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暴走・地下鉄車両! ②


 占領している車両をペイント弾で真っ赤にしてしまい罪悪感で『ごめんなさい』と謝罪の言葉を述べた。

 トキオ奪還メンバーとキュウリを落とした子、仲間であるはずのアンズすら迷惑そうな顔で俺、つまりドラム缶ロボットを見ていた。もう一度、『申し訳ございません』と謝罪した。


「やっぱり操縦している奴がいたのか」


 そう言って人質はドラム缶ロボットを思いっきり蹴ろうとした。また飛ばされると思って身構えた。だは蹴られた時、反動は少なく車体がちょっと揺れるだけだった。

 しかも人質は「痛い……」と言って脛を抑えていた。あれ? さっきはこの車体を蹴り飛ばしていたのに……。


「クソ、どういう事だよ。俺は機体持ちになったんじゃないのかよ!」


 なぜか眼鏡に文句を人質は言う。言われた眼鏡は憮然とした顔して黙っていた。

 突然、弱体した人質に俺は『あのさ』と喋りかけた。


「あ、喋った」

「操縦している奴か?」


 人質ではなく付け毛とストラップが俺の声に驚いているが、構わず人質に話しかける。恐らくこの場を仕切っているのは、この人質だ。


『俺達を開放してくれないかな? いきなり電車が走り出したから、立てこもりは失敗しているし』

「はあ、出来るわけねえだろ!」

『じゃあ、また駅に戻って立てこもりをするのか?』


 また戻って要求行っても、ハンゾウの予想の斜め上の説得を聞かされるか、警察に捕まるだけだ。そう思っているのか、渋い顔で悩んでいた。


『そもそも立てこもった後、どうするのか考えているのか?』


 俺がそう言うと付け毛とストラップは「いや、そこだよ。そこ!」「俺達もそれが聞きたかった!」となぜか同調してきた。


「俺達も車両を占拠したら次の指示を出すって言っていたんだけど」

『指示役がいたのか』

「そう。そもそも俺達はトキオ奪還のメンバーでは無いんだよ」


 衝撃発言をしたストラップに人質は「おい、バラすなよ」と怒る。だがストラップは「だって、もう失敗だろ」と開き直った態度で言う。


「俺達はこの人を人質に取ってトキオ奪還のメンバーのフリして車両を占拠しろって言われただけなんだ」

「バカバカ! こんな事を話したら色々とマズいだろ! 俺達、大学いけなくなるし、高校も停学処分されるぞ!」


 付け毛の言葉にストラップは慌てて止める。大学と言う言葉を聞いて俺が『あ、高校生なんだ』と呟くと付け毛とストラップは押し黙った。

 でも高校生にしては年を食っているように見える。トキオ奪還メンバーや人質は、もう二十代前半くらいだ。

 でも戦前は十六歳から高校に行くのが通過儀礼だったようだが、今の時代、行く人間はほとんどいない。二十歳のシラヌイは働いて独学で高校卒業証明書をもらって高校自体は行っていないと言っていたし、年食っても通信とかの高校に行く奴もいるってリュウドウは言っていたな。だから二十歳過ぎの高校生がいてもおかしくはないのだ。


「おい! 聞いてんのか? 俺は機体持ちになったんだろ!」


 人質は相変わらず眼鏡に怒鳴るが、つまらなそう顔をして見ているだけだった。その態度に腹が立ったのか、近くにいたドラム缶ロボットを軽く蹴り上げた。ちょっと車体が動く程度だったが、もう同情するくらいこのロボットは衝撃を受けている。


「聞いてんのか! 闇医者!」


 闇医者? この人、医者なんだ。付け毛とストラップと同じくらいの年齢なのに……。と思っていると、眼鏡は「スタンガン銃、貸して」と付け毛に言ってきた。付け毛は素直に「おう」と言ってスタンガン銃を渡す。


 バシュ!


 流れるような手つきで人質にスタンガン銃を撃って、物理的に黙らせた。付け毛とストラップ、そしてキュウリ落としの子が驚いていると電車が突然、急ブレーキをかけた。


 車輪と線路の甲高い悲鳴を上げて、電車は止まった。車内にいる全員がバランスを崩していたり、転んでいた。そして俺が操縦するドラム缶ロボットも転がった。

 そんな中、操縦桿と電子端末のケーブルを外していたアンズだけは身を低くして踏ん張っていた。完全に電車が停まった瞬間、誰かが落としたスタンガン銃を拾う。


「ギャハハ! 形勢逆転だあ!」


 完璧に悪役のようなセリフをアンズは吐いて、スタンガン銃を向けた。




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