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暴走・地下鉄車両! ①


 ぞろぞろとトキオ奪還のメンバーもフェイスマスクを取っていった。

 人質を取っていた男は前髪の一部が赤く三つ編みでキラキラと光る。おしゃれとか全然詳しくないけど、ナズナが仮首都ではかっこいい付け毛が流行っていると言っていたのでこれの事じゃないかな? と思う。こいつのあだ名は【付け毛】にしよう。

 電車の車両に残っていた男は、フェイスマスクを取った後、すぐにストラップみたいなピアスをつけた。こういうのも仮首都では流行っているようだ。あだ名は【ストラップ】だ。

 もう一人、残っていた男は……、他のメンバーに比べて特徴が無い。と思ったら、ポケットから眼鏡を出してかけた。よし、こいつのあだ名は【眼鏡】だ。


 それで問題は人質だった茶髪の機体持ちらしい男のあだ名は【人質】だ。

 こいつは突然発車した車両の座椅子にふんぞり返って座っている。時折、車両の窓を鏡にして「うわー、すげー似てる」と呟く。

 あと巻き込まれた帽子をかぶった女性……。


「……お前って、武装機体兵なんだな」


 声のする方を見ると正座して大人しくしているアンズを付け毛とストラップがジロジロと見ていた。物珍しそうに見られウザそうな顔になるアンズは「そうだけど」と答えた。


「へえー。本当に髪が真っ赤。染めていないんだろ」

「お前だって、髪がちょっと赤いじゃん!」

「これは付け毛だよ」

「でもそこら辺にいるだろ? 武装機体兵なんて」

「いや、あまり武装機体兵を見たことないんだよ。仮首都の人間だから」

「俺も、うわー、初めて見た」


 そう言って付け毛とストラップは物珍しそうに見ているのでアンズは「ジロジロ、見んな!」とキレ、「うわー、怒った」と珍獣を見たような感想を言う。

 イライラしながらアンズは座席に縮こまって座っている帽子をかぶった女性をビシッと指さして言う。


「あいつだって武装機体兵だろ! サングラスやかつらを付けて変装しているだろうけど、私の目はごまかせないぞ!」


 アンズがそう言うと巻き込まれて縮こまって女性は舌打ちしてサングラスを取り、帽子と黒髪を一気に取った。

 確かに数時間前に追いかけていたネイビーの髪の女の子、キュウリ落としの子だ。変装していた時、俺は全然気づかなかったけどアンズは気が付いて占拠していると言うのに空気を読まずに特攻していたのか。


「やっぱり、ぶつかってきて私のキュウリを落とした奴だ!」

『お前、どうやって分かったんだ』

「決まってんだろ! 勘だ!」


 ……あのキュウリのために勘で特攻したのか。命知らずなアンズの行動に恐れと尊敬を抱いてきた。

 ようやくキュウリの敵を見つけたアンズは「その落とし前、どうつけるんだ?」と言い、立ち上がって近づこうとした。

 すると首謀者は「うるせー!」と怒鳴った。


「大人しくするって言っただろ!」

「その前にキュウリの落とし前をつけさせろ!」

「意味が分からねえことを言うな!」


 人質の正論過ぎる言葉を無視して、アンズはズンズンとキュウリを落とした子に近づいていく。人質は舌打ちを打って眼鏡からスタンガン銃を「貸せ!」と言って奪い取り、アンズに銃口を向けた。

 俺はとっさにペイント弾を撃った。


 バシュ!

「うわ!」


 人質に撃ち、頬に真っ赤なペイント弾が付いた。素早く人質は「何すんだ!」とスタンガン銃の銃口を向け、俺は血の気を引いた気がした。

 わわわわ! ヤバイ、ヤバい! どうにかしないと、どうにかしないと! そう思ってバシュバシュとペイント弾を無我夢中で四方八方に打ちまくった。


「おい! 壊れたのか?」

「色々と雑に扱われていたからな」


 俺の必死の抵抗に、なぜかトキオ奪還のメンバーは同情的な眼差しを向ける。いや、壊れていないんだよ! 必死の抵抗なんだよ! 同情するなら、この状況をどうにかしてくれ!

 だがペイント弾はすぐに弾切れになった。


『あ、切れちゃった』

「馬鹿、ユウゴ!」


 アンズの罵倒が俺の心に響かせる。能無しの俺だって必死なんだよ……。ペイント弾が無くなってしまってどうしたらいいんだ?

 車両一面にペイント弾の跡があり、トキオ奪還メンバーや人質、キュウリを落とした子、そしてアンズもペイント弾に当たってところどころ赤くなっていた。

 何となく、ちょっと気まずくなってしまった。

 重たい雰囲気のまま電車は走るよ、どこまでも。





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