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ドラム缶ロボット、登場!


 俺は恐る恐るハンゾウに電話をかける。アンズを止められなかった説教で何言われるんだろうって身構えていると「もしもし?」と言うハンゾウの声とくちゃくちゃを食べる音が聞こえてきた。


『もしもし、ユウゴです』

「あー、ユウゴか。リュウドウから話しは聞いているよな?」

『全く聞いておりませんね』


 何にも知らない俺に対してハンゾウは狼狽える事もなく、「じゃあ、説明するか」と話し始め、何の前触れもなくビデオ通話にして、見たくもないハンゾウの鼻の穴が見えた。うん、絵面が汚い。


「えーっと、これを見てくれ」

『ハンゾウの鼻をか?』

「あれ? なんで俺の鼻が映っているんだ?」

「ハンゾウさん、貸してください」


 機械の弱いハンゾウからコナが電子端末を操作して、ようやく見せたい物を移した。ドラム缶くらいの大きさだが、周りはビニールのクッションになっていて、上には半円形のカメラがあり、下も半円形のローラーになっていた。そしてなんか年期が入っている。

 ……あとなんか某有名なスペース・オペラの映画でこんな機械を見たことがある。


「これを操作して、この地下鉄の駅構内を見回ってほしいんだ」

『このドラム缶、動くのか? これ』

「ちょこちょこ改造したから、動くはずだ」

『なんで見回らないといけないんですか?』

「何でって、人材不足なんだよ。毎日、常識知らずな武装機体兵がトラブルばっかり起こす。それなのに対処する人間が少ないんだ。リュウドウにユウゴを週に数回程、地下鉄駅構内の見回りをさせたいって言ったら二つ返事で了承を得たんだ」


 リュウドウめ、二つ返事でオッケーを出すな! 俺が怒りを沸々と湧いていると「とりあえず、この機械を操縦して見ろ。コードはこれだ」とハンゾウは勝手に話しを進める。

 機械の操作はこれが初めてじゃない。人生微糖で無人レジの中に入って会計を監視したり、旧型の掃除ロボットを操作したりしている。

 だけどこんな大きなドラム缶を操作して動かすのは初めてだ。恐る恐るコードを打ち込んで、起動してみる。するとカメラ映像が出てきたが、ぼやけていた。


『このドラム缶のカメラを拭いてくれ』

「おう」

「うわあ、動いてます!」


 試しに動いてみるとコナが興奮気味に言う。ハンゾウがカメラを拭いてくれたので、部屋の様子が見えた。駅員の控室のようで仮眠できる畳やパイプ椅子とテーブルが置いてあり、小説と漫画などが置いてある。

 そしてアンズもいて、冷ややかな目で見ている。


「ハンゾウ、多分こいつに駅構内を見回るのは無理だぞ。慌てるだけか、ツッコミ入れるだけ」


 アンズめ、冷静に俺の行動は分析している。だがハンゾウは「そんな奴を入れないといけないくらい人手不足なの」と言った。

 スダチは興味津々でドラム缶ロボットを見ている。


「それにこいつにはすごい機能が付いているんだぜ」


 ドヤ顔でハンゾウは言い、俺に向かって「ほれ、打ってみろよ」と勧めてくる。これの事かな? と思いつつ、とある機能を起動した。


「おい! ユウゴ! 頭からナニを出して……ブベ!」


 俺はドラム缶ロボットの機能であるペイント弾を発射させた。自動照準でアンズの顔面にお見舞いしてやった。

 蛍光ピンクのペイントを顔面につけられたアンズにスダチは大爆笑し、ハンゾウはニマニマ笑って解説をする。


「ペイントの弾数は十個までだ。水で洗い流せるが、特殊な塗料でブラックライトを当てると一週間くらい光る。ヤベエ事をやっている奴をこれで打ってもらえれば、警察も追いやすくなる」

「ギャハハハハ! ヤベエな、アンズ!」

「うるさいよ、スダチ! もう! ユウゴのくせに!」


 半笑いのコナからタオルを貰ってペイントを落としたアンズは真っ直ぐに俺の所にやってきた。わわわ! マズイ! すぐさまアンズから逃げた。ドラム缶ロボットはキュルキュルとローラーを動かしているが、意外にも素早く動いた。

 アンズから逃げていると、控室のドアが開いて「こら、アンズ!」と聞き慣れた声が聞こえてきた。

 カメラを向けると眉間にしわを入れたリサだった。


「全く、また迷惑かけて」

「違う! ドラム缶ロボットを動かしているユウゴが悪いのさ!」

「どうせ、あんたが変な事をしたんでしょ! それにギャハハハって品のない笑い方して!」


 そう言ってリサはアンズの頭を叩く。日頃の行いのせいである。

 そしてスダチを見つけるとリサは「あんたも!」と言いながら向かう。


「ちょっと! リサ姉、俺はまだ何にもしていないぞ!」

「これから悪い事するんでしょ! それにあんたが去った後、アンズは大変だったんだよ!」


 そう言ってスダチをぺちぺちと叩く。だが叩いている手は機体の方ではなく、リサの手だった。

 リサの腕も機体で、普通に硬いカボチャを機体の手で握りつぶしたりできる。見た時は、『ヒェッ』って声が出た。

 スダチを手でリサの攻撃を避けているのを見ていたハンゾウは口を開いた。


「それじゃ、アンズとリサで面談する。その間にロボットの操作の練習でもしてくれ。あとスダチは監視をお願い」

「えー……、分かったよ」


 スダチは面倒くさそうに返事をした。





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