機体持ちに改造せよ
今度は手術室の隅の方の目線になった。やはり周りを見ると現実っぽい空間だ。動画を見ているような感じになる。
そして手術台には真っ黒な人型のアバターがいる。
『あの黒い人型が、さっきユウゴとトウマが見ていたアバターの位置だよ』
『やっぱり手術室だったな』
しばらくすると俺たちが見聞きした手術するドクターたちが現れた。だが人数が少なく、カートの音やメスなどが無かった。
『あれ? メスとか無いじゃん』
『手術している人間目線だから、余計な物が作らないんだよ』
すると「麻酔をかけます」とドクターは言うと黒いアバターに注射をすると辺りは真っ暗になった。
俺が驚く前に『麻酔をかけたから、見ているアバターは眠りに入るんだよ』とロムは答えた。
そうして辺りは明るくなった。今度はベッドに入った黒いアバターがいた。周りを見るとどうやら病室だ。
『手術は成功して、今は入院中って感じかな?』
ロムがそう言うと手術をしたドクターが現れた。もちろん病室のみしか作られておらず、診察室どころか病院の廊下すらない。
ドクターはアバターに手術は成功した、今は安静に、と言われていた。ロムの言う通りだなと思っているとドクターはさらに言う。
「これで君も機体持ちになった」
俺は『え? 機体持ち?』と言って考える。
ロムはこの空間で起こったことは本当に起きたと思い込めると言っていた。だとしたら人質がディメンションブレイクを破壊したり、ドラム缶ロボットを蹴り飛ばせたり出来たのもこの空間で機体持ちの手術をしたと思い込んでいたからなのか?
そう思っていると黒いアバターはリハビリをドクターから言われてやるのだが、車を破壊したり、とんでもないスピードで走ったり、どう思ってもリハビリメニューには思えない。この破壊的な力は武装機体兵のようだ。
『だけど思い込みで人間離れした力を持てるのか?』
『そもそも人間の脳って、これ以上力を使いすぎるとヤバいって認識してリミッターを付けているでしょ?』
『あー、そう言う話しを聞いたことがあるな。危機的状況になると、リミッターを外して思いもよらない力を出すんだろ。【火事場の馬鹿力】ってやつ』
『そうそう。実を言うと機体持ちになっているって暗示させているんだよ。他にも、洗脳して催眠術にかかったような感じにしたり、てんかんみたいな症状を起こしたり等々が出来る。元々戦時中に使われていたハッカーをおびき寄せて入らせる空間だった。禁止して二度と使わせないようにしていたのに、戦後の混乱で流出しちゃったみたいだね』
『みたいだねってヤバいじゃん』
『うん、だからこの件に関してはアクアリウム・クオリアも動き出すと思う』
アクアリウム・クオリア、俺達の脳を管理しているマッドサイエンティストの組織だ。なんか澄ました態度で接するが、言っている言葉は俺の常識をぶっ飛ばしている金魚のアバターをつけた奴を思い出すと、ムカムカしてきた。
そうしているとアウラの空間が終ってリュウドウのプライベート空間に戻ってきた。




