リュウドウの帰還②
ようやく二人の朝食が食べ終わってリュウドウの所に向かった。奴は船の上で大騒ぎしていた。リュウドウを連れてきた船の船員は呆れた目で見ている。近くにいたら他人の振りをしたくなる振る舞いである。
「おい、フキノ、ナズナ。お前ら、聞こえているんだろ!」
「聞こえてますが、運賃は代わりに払えませんよ。私達、現金ないです。最近、電子マネーで払ってますので」
大声でナズナはそう言うとリュウドウは「嘘つけ!」と言う。ナズナは「だって持っていないんだもん」と呟いてそっぽを向いた。
「と言うか、サイコパス爺を出せ!」
「はいはい、居るよ」
そう言っておにぎりを食べながらサイコパス爺がやってきて、リュウドウは「何、食ってんだよ!」と文句を言いだした。確かにナズナの言う通り、先に食べて来た方がいいな。
一方のサイコパス爺はマイペースに食べながらサイコパス爺は「魚の味噌煮が入ったおにぎりだ」と正直に答えた。
「お前、何食ってんだよ! いや、おにぎりなんて、この際どうでもいい! サイコパス爺! お前、よくも俺を置いていったな!」
「なんの話だ?」
「覚えていないって事はアルペンスキーか?」
「……アルツハイマーじゃないのか? ボケ」
「ボケにボケって言われたくないね!」
こいつら、実は漫才しているのでは? そう思っているとようやくリュウドウは本題に切り出した。
「よくも俺が海賊船に潜入している時、潜水艦式の水上警察の船が来ている事を教えないでそのまま逃げたな! それで警察に捕まって、俺の心は憂いてんぞ!」
「本当に憂いてんのか? そんだけ怒鳴っていれば全然大丈夫だろ」
「うるせえ! とにかく俺の心は傷ついた。だから運賃を払う気なんてないね!」
サイコパス爺はマイペースにおにぎりを食べながら聞いていた。朝食を食べていた大人や武装機体兵も集まって来た。
全員が見守る中、サイコパス爺は傍若無人 リュウドウに対して一体、なんて言うのだろうかと思っていたがサイコパス爺はずっとおにぎりを黙って食べていた。
「おい! 爺、なんか言えよ」
「リュウドウ、おにぎりがうまいぞ」
「お前の食レポなんて聞きたくねえよ!」
「食い終わるまで待ってくれ」
すごいな、このサイコパス爺。リュウドウを翻弄している。
ゆっくりと食べ終わり、サイコパス爺はリュウドウの交渉を始めた。
「リュウドウ、俺はちゃんと警察が来ているから早く船に乗れって言ったぞ」
「俺は聞いていない!」
「お前が海賊船に乗り込む時に俺はやめろって言った」
「それも知らないな!」
「俺より若いのにもうボケたのか」
「うるせえな! というか、何回言ったんだ」
「いっかい」
「じゃあ、聞こえねえよ!」
当然のことながら一向に進まない。
「そもそも、お前、警察に事情を話すのが遅すぎんだよ! 俺が捕まったのがお昼で、連絡したのが夕方、その間、俺は取り調べに入れられていたんだぞ!」
「捕まり慣れているだろうに。大げさだな」
そしてリュウドウは「そもそも無一文だから、払えねえよ」と船のデッキに胡坐で座った。
すると近くで聞いていたマティが「嘘だ」と呟いた。
「金属音がする。少なくとも小銭は持っている」
そう言いながらヘッドホンをマティは着けた。それを聞いた周りの人間は「やっぱりな」と言いあっていた。
『なんでマティは分かるんだ? 小銭があるって』
「マティは耳がいいんです。戦時中は潜水艦操縦士専用の武装機体兵だったから」
『なるほど。いろんな武装機体兵がいるんだな』
耳のいいマティの発言でいよいよ逃げられなくなったリュウドウだが、梃子でも動かぬとばかりに胡坐のまま座り込んだままで動かなくなった。
リュウドウを運んだ船員は面倒くさそうに「どうします?」と尋ねる。
「リュウドウ、払う気はないんだな」
サイコパス爺はリュウドウに再度確認すると、「おうよ!」と答えた。その答えを聞いてサイコパス爺は「仕方がない」と言い、普段と変わらない口調で言った。
「トキオ湾に沈めよう」
船員は普通に「分かりました」と言って、船のエンジンがかかり出す。それに慌てたリュウドウは慌てて立ち上がった。
「え? ちょっと! マジで沈めるのかよ! おい! 待てって! 払う! 払うって!」
この慌てぶりに武装機体兵、周囲の大人は大爆笑し、フキノは呆れたような顔で見ていた。恐らくナズナも呆れている。
リュウドウ、マジでかっこ悪いよ。




