リュウドウもついてきた!②
「トキオ奪還の起こした連続テロ事件。元幹部だったイトジマに濡れ衣を着せようとした……あー名前を忘れた」
『ワジマだよ』
「あー、そう、ワジマだ。そいつが全部仕組んだと思ってるか?」
誰も思ってはいない。
ワジマは仮首都 ナゴノに住む浪人生だ。イトジマも親族に政治家入るけど、ワジマも相当なお金持ちらしい。ただトキオ奪還に入っていたと分かると軒並み大学は落とすし、会社も入りづらいらしい。だから母方の親戚の夫婦の養子になって苗字を変えてワジマになっている。でもこんな事件を起こしたら、もう無理だな。
警察の監視が付いたお金持ちのただの普通の浪人生のワジマが、電脳空間【アウラ】の設定をして機体持ちと思いこませたり、全く関係のない若者を連れてテロを起こしたり、爆弾を作ったり……と出来るのだろうか。
黒幕とはいかないけど、絶対に入れ知恵をした奴がいるはずだ。
「ワジマから【闇医者】と呼ばれていた眼鏡の男。モブメンバーと思われていただろうけど、最重要人物だ。さっさと見つけたいけどキミンチに入ったら、もう追えないな」
『俺がつけたペイント弾はついているけど、もう効果はあまりないだろうな』
「肌についたら一週間くらいしかもたないな。しかもつくだけで、あとを追えるようになっているわけじゃないし」
『手詰まりだな』
俺がそう言うとリュウドウは「だがハンゾウ達は色々と知ってそうなんだよ」と顔をしかめて言う。そう言えばリュウドウとハンゾウの会話で【闇医者】について聞いていたな。ハンゾウは何も答えなかったけど。
「あいつとコナは派遣巡査の力を使って、色々と調べているんだよ」
『それがあいつらの仕事だろ』
「その情報を独り占めにしているんだぞ! 聞いてもはぐらかすし、俺を信用できないのか!」
「お前を信用するなら、チンパンジーの方がまだ信頼関係が結べそうだ」
リュウドウが歯ぎしりし、スダチは鼻で笑う。リュウドウは守秘義務を知らないのだろうか? 知っていてもあいつは聞き出すし、その情報でお金を得ようとするだろうけど。
俺たちが呆れていると、リュウドウは「で、だ」と歯ぎしりをやめて話し出す。
「本当に黒幕はキミンチにいるのか? だ」
『でもキミンチに向かっただろ』
「昔よりも危険度は低いだろうけど、それでもジャンキーやヤバい奴は多いはずだ。そんな奴が一人で入って無事なのだろうか」
キミンチがどういう場所か分からないけど、確かに【闇医者】と呼ばれていた男は機体持ちっぽくなかった。
更にリュウドウは意地悪気な笑みを浮かべて言う。
「しかもここの居住区の駅はキミンチに続く線があるんだ」
「何でそんなヤバい場所に居住区を作るなよ」
「カント震災前に決まった後だからな」
終戦後すぐここ一帯に大震災があったらしい。戦災で壊れた建物もあるが、震災でトキオのほとんどの建物が駄目になったらしい。ちなみにこの一帯で起こった震災で武装機体兵は積極的に救護活動を行ったためか、武装機体兵に対して恐れず普通で接する人が多い。
それにしても戦争終わったら震災。まさに泣きっ面にハチだなって思っていると、リュウドウがスダチに小声で「気づいている?」と話しかけた。
『どうした?』
「大きな声を出すな」
リュウドウは俺が操縦するドラム缶ロボットをちょっと蹴る。身内もこのロボットに対して乱暴である。
そしてスダチが「誰かにつけられている」と言い、俺は声を上げて驚いた。
「いや、すごいだろ! 最近の電脳は」
「そうだな。声を上げるくらい驚きだ!」
俺の驚いた声をごまかすためにリュウドウ達は無理やり話題を作って、ロボットを蹴りながら歩いた。……ごめんな、ロボット。俺が間抜けだから、乱暴に扱われるんだ。




