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マレ飯は地下鉄駅入り口階段前で開店している③


 ハンゾウは「ところでユウゴ」と話しかけた。


「お前は所属しているアクアリウム・クオリアが【アウラ】って言う電脳空間を使用しているから調べるって言っていたが、どうなった?」

『警察と一緒だよ。別の組織がやるって事になって、手を引いた』

「はあ、どいつもこいつも情けないねー」


 スダチがしょうもないって感じで言い、ハンゾウは「え? マジか!」と驚いていた。俺も最初聞いたときはハンゾウを同じ反応だった。


『コセンスイって言う機関に任せるって事になったらしい』

「コセンスイ?」

「つい最近できた軍専用の電脳機関だな」


 俺の代わりにハンゾウが答えてくれて、スダチは「ふうん」とピンとこない相打ちをした。ハンゾウが知っているのは驚いていると更に言った。


「元々、電脳空間って言うのは医療で使われていたものスズミヤっていう奴が娯楽商品にして【ベル】と言う企業を作ったんだ。だから管轄は厚生労働省、旧政府だったんだ」

「あー……、だから軍専用で電脳空間をメンテしてくれる機関が欲しかったのか」


 なんだか、ハンゾウとスダチの会話が政治の話題になって分からなくなってきちゃったな。でもそんなに旧政府と軍政権って仲が悪いみたいなんだな。

 そう思いながら、数日前のアクアリウム・クオリアの報告を思い出した。


***

『ふうん。手をひいちゃったんだ』


 アクアリウム・クオリアと会う時の真っ暗な空間。

 明らかに馬鹿にしたようにポヨポヨの尻尾を振って液体猫のアバターをつけたトウマは言う。対してお腹がピンポン玉を入れたような金魚(ピンポンパールっていう品種らしい)はお腹を上にして瀕死の姿で『はい、そうなんです』と言い、相当落ち込んでいた。

 だが俺はいろいろと聞きたいことがあった。


『そもそも電脳兵器って何?』

『戦時中、電脳空間でも情報戦が繰り広げていました。ハッカーみたいな人たちですね。そういった人たちを攻撃するために作られた空間です。もちろん我々もハッカーのような事をして、相手の情報を破壊などもします』


 当たり前だが、電脳空間でも情報戦ということで戦争をしていたようだ。そんなヤバい兵器をばら撒かれて大丈夫だろうか。


『なんで手を引いたんだ?』

『コセンスイに任せると言われてしまいまして……』


 ……まだ知らない単語が出てきた。だが尋ねる前に金魚は説明をしてくれた。


『コセンスイはアクアリウム・クオリアから独立した機関です』

『お前らがマッドすぎて、出て行ったのか?』

『いえ、我々アクアリウム・クオリアは軍の協力は消極的なんです。でも軍に協力したいという一部の方もいたので出ていきました。コセンスイは政府や軍の電脳空間を制作、メンテナンスをために独立したんです。ですが喧嘩別れではないし、何かあったら協力しようって話しています』


 そして金魚は『とっても円満です』と言うと、トウマは『どうだか』と返した。

 ただ【アウラ】を少しは調べていたらしく、途中まで調べたことを話した。


『まずロムが調べた偽イトジマさんが見ていた電脳空間は彼の推測通り、機体持ちになるための手術だったそうです。それから隠しコマンドで色々と画像が出てきました』


 金魚が真っ暗な空間にいくつかの画像を出してきた。イトジマではない少年がニコニコ笑ってピースしている写真が飛び込んできた。犯罪をする前のイトジマの顔に整形する前の顔か……と、ぼんやりと思った。

 学生の頃の画像のようで、そしてたくさんの人とキャンプファイヤーをしていたり、花火をしていたり、なんだか楽しそうである。

 色々と見ていくと今後は作業をしている画像があり、ペンで【首都はトキオ!】と書かれていた。どうやらトキオ奪還の活動準備をしている画像だ。殺伐とした雰囲気が無いので、恐らく過激になる前のものだろう。

 これを見て金魚は『なんか文化祭準備って感じですよね』と感傷に浸っているような感じで眺めていた。

 ある程度、画像を眺めた後、金魚はすべて消して『次に』と言って話し出した。


『船で誘拐されていた本当のイトジマさんも電脳空間を見ていました。彼は電脳空間に入っていたけど、なんだか夢を見ていたと言っていましたね。内容は軽く調べましたが、学校生活と爆破事件とトキオの地下鉄車両立てこもりを体験する空間でしたね』

『確か【アウラ】の空間で経験したことは実際にやったって思いこむ作用があるんだよな。つまり、偽イトジマは本当のイトジマに罪を着せようとしたのか』

『そういう事になります。ただ彼は見た時、夢を見ていた感じだったと言っていました。この空間の欠点は見ている者に思い込ませないと効果は得られないんです。現実と齟齬があれば夢を見ている気持ちになって、やった実感は得られないんですよ』

『じゃあ、事実とは違う内容を見たから、彼は思い込みをしなかったって事か?』

『そうですね。でもどうして彼がそうなってしまったのかは分からないです。後はコセンスイの人たちがやってくれるでしょう』


 そして金魚は『ここまでが私たちが調べた内容ですかね』と締めくくった。そして『何か質問は?』と聞いた。

 ちょっと不安になったが、どうしても聞きたいことがあったので、『事件とは関係ないけど……』と言って質問した。


『【アウラ】に入っていた後、トウマがいなくなってロムっていう奴が来た。そいつは俺の脳と繋がっている脳の一つと言っていたんだが、一体、俺の脳はどのくらい繋がっているんだ?』

『うーん。主なメンバーだと十数人くらいでしょうね』

『え? 多くない? というか主なメンバーって……』

『正直に言ってあなたと繋がっている脳は大量にあります。主なメンバーとは意識がある者達です。前に出ていないだけであなたの行動を見ていたり、あなたを潰して電脳空間に出たい者達です』

『明らかに不穏な奴らがいますね』

『一応、彼らは抑えて眠らせるようにしています。主なメンバー以外はほとんど脳死状態って感じですね』


 正直、電脳兵器よりも俺の立場を潰す輩いるって事に恐ろしさがある。

 そして金魚を達観するような声でこういった。


『電脳空間が世界で定着していますが、まだまだ脳には大いなる可能性がありますね』


 やかましいわ! この金魚! もしかして俺を潰れるところも観察対象なのか?

 ものすごく不安になっているところで、アクアリウム・クオリアの謁見は終了した。その後、トウマにロムについて聞いた。


『ああ、知っているよ。今も見ていて笑っているよ。他のメンバーも何となく知っている』

『俺は分からないんだけど』

『ユウゴはそういうのに疎いんじゃない?』


 少し不安だったが、トウマにあの質問をしてみた。


『ところで繋がっている奴の中でまともな奴って何人いるの?』

『んー、僕も主なメンバーを全員確認していないから分からないけど、まともな奴は僕とロムだけだから二人だね』

『はあああ! 他の奴らは俺を潰そうと虎視眈々と狙っているのか!』


 ……マジでイカレたメンバーじゃねえか。

 以上がアクアリウム・クオリアの報告だった。










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