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第一三話「策謀、躍動」

飼い猫の不予によって予約投稿をし忘れていたんだよね。

実は一週間近く執筆作業をしてない。カクヨム版も、あと少しってところで完全に更新止まっちゃったしね。

だがここで止まっていてはオーベルシ○タインを自認する読者諸兄が「所詮、貴方もそこまでのお人か」と呆れ返るに決まっているので、残された時間を存分に費い、何とか第一部は走り切ろうと思います。

 宇宙艦隊司令長官コーネリアス・バッハ元帥は、宇宙艦隊参謀総長のベルナルド・エンリケ中将と共に、先日完成したばかりの戦艦『キャメロット』と他数隻の艦艇が、宇宙港より打ち上げられていく様子を国防総省ビルから眺めていた。反重力推進機関によって、旧世紀のように多量のガスを撒き散らすことなく静かに上昇していく様はややつまらなくもあったが、見様によっては泰然さを感じさせるのである。


「万事は予定通り、か」


 元帥は感慨深げにそう呟いた。地上には、“バルバトスの英雄”たる女提督を称える民衆が、『キャメロット』を盛大に見送るべく大挙して集まっていた。今頃、あの艦内では赤目の小娘は同期たちと共に困惑の極みにあるだろう。何を隠そう、彼らのフェネクス星系への出征は、極秘扱いなのだ。であるというのに、何故民衆による見送りと歓呼があるのやら、と驚いているに違いない。


「偉大なる犠牲です。民主主義の大義と共に、彼らは護国の聖人に名を列するのです」


 そこには黒い計算があった。彼らを敢えて目立たせることで、“本命”を達成せんという解を導くための方程式。第三三特務部隊とは、解を導く方程式の、一構成要件でしかないのだ。


「それでは司令長官殿、吾々も出立致しましょう。既に第一艦隊は進発準備が完了しております故」


 黒い計算式の提唱者が一礼して場を辞した。計算を承認した者は、胸に僅かな罪悪感を残していた。今更持っても仕方のない感情であり、また、その犠牲を容認したのも長期的視野から見た“能率”を優先したが故であった。真実が知れれば統率の外道として糾弾されるだろうが、計算が上手く行くならば、吾々は確実に要塞のひとつを落とし、そしてあの忌まわしきゲーティアへと手が掛かるのだ…………。



 連盟軍宇宙艦隊は、総数三五万隻の戦闘艦艇から成る、恐らく人類社会史上最大の軍事組織である。実際には相次ぐ戦闘による損失とそれを補う戦力補充などで、三〇万隻前後を常に維持する数字であるが、これは王鬼帝国軍の総兵力に対して、一・五倍する数と見られた。


 とはいえ、これだけの兵力を戦場に投入し続ける事は出来ない。まず艦艇が行動するためのエネルギーと、数千万に上る将兵を養う糧食、そして戦闘で消耗する弾薬などの消費財は、慢性的に不足している。出撃させたとしても継戦能力はなく、また、それらの大兵力を支えるだけの補給線の維持が出来ないのだ。


 その為、恒常的に稼働させ続けれるのは一〇個艦隊までとされ、そのうちソロモン回廊の最前線であるアスタロト、フラウロス、グシオンの三星系に二個艦隊ずつを貼り付け、その後方に予備兵力の三個艦隊を配置している。合計九個艦隊、艦艇数にして九万隻、将兵一〇八〇万名を擁しているのが“ソロモン方面軍”である。


 先の第三次バルバトス星系会戦で出動した第二、第七、第八、第九、第一一艦隊は、ソロモン方面軍の前線部隊(第一一艦隊)と予備部隊(第七、第八艦隊)、そして連盟本土からの増援部隊(第二、第九艦隊)の混成部隊で、それ故に指揮権の混乱を招き、統一された作戦行動を取れなかった。とはいえ、防御的立ち位置にあったのは連盟軍なわけで、能動的になる必要もなく、足並みは揃わなくともそれぞれが「それなりの」戦いをしていれば勝手に敵は引き返していく。それが通例であり、このソロモン回廊を舞台にした五〇〇年間の戦争の実態であった。そうはならなかったのが、その第三次バルバトス星系会戦であった。


