表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/106

見る専 ロム


 入った瞬間、パアッと光が付いて眩しかった。しかもその光は消えることは無く、自分を照らしていた。何となく見覚えがある光だなと思った。ああ、分かった。手術室で使うライトに似ているんだ。

 電脳空間なのに、妙にリアリティがあった。電脳空間は現実が崩壊しているから、現実離れした綺麗さや奇抜さ、またはアニメ的な演出が目立つ。

 でもここの天井は見覚えのある壁で、一向に面白おかしい演出は無かった。無機質な感じがある。異質な空間だ。

 そう思って体を動かそうとすると動かなかった。ん? 固定されている?


『ねえ、ユウゴ。ここ、ヤバい』

『どうした? トウマ?』


 電脳空間では自信家で唯我独尊なトウマが怯えている。しかも俺の呼びかけにも反応がなってしまった。

 その時、自動ドアの音が聞こえてきて青い帽子や手袋、術衣を来た男性や女性が現れた。そしてゴロゴロとカートの音が聞こえて、金属音が聞こえてきた。

 あ、これ、やっぱり手術だ!


『もう無理だ!』


 トウマが叫んだ瞬間、トウマの気配が消えた。

 その瞬間、ものすごく胸が痛いくらい熱い。胸なんて俺には存在しないのに。そして焦って苛立ってくる。どうしてだ? なんで、こんなにもイライラしてくるんだ? そして何かしないといけないって思ってしまうんだ? 忙しない気持ちはグルグルと溢れ出ている。


『そもそも身体なんて無いんだから、どうする事も出来ないじゃん』


 俺の声でもトウマの声でもない。知らない声が響いた。え? 誰?








『そろそろ起きなよ』


 知らない声が聞こえて、パッと目を開ける。

 そこはリュウドウのプライベート空間だ。あれ? 俺とトウマはハンゾウに頼まれた電脳空間に入ったはずなのに、なんで戻ってきたんだ?

 あたりを見回すとトウマのアバターらしきものが見えた。


『固まっている』


 いつも魅惑の弾力を持っていた液体猫のアバターは氷のように固まってしまっていた。これじゃ、【固体猫】である。

 俺がペシペシと叩いても硬くて、トウマも反応がなかった。


『あーあ、やっぱりトウマは耐えられなかったか』


 また知らない声が聞こえきた。


『あのさ、気づいているんだったら反応してくれない? 自己紹介が出来ないでしょ』

『……あれ? 謎の声が聞こえるぞ?』


 本音ではもう色々とありすぎて、知らない声が聞こえてきても疲れて反応したくなかった。でも何とか絞り出して出た言葉に、声の主は『うーん、わざとらしい』とわがままを言ってきた。


『何はともあれ、自己紹介のきっかけを作ってくれてありがとう。私はロム。見る専だ』


 ここにきて新キャラが来るとは思っても見なかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