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リュウドウの帰還①


プルルルル、プルルルル。


 休んでいると、着信音が鳴り響いた。見ると警察に捕まっていたリュウドウだった。おお、ついに娑婆に出られたか。早かったな……と思った。

 チラッとプライベート空間を見るとロムのウィンドウが無くなっていた。あいつも休憩しているんだろう。トウマの液体猫は未だに個体猫になっていて置物化している。


プルルルル、プルルルル。


 時計を見るとまだ朝の五時だった。えー……、こいつ、こんな朝早くから連絡してきたのかよ……。昨日は二時に寝たから休息時間は三時間程度だったな。有意義な三時間だった。目覚めは最悪だったが。


プルルルル、プルルルル。


 すげー、鳴っている。どうしよう……、出たくないな……。


プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル……。


……だああああああ、うるせえ!

 半分キレ気味になって通話ボタンを押す。


『はい! もしも……』

「おい! 今すぐ、ナズナとフキノに電話しろ!」


 俺以上にキレていて、それだけ言ってブチって切られた。なんでナズナ達に電話しないといけないのか、そもそもお前はどこにいるんだ? などの疑問を置き去りして。

 何はともあれ、ナズナ達に電話をする。


「あ、おはようございます。ユウゴさん」

『さっきリュウドウからお前らに電話しろって言っていたけど、どうしたんだ?』

「とても言いづらいですね。簡単に言うとリュウドウさんが船で戻ってきたんですか、運賃を払うのを渋っているんです」


 言いづらいとか言って普通に言えてんじゃん。それにしても運賃を払うのが嫌がるのは、どうかと思う。踏み倒すなよ、リュウドウ!

 ナズナが「視点と聴覚をリンクしてもいいですよ」と言うのでリンクする。すると大人や武装機体兵達が集まっていた。よく見るとフキノもいる。


『え? 何してんの?』

「ああ、漁師さん達が朝ごはんを食べるみたいです」

『なんか炊き出しみたいだな』

「私達も食べていいって言っていたので、並んできますね」


 そう言ってナズナは炊き出しの列に並んでいった。炊き出しメニューは魚の味噌煮が入ったおにぎりとわかめスープだ。どれも美味そうで、こんな朝早くから飯テロに襲われるとは思わなかった。

 保護者のリュウドウが運賃払いたくないと駄々をこねているのに、お前らは味わって食べていていいのだろうか? 

 フキノはわかめスープをお椀で飲み、おいしそうな顔になる。


「あー、美味いな! これ」

『いいな。俺も食いたいよ』

「ユウゴさんは地獄の時間ですね」


 俺達が喋っていると一人の漁師が「誰と話しているの?」と聞いてきた。


「ユウゴ。脳しかないから電脳空間で暮らしている」

『どうも、ユウゴです』

「脳しかないのにどうやって生きてんの? お前」

「本当に生きているの?」


 話しを聞いていた漁師や武装機体は疑わしい目で俺を見ている。でもこの反応が普通だよなと思う。

 ふとナズナが目線を逸らして海を見ていた。一列に並んだ船や薄い青の空と同じ色の海。穏やかな波の音が聞こえる。

 朝だから日も低く、海を照らしてキラキラと光っていた。爽やかな風が吹き、俺には嗅覚が無いが潮の臭いがした気がした。

 綺麗な海だな……と思っているとリュウドウの「おい! ナズナ! フキノ!」という怒鳴り声が聞こえてきた。情緒的な気持ちが台無しである。


『呼ばれているぞ』

「朝食を食べ終わったら向かいます」

「食べながら行ったら、リュウドウに色々言われるし」


 そう言って二人は黙々と食べる。その姿に漁師と武装機体は「図太いよな、お前らって」「さすがリュウドウの所の武装機体兵」と言いながら朝食を食べていた。





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