 第三三特務部隊こと、通称“パーシヴァル艦隊”の進発に遅れる事二日、首都星ティアマトからバッハ元帥が直率する連盟軍第一艦隊が進発し、また途中の星域で第三、第四、第五艦隊が合流した。また、回廊の出入り口であるスカージ星系では第二四、第一〇艦隊が待機していた。合計六個艦隊六万隻、将兵七二〇万名の動員である。


 当初これらの艦隊は、バルバトス星系に於ける大損害から生じた前線の空白と予備兵力とを充足させるための増援と見られたが、予備兵力基地のパイモン星系へ差し掛かる中途で、突如アモン星系へと進路を変更した。


 即ち、それらの六個艦隊はソロモン方面軍への増援ではなく、攻撃部隊だったのだ。その目標は、アモン星系より三個の恒星系を挟んだ先にあるマルコシアス二連星系に鎮座する“アルス・ノヴァ要塞”────バエル星系(回廊の支配権)のもうひとつの支柱たる、堅壁の城塞であった。


 帝国軍は連盟軍の動向を察知すると、先に出発したパーシヴァル艦隊を陽動と考え、その方面へ防御に回す予定であった師団をアルス・ノヴァ防衛へと配置を転換する。更に、帝国本国からも新たに三個師団の増援を送り込んだ。


 その中には、領内統治に於いて成功を収めつつあるパーヴェル伯ゲオルギーの姿もあった…………。



 連盟軍迎撃の任に就いたゲオルギー・パーヴェル中将が率いるのは、パーヴェル師団のほぼ全力に等しい九〇〇〇隻の艦艇である。残り一〇〇〇隻の艦艇は自領の治安維持活動の為に領内へ分散残置しているが、若き伯爵は本音としてはそれらも引き抜いて投入したい次第である。というのも、バルバトスでの戦術的勝利は、連盟軍の指揮統一の不徹底を突いた戦略的奇襲であり、あるいは偶然の一種でもあった。その証拠に、戦闘後半ではあのハズバンド・オルフェウスが事実上の指揮を執ったことで、マーリェノフ親衛師団の事実上の敗退を招いた。連盟軍は弱兵に非ずというのは、本格的に一個師団を率いて初めて戦ったことでゲオルギーが覚えた感触であった。

 つまるところ、軍隊とは個々の戦技がその軍質を完全に保証するのではなく、指揮系統という骨幹なくしてその力量を語れないというものなのだ。その点で言えば、今度のアルス・ノヴァ防衛は難儀する事に違いない。連盟軍の総司令官が、直接指揮を執るというのだから、能力はともかくとして指揮系統に弱点は見出せないだろう。加え、アルス・ノヴァ要塞とその駐留艦隊、そしてパーヴェル師団含む四個師団では、微妙に連盟軍の方が数が多い。流石に、第三次バルバトス星系会戦のような格差でないにしても、帝国軍は常に数的劣勢に晒される運命にあるらしい。

 更に言えば、今回、指揮系統面に不安を抱えているのは帝国軍の側であった。


「要塞から打って出て、雌雄を決するべきである」


 そう主張するのは、要塞司令官ヴァスチェラフ・レンネンカンプ大将である。三年前からアルス・ノヴァ要塞を預かる公爵で、要塞周辺の宙域を自分の領地のように扱っていることで、何かと問題の多い人物である。


「それは難しい。質はともかく、数の上では吾らは一個師団分敵より少ないのだ。六個師団が相手となれば、要塞に依って戦い、敵に持久を強いるが堅実というものであろう」


 要塞駐留師団司令官ラヴレンチー・サムソノフ大将と、レンネンカンプは、犬猿の仲であった。戦術的思考、戦略的構想の両面に於いて対局であり、その不仲は、こうした危急の事態にでもならない限りは決して顔を合わせようとしないほどだ。尤も、レンネンカンプによる要塞の私物化を牽制する為にサムソノフ提督が送り込まれた、という点では、誠に有効に機能している。しかし戦場に於いては、その不統一さが一軍を敗亡に至らしめることを彼らは知らない。

