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ドラム缶ロボット、試運転中


 キュルキュルとローラーの音が響く。この音はちょっと慣れないな……と思いつつ、階段を登る。そう、このロボットは階段も昇り降りができるのだ!


「うわー、なんだこれ?」

「動くゴミ箱だ!」


 好奇心旺盛の武装機体兵達は、俺が操作するドラム缶ロボットに集まる。


『誰だ! ゴミ箱って言った奴!』

「うわ! 喋った!」

「この声ってユウゴだ!」

「ユウゴ、ゴミ箱に転生したの?」

『転生してねえよ!』


 武装機体兵はドラム缶ロボットをペシペシと叩いたり押したり、馬鹿な奴は乗ったりする。俺が『乗るな! ペイント弾を食らわせるぞ!』と銃口を見せて怒るが、周りの奴は大笑いする。

 そして監視をしているスダチも爆笑している。おい! 笑っていないで注意しろよ!

 だが武装機体兵の好奇心はそこまで持続せず、さっさと帰ってしまった。そうして人通りが無くなった改札前の壁際でスダチと俺は立ち話をする。


「あんたって脳しかないって言っていたけど、どういう状況なの?」

『よく分からない。説明してくれた奴からは他の脳とくっついているらしい』

「え? どういう事?」

『本当に詳しくは分からない。説明してくれた奴は、生きているうちに脳を見ることなんて無いんだからと言ってはぐらかされた』

「なんだそりゃ」

『それでフリーランスとしてやっていこうとしたら、肉体が無いからログアウト出来なくて、電脳空間でホームレス状態になっていた所をリュウドウと出会った』

「電脳空間でホームレスってすげえ状況だな」

『それでリュウドウのプライベート空間で仕事をするようになった。だけど電脳空間での仕事よりも、ここ現実世界での仕事の方が圧倒的に多い』


 リュウドウに「ほら、俺って電脳の中にいるから、現実の仕事って向かいないんだけどー」と言っても無視される始末だ。全くやってられない。

 一通り俺の自己紹介が終わった所で、スダチの話しになった。


『あんたって機体持ちなのか?』

「まあね。それと元青少年軍事訓練生」


 知らない身分に俺は『……訓練生?』とオウム返しで聞いた。そう言えば、セトと言う派遣巡査も言っていたな。


「戦時中に武装機体兵の面倒や指示を行ったり、たまに一緒に戦う。訓練生とか便宜上で言っているけど、普通に少年兵さ」

『志願したの?』

「そうだな。そもそもトキオ空爆の時のケガで、俺は首から下が武装機体兵の機体になっているんだよ」


 え? 首から下ってほとんど武装機体兵の体じゃん。


「機体持ちの人間って、危険人物って事で疎外されちゃうんだよ。だから自然と少年兵の志願をみんな勧めるんだ。普通の生活には戻れないってね」

『ふうん、大変だな』

「俺だけじゃないよ。この時代の若者は全員苦労人さ」


 スダチは自嘲気味に笑った。こんな時代に生きている時点で、ほぼ全員が苦労人だろうな。昔で言うなら【生まれてくる時代ガチャ、失敗】だろう。

 スダチと俺が黄昏ていると「スダチー」という甲高い声が聞こえてきた。アンズだ。

 パッとカメラを向けると、アンズの足の裏が見えた。飛び蹴りだ! それを冷静にスダチは腕でかわす。

 アンズはクルッと回転しながら着地して、顔を歪めて俯いた。


「なんで平然と帰ってくるんだよ、スダチ」


 苦しそうに吐き出されたアンズの言葉。俯いている顔も泣きそうだ。


「お前が何にも言わずに居なくなって……私、辛かったんだ」

「ごめんな、アンズ」


 ほんの少しだけスダチは申し訳そうな顔になった。そして背負っていたギターケースからある物を取り出した。

 それはチョコ飴の缶だった。仮首都 ナゴノ及び数県しか流通していない高級菓子の一つである。

 アンズは顔をあげるとパアッと表情が明るくなった。


「これを……」

「ちょうだい!」


 目に追えない素早さでスダチからチョコ飴の缶を取った。そしてスダチはあげるなんて言ってもいないのに、アンズは缶を逆さにして口を開けて食ってしまった。飴って噛んで食うもんじゃ無いのに、アンズの口からボリボリと音を立てる。味わって食べると言う概念が無いのだ。

 この姿に呆れたように笑っていたスダチは「俺を許してくれるか?」と聞いた。


「許す!」


 アンズは飴を嚙みながら宣言した。



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