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マレ飯は地下鉄駅入り口階段前で開店している④

 アクアリウム・クオリアが少しだけ調べた【アウラ】について報告すると、ハンゾウはなぜか「あーあ」と言い、ため息をついた。


「時代についていけないよ。なんだよ、自分がやったと思い込む電脳空間って。洗脳空間だろ」


 面倒くさそうに言うハンゾウにスダチは「まあ、俺は入れないからどうでもいいけど」と言う。確か機体持ちは電脳空間に入ると具合が悪くなるらしい。そして武装機体兵も入れない。ただそれはオンライン状態の場合だ。オフラインだと普通に入る事が出来て機体持ちの手術をした後、電脳空間に入ってリハビリをするらしい。

 機体持ちでもオンラインで電脳空間に入れる研究はしているらしいが、アンズみたいな奴が全世界と通じるオンラインの電脳に入ったらヤバいから入れないようにした方が良いと思う。

 さて飯を食べ終わったのにずっと居座っているハンゾウとスダチに亭主は「そろそろメニューを頼むか帰るかしてくんねえかな?」と苦言を呈した。


「居座られると、たまらねえよ」

「ああ、悪いな。でさ、あんたの所で預かっているオリバに話しできないかな」

「無理」

『オリバって誰?』

「ナズナが闇バイトでトランクを運んでいただろ。その中に入っていた奴さ。ここでバイトしているのを発見して、リョウにお願いして事情を聴いたんだ」


 あー、駅構内の放送で探しているって言っていた武装機体兵か。ようやくハンゾウに見つかったけど、またマレ飯の亭主に返したのか。

 つっけんどんに亭主は「とにかく今日は無理」と言い、ハンゾウも頼んだり強要しないで「……分かった」と言って立ち上がった。


「そんじゃ、スダチ。見回りの件、よろしく! ご馳走様!」


 そう言ってハンゾウは帰っていった。

 少ししてスダチも「じゃあ、俺もご馳走様」と言った。不愛想な亭主は「またのお越しを」と棒読みで言った。


『なあ、マレ飯の亭主さー、ハンゾウを嫌っているの? 非協力的じゃね?』

「いや、別にハンゾウを嫌っていないよ。あのおっさんは警察が嫌いなのさ」


 そう言ってスダチは「色々とあったのさ」と感傷込めて語る。俺が彼らに会う前にも色々とあったのだろう。


「ところでユウゴ。お前、俺の社畜定例ボイス作るのか?」

『ハンゾウに作れって言われているから。あと社畜じゃなくても、普通に仕事をしている人間だったら言うと思うよ』

「やめろよ」

『じゃあ、挨拶とかお礼とか謝罪とか言ってくれるか?』

「俺の気分と警察の出方次第だな」


 こいつも警察、じゃなかった目上の人が本当に嫌いなんだろうな。一応、トウマに頼んで作ってもらおう。



 早速、トウマに『スダチの社会人必須ボイスを作ってくれ』と頼んだ。するとトウマは液体猫のアバターを微動だにしないで俺を見つめていた。


『ん? どうした? 固体猫に戻ったか?』

『戻っていないよ。と言うか、僕を何だと思っているの?』

『液体猫』

『違う。僕は電脳空間のアバターづくりは好きだけど、何でもできるわけじゃないんだよ。そのスダチのボイスを作るのは無理だよ。そもそも電脳空間ですらないじゃないか』


 確かにトウマのいう通りだ。電脳関係の仕事をしたいのに、結局リュウドウと一緒にいると現実の方ばっかり仕事が多いんだよな……。

 そう思っているとリュウドウのプライベート空間にウィンドウが出てきて『お困りですか?』とロムの声が聞こえてきた。


『あ! ロム! また出しゃばって!』

『何やら困っていることがあると思って』

『うん、スダチの社会人必須ボイスが欲しいなって』

『お安い御用』


 そう言ってウィンドウが閉じて数秒、ポンとコマンドが出てきた。操作するとスダチの声で「お疲れ様です!」「ありがとうございます!」などの誠心誠意風な挨拶が出てきた。


『うお! ありがとう。ロム』

『いえいえ』


 やっぱりロムって奴は有能だなと思っていると、トウマの液体猫が沸騰し始めて『ロム!』と怒った。


『出しゃばるな!』

『お困りのようでしたから』

『そんなことを言って、僕の座を奪おうとしているんだろ。そうはさせないぞ!』

『そんなことは決して思っていませんよ。決して、ね』


 なんとも含みのある感じで言うロムのウィンドウを引っ搔こうとして、トウマは飛びつくがウィンドウには消えてボテッと落ちてしまった。

 どうやら俺だけでなく、トウマも潰される可能性があるのか。恐ろしや。





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