 作戦会議に出席したのはレンネンカンプ、サムソノフを始め、要塞参謀長フョードル・クィビシェフ、そしてゲオルギー・パーヴェルを始めとする4名の中将である。アレクサンドゥル・ヴァトゥーチン、セルゲイ・ロマネンコ、ウラジミール・チャスチェフスキー。いずれも、軍質という面を完全に担保してくれる能力を持つ将帥であったが、それらを誰が束ねるか、という所へ議題が移った時、二人の司令官による抗争は激化した。


「要塞司令官というのは、要塞を含めたマルコシアス星系内にある全てを統括するのが任務である。従って、駐留師団も増援部隊らも、また要塞の配下ということになる」

「それはおかしい。要塞駐留師団が配下であるなら、何故私は大将の階級を持っているのだ。これは両者共に独立した権限を持つ別部署であり、拠点と兵力は別というのが中央のお考えだろう」

「だが卿らは実際に、要塞に居らねば補給が受けれんだろう」

「何と。貴公は吾らを脅すというのか!」


 二名のオークによる不毛な争いに嘆息を吐いて、ロマネンコはちらと、僚友を見やった。ロマネンコは守勢を得手とする指揮官で、本来、アルス・パウリナへの増援として送り込まれる予定であったのも彼だった。その性格は協調を重んじるというもので、その面でも保守性の強い、典型的な壮年だ。ただし、強く出られない自分の生来の弱さにも辟易していたので、この時ばかりは非常に珍しく、自分から声を発した。


「パーヴェル中将は、如何にお考えですかな」


 発言を求められたパーヴェル伯ゲオルギーは、赤銅色の髪を掻き上げる。その動作は、会議場に沈殿していた不満と不穏の泥を払い捨て、代わりに、生きた彫刻による新たな息吹が吹き込まれた。


「私は敢えて、ロマネンコ提督に吾ら増援部隊の指揮を執っていただきたく思います」


 それは轟雷に似た衝撃を、参席者たちに齎した。しかし、ある種の納得感もあった。セルゲイ・ロマネンコ中将は、この場では最年長者であり、軍歴もそれ相応の長さであり、また数々の武功を立てている“守りの名将”だった。その男が艦隊兵力の指揮を行うならば、数的劣勢であっても期待のしようはあった。

 しかも、ロマネンコはその人柄ゆえに自らの武功を決して誇る事はしない。政治的な因果と無縁でいられたのは、そうした“つまらない”人格故だ。だが、そのつまらなさこそが、この場でゲオルギーが最も信用を置く理由にもなった。


「お…………私も、ロマネンコ提督の下で働くことに異存はない」


 ゲオルギーの提案に賛意を示したのは、アレクサンドゥル・ヴァトゥーチン中将であった。パーヴェル伯ゲオルギーが、二番目に信を置く僚友であり、公的な場であるにも拘わらず「俺」と称しそうになるほど、粗野で猪突な男だが、一方でその戦闘力に於いては誰も疑いはしなかった。

 そのヴァトゥーチンに引き摺られるように、ウラジミール・チャスチェフスキー中将も賛意を示した。ロマネンコは困惑した様子であったが、この期に及んでもなお対立を続ける二人の司令官に見切りを着けたのか、ゲオルギーによる司令官推戴を受け入れることにした。


 翌一〇月一八日、ゲオルギーとロマネンコが中心となって防御計画が策定された。敵の来寇まで時間がなく、完全な指揮統一を果たせないという状況を加味し、更に二人の司令官の意見に両方適う策であろう、とゲオルギーは自評していた。


