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何にも知らないナズナとフキノに事件のあらすじを話す


「ふうん、大変でしたね。ユウゴさん」

「お疲れさん」


 そう言いながらナズナはナスの照り焼きを食べ、フキノはお味噌汁を飲む。



 アンズとスダチと別れた後、ずっと届いていた【あんた、いつ人生微糖のバイトに行けるの?】と言うメールにようやく返事を返した。ちなみにリサは事件が発生した時、さっさと帰った。


「私がいたって何も解決できないでしょう。それに、そろそろナズナ達が帰ってくるんだから、お店を開くわ」


 そしてアンズが地下鉄に突っ込んだって報告した際は「スダチがいるから大丈夫」と冷静に言っていた。本当にたくましい。それもこれもスダチやアンズを信頼しているからなのかもしれない。


【今、終わりました。すぐに向かいます】

【レジお願い】


 簡素な返事になんだかなと思ってしまう。

 散々ボコボコにされたドラム缶ロボットから無人レジを操作して、酔っ払いどもの会計をする。立てこもり事件であんなに大立ち回りを……していないけど、もうちょっと休ませてほしかった。全くめまぐるしい一日だった。

 最後の客を帰らせて掃除を終えて〈俺用の掃除ロボットがある〉、ナズナとフキノは賄いを食べてながら、聞きたがっていた今日の事件を話した。


「それにしても私と一緒のネイビーの髪の武装機体兵が関わっているのか……。ヤダな」

『ナズナの武装機体兵は賢いからね』


 武装機体兵にも種類がある。戦闘能力が高い子、操縦が出来る子、そして他の機体より知性が高い子、等々。戦場に応じて色々といるのだ。

 その中でナズナのようなネイビーの髪の子達の武装機体兵は結構多い。多分、指示を正確に理解して実行できる知性がある事、ネイビーと言う黒に近い髪色である事、それと他の機体より力が無いからだろう。それでも大人一人分は軽々と持つけど。


『色々あったけど、俺的には武装機体兵が風邪で死ぬって聞いてびっくりしたなー』

「そうなんですよねー。だから冬には風邪予防しないといけないんです」


 そんな会話をしているとフキノがナスの照り焼きをそっとナズナの皿に入れようとする。


『おい、フキノ。ちゃんとナスを食えよ』

「あ、また私のお皿に入れようとしたでしょ。ちゃんと食べなさい、風邪ひくよ」

「ナスを食べなくても、風邪にならないよ」


 そう言いながらフキノは嫌そうにナスの照り焼きを食べた。本当にこいつは偏食が激しい。




 ナズナ達が賄いを食べ終わった頃、リュウドウのプライベート空間に戻ると、ハンゾウから着信履歴があった。だがそれを無視して溢れ出ているダイレクトメールを片してながら、さっさと寝ようと思った。

だが再び着信があり、無視してもずっと鳴り続けているので諦めて出た。


「おう、起きていたか。ユウゴ」

『深夜零時で夜分遅くにすみませんって無いのか』

「電脳ヒッキーは深夜が活動時間だってアンズが言っていたぞ」


 クッソ! アンズめ! 確かに俺は夜型だが、今日のように目まぐるしい日中だったら夜は普通の人間のように寝るのに! 

俺の恨み節なんて考えず、ハンゾウは「それでな……」と話し始めた。


「暴走した電車を回収したんだ。多分、気が付いているだろうけど操縦桿に繋げていた電子端末を通じて地下鉄を運転していたようだ」

『電子端末で動かせるって、地下鉄の操縦も簡単になったな』

「まあな。それから電子端末には、人質役が見ていた電脳空間も入っていた」


 ハンゾウは「それの解析をお願いしたいんだ」と言った。


『他の警察に任せないのか』

「任せたら俺達は蚊帳の外だ。何にも教えてくれないし、手伝おうとしても断られる。だったら来る前に調べようと思ったんだ。お前は電脳空間に詳しいんだろ」

『まあね』


 物語のように警察と言う組織には派閥があるようだ。それにハンゾウ達は派遣って事は正式な警察の職員ってわけじゃないさそうだし。


『逃げていったもう一人の眼鏡の行方は掴めそうか? 人質は【闇医者】って呼んでいたな』

「難しいな。知っているかもしれないがキミンチの方へ入って行ったら、無法地帯な上に広大で精神的も倫理を捨て去っている奴もいて、探していたら命の危機がある。命を懸けるほどの給料をもらっていないから正社員の警察も本気で探さないだろう」

『マジかい。俺、一応ペイント弾を打ったんだけど、それで追えないかな?』

「追うほどの給料はもらっていないからな」

『おい! こら!』

「だがメンバーの中に【闇医者】と名乗っていたのなら、俺たちが捜査していた事件を糸口が掴めるかもな」


 ハンゾウが意味深なことを呟いた後、「お前、人質役の人間に見覚えがあるだろう」と言われ、『そうだな』と告げた。


『先日のナゴノ爆破未遂事件の関係者の似顔絵を似ている気がする』

「名前は公表していないけど、この似顔絵はイトジマ タケルって名前の男だ。トキオ奪還の幹部の一人で、イトジマ議員の孫」

『とんでもない肩書が二つほどあるな』

「議員の孫って色々と配慮してもらってんだよ。爆破未遂もあいつが計画したんだろうけど、公表はしないで関係者って事で濁している。とはいえ、今日出た似顔絵で誰だか分かる奴は多いけどな」

『思いっきり権力を使ってんな』

「幹部って事も隠そうと議員も警察も必死だ。だが世間ではバレバレだけど。それにイトジマ議員は孫を溺愛してんだよ。戦時中にほとんど家族を亡くなっちゃったからな。気持ちも分からなくもないけど」

『ふうん。だけどあいつ、変なことを言っていたな。うわー、すげー似ているって。誰かに変装しているんじゃないのかな?』


 俺の言葉に「ほう、なるほど……」とハンゾウは呟いて少し考えた後、「それじゃ、電脳空間の解析をよろしく」と言った。


 ハンゾウとの通話を切ると俺が身につけているカートゥーンみたいな手足が付いたレモンクラッシュのペットボトルアバターの足元に液体猫のトウマがいた。


『おはよう、トウマ。電脳空間の単語が聞こえちゃった』

『おはよう、じゃ無いんだけどね』

『知らないの? 業界人は夜だろうが【おはようございます】って言うんだよ。それに地下鉄の電車を立てこもり事件があったんだって、それからアンズがホームを飛び越えて線路を走っていったんだって』

『お前、一日中、眠っていたくせによく知っているな』


 今日一日中、眠っていた癖にトウマは何故か今日の出来事を知っている。俺と脳が繋がっているからなのか?

 不思議に思って言うと俺のアバターの足をペシペシと尻尾で叩いてくる。ポヨンって感じのモーションで叩く尻尾はゼリーのように弾力があった。


『さっさとやろう! トキオ奪還の幹部が見ていた電脳空間に』


 にんまりした顔でトウマはそう言ってきたので、俺はハンゾウが送ってきた電脳空間に飛び込んだ。





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