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アンズの暴走③


 アンズは未だに駅構内をフラフラしている。

 

『おい、アンズ。セトを探しているんだったら駅員に聞いたらどうだ?』

「馬鹿! セトに見つかったらロッカー投げてきた奴の騒ぎについて聞かれるだろ」

『じゃあ、何処に行こうとしているんだよ』

「シラヌイの所!」


 そう言って駅構内の出口を探しているようだ。ここの地下鉄の駅構内は元々複雑なのだが、更に勝手に出ている出店などのせいで迷路のようになっていて、迷いやすいのだ。

 いや、それよりも、だ。


『なあ、スダチって誰?』


 アンズがセトやシラヌイを探している理由は、スダチと言う男が帰ってくると言う情報を聞いたからだ。だけど俺はスダチって男を知らない。多分、セトやシラヌイと友人らしいけど。

 俺が尋ねた所、アンズはとっても具体的な回答を言った。


「スダチはスダチだ!」

『だから! 何者だっつーの!』


 そんな事を話していると「冷やしキュウリ! いかがですかー!」という声が聞こえてきた。アンズの視点がキョロキョロすると冷やしキュウリの旗を背中に背負った武装機体兵が声出しをしていた。


「腹減ったな」

『お前、さっきご飯を食べただろ』

「ユウゴ、奢ってよ」


 俺の話しを聞かないどころか、たかられている。脱力しているとアンズは試すような口調で「私、お腹が空いて暴れそう」と言ってきた。……こいつ!


『分かったよ。奢るよ』

「やったー!」


 アンズはスキップしながら冷やしキュウリの屋台に向かった。

 意外と思うが、ここ地下鉄構内のお店や出店は電子マネーが主流になっている。

 武装機体兵のお給料はほとんど電子マネーでもらっているから、必然的にこいつらが立ち寄る場所は電子マネー対応になっているのだろう。

 なので俺は自分の電子マネー表示を出して、アンズのために冷やしキュウリを買った。


「いっただっきまーす」


 早速、アンズは割りばしが刺さっているキュウリにガブリつこうとした瞬間、視界が大きくぶれた。アンズを後ろからぶつかった人間が視界に移るが、それよりもぶつかった拍子で落ちていくキュウリに目が行った。

 ボトッと地下鉄の床に落ちていったキュウリ。アンズの視点から見ているのでこいつの表情は分からないが、絶対に絶望的な表情をしている。

 パッとアンズは顔をあげて、ぶつかった奴にロックオンして走り出した。


「テメー! よくも私のキュウリをおおおおお!」


 この叫びでぶつかった相手はアンズに気が付いた。ナズナと一緒のネイビー色の髪をした子は一瞬、振り向いて改札を飛び越えた。

 アンズは「コラ、待て!」と言ってぶつかった相手と同様、改札を飛び越えて駅員さんに怒鳴られる。だがそれで止まるアンズではない。

 ぶつかった相手を追ってホームへと続く階段の手すりを登って、滑るように降りていく。いや、どんな降り方だよ。

 ホームには武装機体兵や普通の大人、そして運ぶ荷物などがこれから乗る地下鉄を待っていた。そしてネイビーの髪の子は物陰に隠れていた。


「見つけた!」


 アンズの声でネイビーの髪の子はギョッとした顔になり、ホームを飛び出して線路に降り立つ。おいおい! マジかよ!

 そして案の定、アンズも線路へと降りた。バカバカ! 何やってんだよ! お前!

 当たり前だが駅員、普通の大人や他の武装機体兵は「何してんだよ!」「上がってこい! 馬鹿!」と言っている。

 その時、地下鉄が到着するチャイムが鳴り響いた。


『おい! アンズ! 地下鉄が来るぞ!』


 だが幽かな振動音もチャイムもアンズもネイビーの髪の子も聞こえないようだ。

 ネイビーの髪の子が地下鉄を背に走り出して、アンズも走り出す。俺はそれどころじゃない。地下鉄にひかれるぞ! 

 アンズの背後が電車のライトで明るくなってきた。二人に気が付いて電車はクラクションと急ブレーキの軋轢音を響かせた。


「おらあ! 待て!」


 地下鉄はアンズとネイビーの髪の子を引かずに、ホームへ到着した。

 だが二人は気にせずに次の駅まで走って行った。





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