実はぼくは銀英伝だとオ○ベルシュタインが一番好きです。オベちって呼ぶくらい好きです。何故かっつうとあの人だけが世界の行く末を案じてるからなんですよ。

ヤン・ウ○ンリーもユリ○ンはそうじゃないの?と言われると、実は彼らはオベちからすると楽観論者に当たります。というのも、彼ら同盟側の共和主義者と云うのは「世界が絶対に存続し続ける」ことを、殆ど無根拠に信じ続けてるんですね。「え?あの世界ってそんな崖っぷちだったの?」とお思いの読者諸兄、そうなんです、あの世界って実は崖っぷちだったんです。実はその事に作中の誰もが気付いておりませんし、□イエンタールやミッタマでさえ、思いも寄らぬことだったのでしょう。ですが、事態は確実にその方向へ向かっていたと云えます。

ルドルフを開祖とするゴールデンバウム朝銀河帝国は500年の時を経て腐敗し、もしラインハ○ト・フォン・□-エングラムが登場していなければ門閥貴族同士が相争って荒廃し、惑星ごとの断絶が生まれて文明が後退しただろう、という旨の作中の記述があるんです。カストロプ動乱などが良いモデルケースで、そしてそれが最大化した形で表面化したのはリップシュタット戦役でしょう。リップシュタット戦役がなければ、確実にブラウ○シュバイク公とリッテンハイム侯は対立し、それを軸にした別の形の内戦が勃発していたとも考えられます。ゴールデンバウム朝銀河帝国、いや銀河帝国そのもの終焉は、その内戦とイコールであり、作中のリップシュタット戦役はそれを上手く回避して軟着陸し、エル○ィン・ヨーゼフ2世をしばらく立て続けることでその終局を比較的穏やかなるものとしました。

では同盟側の方でもどうかというと、同盟は同盟で既に銀河連邦の最末期のように官僚腐敗と政治抗争が頻発し、その間隙がトリューニヒトの横暴を許し、挙句、民主主義の理念を忘れ去った救国軍事会議といった勢力まで出現しています。遠からず同盟も軍閥化し、戦国時代の様相を見せ、朽ちて行ったでしょう。皮肉にもそうならずに済んだのは、ライ○ハルトがアスターテやアムリッツァで同盟軍のほぼ全軍を壊滅させ、軍閥化するほどの兵力を喪わせたこと、そしてそれによりヤン艦隊のみでも救国軍事会議のクーデターを鎮圧することに成功したことなどが挙げられるでしょう。もしアムリッツァでローエングラム軍が同盟軍をもう少し討ち漏らしていたら、ヤン艦隊の味方が増えてヤン・○ェンリーの制御を超える動きをして事態を悪化させるか、敵が増えてクーデター鎮圧に時日を大いに費やすことになったかもしれません。

まさに、綱渡りですね。同盟領内が荒廃せずに済んだのは、皮肉にも敵である○インハルトのお陰だったという訳です。

さて、話を戻しましょう。このように、同盟も帝国も共倒れになる未来が、オベちには義眼ながらに間近の事として見えていたのでしょう。故に疾く、素早く門閥貴族を撃滅し、ゴールデンバウム王朝を倒し、自由惑星同盟を粉砕し、ローエングラム王朝を不滅のものとしなければならなかった。

ブラウンシ○バイク公によるヴェスターラントへの核攻撃黙認に始まる数々のマキャヴェリズムは、彼の「人類復興プログラム」の完成を最短経路で進めさせるためにのみ運用され、また多くを語らないことで□イエンタールを始めとする多くの将帥から嫌悪される運びとなりました。また物語の最終盤を見てもわかる通り、彼は純粋な忠誠心でライ○ハルトに仕えていたわけではありません。彼が覇者たらんとする限り、彼を最大限利用して、今を生きる全人類の幸福を最大化しようとしていたのでしょう。

もしオベちがいなかったらどうなったか?恐らく、その場合、田中先生は銀英伝を書くことは無かったでしょう。ライ○ハルトとオベち、そして○リアンがいなくては、存続し得なかった。それほどあの世界は終局に近かったと云えるでしょう。


長くなり過ぎたので、今宵はここまでに致しとうございます。

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