうか。
もしかしたら、全滅しているんじゃないか、とすら思った程だ。
実際は、生きているようだが。
セリアは元気に駆け回ってはいるけれど、鑑定眼を通して見てみるとやはり、アチコチ問題は多いようだ。
栄養状態が、非常に悪い。
優遇されるべき子供が、コレだろう?
大人の心身は更に不健康に違いない。
そりゃ風邪が蔓延すれば、死人も出るわな。
子供と断じるには、彼女は少々、悩ましい年齢ではあるが。
見た目は十歳やそこらなのだが……その実、十四歳。
この世界の成人年齢は、十五歳だ。
今までこの世界で出会った、どの子供よりも大人びているとは思ったが、実際、もう少しで立派な淑女とされる年齢だった。
そりゃオモラシをしたとなれば、悲鳴も上げるわな。
角骸鯨もそうだが、他の大陸には系統種すら生息していない、この大陸特有の魔物や植物が多数自生している。
ソレ等から採取する素材は、薬や防具を始めとする、人々の生活を豊かにさせる物に加工出来る。
だが太陽が出ないせいで、とにかくこの大陸は全体的に寒い。
永久凍土が全域に広がる、雪と氷に閉ざされた世界だ。
酷いと吹雪によって、視界がゼロになる日もある。
人が生きるには、余りにも過酷な大地だ。
だがソレ等の問題を差し引いても、魅力的な土地でもある。
そのため国が有志を募り、多額の支援金を渡して開拓をお願いした。
それがなんと、一〇〇年程前の事らしい。
ヒトが生まれて死んでと、何代もする年月が流れている。
視察ってもっと、こまめにするものじゃないのか?
長生きしていると、時間が流れる感覚が普通の人と違ってくるのだろうか。
しかもカノンが‘’多額の支援金‘’と言う位だ。
この開拓には、相当な金額が注ぎ込まれているに違いない。
薬の材料になる魔物や植物が特に多いと、オプリタス大陸の説明をしてくれた時に目を輝かせていた。
恐らく……イヤ、確実に彼のポケットマネーからも出ているだろう。
だってカノンは、薬草バカだからね。
先程は咄嗟の事だったので、角骸鯨をウッカリ角ごと吹き飛ばしてしまったのだが……やってしまった、というのが正直な所だ。
確かに、オプスクリス開拓村は探していた。
生存者から何らかの情報が聞き出せるだろうと思ったのと、何日も周囲の景色が変わらず、いい加減何か変化が欲しいと思っていたために、少々、勇み足になってしまった。
自覚はしてる。
カノンも、開拓村はこの辺のはずなのだがと、首を傾げて数日経過していたし、そろそろ村に着きたいと思っていたはずだ。
本来ならば、特に咎められる事は無いように思える。
だがそれ以上に、彼は新たな薬を作るための材料を求めていた。
待てど暮らせど、王都であるディルクルムにも、オプリタス大陸と橋で繋がっているニンブス大陸にすら、何の報告も収穫物も送られて来なかったんだもの。
そしてようやくゲット出来るぜ!と意気揚々とオプリタス大陸に上陸してコッチ、魔物をずーっと探していたのに、一切魔物の姿を目撃していなかった。
いい加減集落なり魔物なり、気配探知で探そうという事になり、その魔物を探知により発見したと思ったら、人が襲われていた。
そして自分が対処するよりも先に、俺が現場に向かってしまった。
……やっと出逢えた魔物が死骸になっていたら、しかも重要な箇所が欠片も見当たらなかったら。
それどころか、下半身の一部を残して、すべて吹き飛ばされてしまっていたら。
カノンの絶望は、パないだろうね。
だからサッサと証拠隠滅を図ろうと、その場に残った下半身を遠くに投げ飛ばした。
なのに血を洗い流す前にカノンが追いついてしまったせいで、失敗に終わってしまった。
風の精霊術の練度が上がっているせいで、移動速度が滅茶苦茶上がってるんだよね。
チッ、ぬかった。
セリアがいたから、あの場では怒られなかった。
だがとっても不機嫌な顔をしていたので、多分、後で二人きりになったら、雷が落ちる。
幼女の失禁程度のインパクトじゃ、誤魔化されてくれなかったか。
カノンがロリコンだったのなら、効果テキメンだったろうに。
このシスコンめ。
妹に人命救助を優先させたら怒られた、と言って泣きついてやろうか。
きっと彼女の言葉を聞いたなら、カノンの怒髪天も落ち着いてくれるだろう。
むしろ仕方無かった事だと言って、ケガなく民草を救助したと、褒め称えるまであるかもしれない。
だって、重度のシスコンだし。
それならば、いっその事拗れに拗らせ、ロリコンにまでなってくれれば、御し易いのにな。
そうすれば、俺も甘く見て貰えるかもしれないじゃない?
俺、半分は女だからね。
……どっちもある、の場合は半分と考えれば良いのか、一粒で二度美味しい的な感じで、倍の性別があると主張すれば良いのか。
どっちなのだろう。




