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アンズとスダチ


 ボリボリと飴を噛んで食べる音が聞こえる。飴は味わいながら舐める食い物って事をアンズは知らないだろうか?

 それよりも聞きたいことがある。


『スダチって今までどこにいたの?』

「ホクリョウ地って言う、最北端の島。戦争が起こる前に隠した財宝を探していたんだ」

「ええ! すごい!」


 純粋なアンズが目をキラキラさせて言っているが、俺が『大嘘だろ』と呆れて言う。この反応にスダチは「マジだぜ」と得意げに言い、「だよねー!」とアンズは俺すら見たこと無い無邪気な笑顔を見せている。

 本当にスダチってアンズの元保護者だったんだなって思った。


『一年間、ここに居なかったって事はナズナとフキノを知らないのか』

「……誰それ?」

「春頃にリュウドウが連れてきたいい子ぶりっ子とひょろくてのんきな奴」

「ふうん。リュウドウが武装機体兵を連れてきたんだ。珍しいな」


 そんな時、改札からオレンジの髪の武装機体兵と保護者が通りかかった。オレンジの髪の子はアンズに気が付いたが保護者がいる手前、喧嘩を売ることが出来ず睨んであっかんべーだけした。

一方、アンズも気が付いて、ちょっと勝ち誇った顔で見ていた。

 この二人の様子にスダチは「何があったの?」と聞いた。


『アンズがオレンジの髪の子と彼氏とデート中に脅かしたんだよ。しかもその彼氏が二股かけているって事も暴露しちゃって、ブチ切れているんだよ』

「アンズ、それやめろって言っているじゃん」

「でもスダチだってやったじゃん」


 不満げに言うアンズにスダチは「あれはさ……」と気まずそうに言い訳しようとしたところを、俺は『何があったんだ?』と聞いた。


「いや、前にね、少年院から脱獄した奴が彼女の家にいるって分かってアンズと一緒に乗り込んだんだよ。そこで脱獄野郎が彼女とイチャイチャしている時は気が緩んでいるから脅かして押し込もうってアンズと作戦を立てたんだ。それで作戦を決行したんだけど、脱獄野郎と彼女の驚き方がものすごく面白くてさあ」

『お前が原因かい!』


 スダチは思い出したのかニヤニヤと笑う。アンズも「あれは面白かったよな」と一緒に笑いあう姿にちょっと呆れた。

 意地悪気に笑いあうアンズとスダチを見ていると、やんちゃな兄貴と生意気な妹って感じだ。

 そんな時だった。


 バシュ! っというスタンガン銃の音が聞こえてきた。


 どこかの馬鹿な武装機体兵がトラブルを起こしたなと思っていたら、聞き慣れないチャイムの後、こんな放送が聞こえてきた。


【暇な職員、一番ホームに集合! 繰り返す。暇な職員、一番ホームに集合!】


 かなり緊迫した口調で流れる放送でスダチとアンズは走り出した。


「おい! 行くぞ! ユウゴ」

『へ?』

「へ? じゃねえよ! 緊急事態だぞ! 現場に急行だ!」


 アンズとスダチがエスカレーターを駆けて降りて行くのを見ながら、俺も慌てて動き出した。……というか、俺、いつの間に職員になったの?




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