マレ飯は地下鉄駅入り口階段前で開店している②
「その前に立てこもり事件の進展はどうなったんだ?」
「進展はあった。立てこもり事件とナゴノ爆破未遂事件とイトジマ誘拐事件は、特高つまり公安が担当する」
「進展じゃないじゃん。しかも公安に仕事を取られてんじゃん」
「だからつまらない仕事を押し付けられてんだよ。見回りとかな。全く嫌がらせだ」
今回の事件はトキオ奪還と言うテロリストで国家転覆を考えているグループになるため、警察ではなく公安が担当になるらしい。元々、公安と警察は同じ事件を捜査するのだが、支持する組織が違うらしい。警察は旧政府で公安は軍らしい。
政治的な話しは分からないが戦争が起こった時から軍が政治を取り仕切っている。武装機体兵の制御が全くできていないとか結構問題があるらしいけど、まだまだ国外情勢が悪いので軍が取り仕切っていた方が良いと世間は考えている。だがそれを旧政府は、早く政権を取りたいと思っているようだ。
俺は政治とか関心ないから、どうでもいいけど。
ハンゾウも本日の定食である【雑炊】を食べ始めたが、「味が、無い?」と首をかしげていた。どうやら本日のマレ飯は味が薄すぎるようだ。
「そんでハンゾウ。嫌がらせの居住区の見回りを俺が手伝いするのか」
「ああ。セトが七連勤でやってくれたから、そろそろ休ませないといけない」
「つーか、お前がやれよ。ハンゾウ。お前、こそこそとコナと一緒に何かしているだろ」
「時期になったら話す」
リュウドウが言っていた【闇医者】の件だろう。ハンゾウは情報を出し惜しみすぎて、リュウドウからも苦情を言っていた。
スダチは「まあ、まあ、いいけどさー」と言い、そして俺が操作するドラム缶ロボットを指さして「でもよ!」と怒鳴った。
「何でユウゴも付き添うんだよ!」
「お前は目上の人間に礼儀が無い。絶対に警察署内で問題を起こす。その時のフォロー役でこいつを任命するんだよ」
「いつ俺が問題を起こしたんだよ!」
「おいユウゴ。こいつの音声で【お疲れ様です】【ありがとうございます】【申し訳ございません】とかの定例ボイスを作ってくれ。こいつは気分次第では、これすらも言えない」
俺は『マジか』と愕然とした。リュウドウに対して反抗的だったり、アンズの騒動での謝罪まで時間がかかっていたりと、何かと大人に対してつっかってくるような言い方をしていると思っていたけどここまでだったとは……。
スダチはあからさまに嫌そうな感じでため息をついて、マレ飯の亭主に話しかける。
「なあ、親父さん。リョウは元気にニートなの?」
「ニートじゃねえよ。家畜とジョニとマックの世話をしている」
「家事手伝いじゃねえかよ。代わりにやってくれないかな」
「無理に決まってんだろ」
「ついでに雑炊も味が薄いんだが、なんでなんだ?」
別についでじゃないとは思うんだが、ハンゾウも「うん、なんで味が薄いんだ?」と興味を持って聞く。
するとマレ飯の亭主は「これは元々、豚のエサなんだよ」と衝撃的な事実を告げた。
「居住区の奴らが廃棄する予定の食料を買い取って、豚のエサにしようと思ったんだけど食べないんだよ、あいつら。だからお前らに低価格で売ろうと思った」
「……え? そうなの? これ」
「だが別に雑炊とかごちゃ混ぜにしなくてもいいじゃん」
「博愛精神とか譲り合いとかのコマンドが無い武装機体兵にエビフライとかハンバーグが少量だけ提供したら戦争するだろ。だったら平等にするだけだ」
なるほど。だから沼みたいな飯になるのか……。




