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よくもまあ、トキオに帰ってこれたな


 リュウドウを乗せた車は人生微糖のお店ではなく、セイリュウ寺に向かった。トキオ奪還のメンバーであるストラップと付け毛と人質のイトジマ、そしてキュウリ落としの子がいるそうだ。なんでも犯人たちを置いておける場所が無いから、武装機体兵が数人いる寺で監視をしていると言う。

 そしてハンゾウやスダチ、アンズもいると言う。


「人質だったんだけど、実は実行犯だっただっけ? そのイトジマって人」

『でももしかしたら、イトジマじゃないかもしれないんだ』

「だろうな」


 リュウドウはニヤニヤと笑う。なんで、こいつは知っているような顔で得意げに言っているのだろうか。


『こんな時代でもお寺やお坊さんがいるんだな』

「ばーか。こんな時代だからこそ、居るんだろ。稼ぎ時じゃねえか」


 不謹慎な事を言いながらリュウドウはメールをした。そこは巻き込まれた海賊船を捕まえた海上警察だった。更にハンゾウへ電話をして、いくつかの無茶を言いくるめて切った後、「セイリュウ寺に着いたら起こして」と言ってリュウドウは爆睡した。


「そういえばアンズもセイリュウ寺にいるんだよな。あとスダチってやつも」

「スダチさんってどんな人ですか?」

『暴走したアンズを抑えられる気のいい兄ちゃんって感じ。首から下が武装機体兵の体になっている機体持ちらしい』

「ある意味、ユウゴと同じだな」


 フキノの言葉に「そう言えばそうだな」と思った。俺も脳しか無いけど、スダチの体も首から下は武装機体兵って事だ。だがスダチに言ったら文句を言われそう。

 そしてこういう奴らがいるから脳だけの俺に対して、あまり驚かれないんだろう。時代が進歩しすぎて、こういったのが当たり前って思っている。

 そして見慣れない道に入ると、武装機体兵の子たちや普通の人たちも歩いていた。居住区ではないが人は済んでいるようだ。そしてここら辺にお寺があるらしい。そろそろセイリュウ寺の門構えが見えた所で、リュウドウを起こす。


「おう、じゃあ、その辺に停めてくれ」

「あれ? 駐車場に停めないの?」

「馬鹿め。あいつは駐車場に停めると、駐車料金を払わされるんだ!」


 リュウドウの指示のもと、フキノは路肩に停める。車の運転はした事ないけど、停めて良い場所だろうか?

 すると予想していたのかと言わんばかりに、セイリュウ寺の坊主が門構えから出てきた。


「あ、生臭坊主!」

「リュウドウ、何度も言っているが駐車場に停めろ」

「嫌だね! お前の所の駐車料金が高いんだよ!」

「そこまで高くもあるまい。それにお前が悪さして得た薄汚い金を浄化せねばいけない」

「押しつけがましい徳のマネーロンダリングだな! 大きなお世話だ!」


 起き抜けなのにリュウドウはバチバチに言い争う。朝から元気だな、本当にこいつは。そして冷静に返す生臭坊主もすごい。

 一方、フキノとナズナは車のエンジンを停めて、リュウドウと坊主を残して寺に入って行った。

 お寺の庭には菊の花が列をなして植えられて咲いていた。小さな看板に【献花、売ってます】と書かれてあった。そして作務衣を着た武装機体兵がチラホラいて、掃除などをしている。

 門の向こうでは醜い争いをしているが、ここは厳かで静かな雰囲気があるなと思った。

 そうして本殿に行くとスダチとアンズが階段に座っていた。


「ヤッホー、フキノ、ナズナ」

「おはよう、アンズ。えーっと、スダチさん?」

「うん、初めまして。ナズナとフキノだっけ?」


 割と穏やかな感じでフキノとナズナに「俺、スダチ。よろしく」と軽い感じで自己紹介をした。そして【やれやれ】といった感じで言った。


「今日着いたのに、立てこもり事件が起こってヤバかったなー」

「大変でしたね。スダチさん」

「まあね」


 ナズナの言葉に何でもないような感じでスダチは返事をする。確かにこいつは結構、有能な上にコミュニケーション能力も高い方だ。

 そんな時、「おい! スダチ!」と大声で呼ぶリュウドウが現れた。どうやら生臭坊主の徳のマネーロンダリング問題は終了したようだ。


「スダチ! こっち来い!」

「はあ? なんでだよ!」

「いいから!」


 リュウドウは仁王立ちになって手招きしながらスダチを呼ぶ。スダチは面倒くさそうに立ち上がってそちらへと向かう。

 リュウドウと距離を詰めていたその時、スタンガン銃が鳴り響いた。


『え? スタンガン銃?』


 スタンガン銃をまともに受けたのかスダチはよろけた。チラッとリュウドウが見え、手にはスタンガン銃を持っていた。

 こいつ、なんでスタンガン銃を撃ったんだ? という疑問をよそに、更にリュウドウはスダチの頬を殴る。さすがにこの連続攻撃にスダチは尻もちをついた。


「よう、スダチ。よくもまあ、トキオに帰ってこれたな」


 リュウドウはそう言った。




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