リュウドウが見ている【アウラ】に潜入!②
エッチングは『最初からお話ししましょう』と話し出すと、黒板に絵が描かれる。黒板の深緑色に色とりどりのチョークがリズミカルな音を立てて、トキオ奪還のメンバー達が路上でデモしている絵を描いた。
『トキオ奪還が初めて破壊活動をしてイトジマ君が首謀者として捕まった時に、【アウラ】と言う記憶操作、洗脳が出来る電脳兵器が流出していると気づきました』
「随分と早い段階から分かったな」
『その前から電脳兵器が流失していると分かっていたのですけどね。ただ、証拠が無くて……。とりあえずイトジマ君が逮捕された後、素直に自分が首謀者だと告白して、そのまま裁判、そして少年院に行きました。ですが取り調べや裁判での証言で食い違いや矛盾が多かったんですよ。彼の祖父も弁護士を雇ったり、取り調べの時の映像を入手したんですが、彼自身が首謀者と自白しているし、取り調べの時も強要とか脅しとかありませんでした』
「じゃあ、あいつがやったんじゃないか?」
『トキオ奪還はテロ組織みたいに言われていますが初めはデモや署名など、平和的な抗議活動をしていました。そして政府が全国的な復興してからと言う決定を下した後、トキオ奪還のリーダーであったイトジマ君は復興支援に切り替えようとしていましたし』
ここでエッチングは『イトジマ君達が取り調べを受ける前に電脳に入ったって言う証言がありました』と言った。
トキオ奪還のメンバーのデモを黒板消しで消していき、アウラと言う文字を書いた。
『彼の弁護士から、その話を聞いて、もしかしたら【アウラ】を使用しているのでは? と考えたんです』
「それで、お前らは調査しているのか」
『調査できるまでに様々な困難がありました。それこそ一晩語るくらい』
「困難の話しはいいや。それでコセンスイは警察の使用をやめさせようと考えているのか?」
『いや、使うんだったら、使用方法を守ったうえでロイヤリティが欲しいです』
ロイヤリティって、随分とがめついなと思う。
そしてエッチングは『でも恐らく使用禁止になると思いましけど』と、うんざりしたように言った。そして黒板に書かれた【アウラ】の字の隣に、警察と闇医者が書かれた。
『話しは戻りまして、警察が【アウラ】を使っている証拠を押さえている時に色々と事件が起こりまして……。更に【闇医者】グループも使いだして、トキオ奪還のメンバーで事件を起こしたり、またイトジマ君を誘拐したり、最悪です』
「今回の事件は警察がやっぱり関わっているのか?」
『もちろん。アンズって子のキュウリを落とした子が潜入捜査をしている風に装って共謀している可能性があります。イトジマ君が誘拐したのは一部の警察の手引きですね』
なかなか衝撃的な事を言い出すエッチング。
『元々イトジマ君は軍が所有している農地で働いて、彼の祖父であるイトジマ議員の知り合いの家で暮らしていました。でも突然、トキオ奪還が活発だから監視するって警察が言って武装機体兵をつけたんです。そしてしばらく一緒にいたらしいんですけど、突然、仮首都で取り調べをすると言って彼を連れ出して誘拐したんです。警察はしらばっくれるつもりでしょうが、今回は軍の方からも見ていますから無理そうですね』
「戦後数年たっても、隠ぺいとか冤罪とか大変だな」
俺はエッチングとリュウドウの話しを聞いて『じゃあ、なんで闇医者を警察は庇うの?』と聞いた。
『多分、警察上層部の関係者がいるんだと思います。予想はシスマ警察庁長官の息子さん』
そう言って黒板に彼の絵を描く。かなり上手い。
『彼って元々トキオ奪還のメンバーだったんですけど、いつの間にか抜けちゃったんですよ。まあ、そう言う子はたくさんいます。有権者の関係者で逮捕されたのはイトジマ君しかいませんが、結構たくさんの人が参加していたんですよね』
「元々エスカレーター式の金持ちの中高生達が全国に集まって疎開目的で寮生活をしていた時に出来た組織だからな。だから現実離れしている思考になっているのかもしれないけど。イトジマはあれだ、見せしめで捕まったのと祖父が今の軍事政権派閥の議員なんだよ。それを元官僚政権の奴らが下ろそうと思っているんだろうな」
リュウドウは酒瓶のアバターの腕を伸ばす。そして「うー、電脳空間はやっぱり慣れないぜ」と言う。
そしてエッチングも『そろそろ、【アウラ】が終わる頃です』と言う。
『このままだとスダチさんがロッカーを蹴って暴れていた不審者として捕まってしまいます。しかも彼は機体持ちであり、元少年兵。精神異常と疑われてしまいます。多分、次の日には精神鑑定されて、然るべき施設に移送されます。その前に【闇医者】を潰して、ロッカーを暴れていた犯人を捕まえましょう』
「それで俺は何したらいいんだ?」
『とりあえず、このまま警察内で待機してください』
「はあああ?」
首を突っ込みたくてたまらないリュウドウに対して、エッチングはあまりにも非常な事を告げた。




