スダチと一緒に居住区の見回りに行く①
居住区へ行く前に、スダチは人生微糖で提供される料理を作り始める。枝豆をゆでながら、ナスを切って照り焼きにしたり、小さく切った鶏肉に衣をつけて後は上げるだけの形にしたりと、なかなか手際が良い。それどころかリサよりも包丁さばきが上手い。
しかもスダチと再び電子端末で俺と通話しながらやっているので、相当余裕があると見える。リサの場合、雑談できる雰囲気では無いくらい真剣である。
こいつ、結構器用なんだなと思っていると、スダチが「なんか曲かけて」と注文をした。俺はロムが作ってくれたスダチの社会人必須ボイスを流した。
『お疲れ様です!』
「……まさか、マジで作ったのかよ」
『作ってもらった』
ものすごく嫌そうに「やめろよ」とスダチが言いながら、モヤシのナムルを作る。
「あと曲とかかけられないの?」
『そう言う機能は無い』
「はあ、使えねえな」
『申し訳ございません!』
「俺の声で謝罪をするな!」
するとリサが「何喋ってんの?」と言ってやってきた。けだるさそうに欠伸をしながら来たが、キッチンにスダチがいるのを見て、ちょっと微笑んだ。
「あらスダチ、ありがとうね。料理の下準備」
「どういたしまして。だけど、今日はハンゾウに頼まれた見回りがあるからシフトに入れないよ」
「別にいいわよ。あー、スダチが帰ってきて楽になったわ。あんたの料理はうまいから」
「褒めても何にも出ねえよ」
非常につっけんどんなスダチの言葉の後に『ありがとうございます!』とスダチのお礼ボイスを流した。するとリサはすぐに「何これ?」と言って興味を示した。
『スダチの社会人必須ボイスを作った』
「いいわね。これでスダチをフォローしてあげな。こいつ、器用で何でもすぐに出来る方だけど敬語とかできない子だから」
「うるせえな」
舌打ちしてエプロン外して、外に出ようとするスダチは思い出したように「そう言えばさ……」と話し出した。
「冷蔵庫の漬物、リサ姉が作ったの?」
「うん、そうよ」
「ようやく人間が食べれる代物が作れるようになったんだ」
「うるさいわね」
リサがしょうもないって顔になって笑い、スダチは鼻で笑う。俺とナズナとフキノはスダチと初対面だけど、この地では古参なんだなと思わせられる。ちょっと疎外感。
何となく俺が黙っているとスダチは「リサも昔からの付き合いなんだよね」と話し始めた。
「戦後すぐ軍に放り出された後、リサと会って偽装で姉弟ってふりしてリュウドウと一緒に何でも屋をしていたな」
「本当に生意気でクソガキな弟だったよ」
リサは肩をすくめて言い、「それよりも、あんた」と少々強めな声で問い詰めた。
「アンズに居住区の見回りに行くって言った? 何にも言わずに出ていかないでよ」
リサの問いかけにスダチはちょっと釈然としない感じで「言った」と答えて、不満げに語尾を伸ばして話し出した。
「でもあいつさー、私はバイトだから行けないって返してさー。昔はさー、ひよこみたいについて行ったりー、一緒に行くって聞かなかったのにー」
「当たり前でしょ。ひよこだって何にも言わずに去って行く奴の後ろをついて回りたくないよ」
ぴしゃんとリサに返され、スダチはムウっと眉をひそめた。
少々不機嫌になったスダチはエプロンを取って、「もう行く!」と外に出た。不貞腐れているスダチに、苦笑しながらリサは「行ってらっしゃーい」と返した。
こうしてみると確かに強かな姉と未だに反抗期な弟って感じだ。




