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脳しか無い俺はレモンクラッシュな現実を見る 【第二話 アウラな青春 完結】  作者: 恵京玖
【第一話】戦争が終わったのに電脳疎開している少女を現実に戻せ!
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コナツの体を捜索②


 ようやく二人は施設に侵入できた。


「アンズは何もないって言っていたけど……」

「あの子は適当に回って見ただけ。もっとじっくり見ないと」

『……それで見えるの?』

「大丈夫です!」


 頼もしい感じで言っているけど、ナズナはフキノの腰に手を回してへっぴり腰で歩いている。フキノは歩きづらそうだが、今のところ文句は言っていない。

 それにしてもナズナって幽霊とか苦手なんだ。いつもはお姉さんぶっているナズナがビビっているのが意外というか、ちょっと面白い。


「ユウゴさん、ちょっと面白がってません?」

『いや、そんなことないよ』


 なんで気づいたんだろう。

 そんな事を話しながら、施設を歩いた。


「休憩所って言うより、宿泊施設ですね。ニ、三階はベッドがあって、一階はお風呂とかキッチンとかがありましたけど、家具とか電化製品は無いですね」

「……ナズナ、抱きついたままなのによく見ているな。時折、よくわからない悲鳴出していたのに」


 三階から一階、階段の上り下りさえもナズナはフキノの腰に抱きついたままだった。しかもドアを開ける時や風で木が揺れる影にいちいち怯えて悲鳴を上げていた。

 フキノの視覚と聴覚をリンクさせているので、ナズナの悲鳴はかなり響いた。


「そんなに怖かったら、外で待っていればよかったのに」

「その方が一番、嫌!」


 恐怖をいまいちわかっていないフキノに、ナズナはむくれて言う。仲がいい事で。イチャイチャするなとか羨ましいとか嫉妬とかを通り越して、どうでもよくなってくる。

 さてこの施設、見た感じ、コナツさんがいるようには見えない。やっぱりここじゃないのか。

 そんな事を考えているとフキノは壁の方を見て口を開いた。


「ナズナ、ここの壁が変。継ぎ目がある」


フキノは壁を調べると、継ぎ目はカバーになっていてすぐに開けた。


「カードキー用の機器が隠されている!」


 壁に隠されたカードキーの機器を見つけて、ようやくナズナはフキノの腰から離れて電子端末機とケーブルを出した。


『よし! 任せとけ!』


 ようやくだぜ! とばかりにトウマが声高らかに叫んだ。


 トウマのクラッキングでカードキーの機器を壊して、扉を開けると白いカプセル型の機械が見えた。お、見たことがある形状である。しかも、ここ最近。


「入りますね」


 ナズナが恐る恐る言いながら、再びフキノの腰に腕をまわして歩き出す。そして視界に半透明になっている部分があり、立ち止まって覗き込むとナズナは小さな悲鳴を上げた。


「え? 人が入っているぞ、ユウゴ」

「この人が、コナツ、さん?」


 戸惑うナズナとフキノに俺は『多分』と答えた。

 半透明の中にはナズナよりも小さくて痩せた人が入っていたヘルメットとゴーグルをつけて顔は見えないが髪は長い。


「本当にいたんだ、コナツさん」

「早く助けないと」

『待った! まずはコナツさんの意識を電脳疎開空間に戻してログアウトしないといけない。そのまま起こすと脳に大きなダメージを食らって、障害が残ってしまう』


 フキノが「じゃあ、早く、意識を戻させろ!」と急かす。

 言われなくてもやるさと思いながら、ナズナにお願いしてカプセルと電子端末を繋げる。

 ここでナズナの様子がおかしいと気が付いた。おっかなびっくりでここに来たのに、今は考え込むような感じで電子端末を操作している。

 なんだか不穏な気持ちになっていると、「フキノ! ナズナ!」とアンズの声が聞こえてきた。フキノは近くの窓から顔を出して「どうした!」と聞いた。


「ロボットが動いているぞ!」


 フキノの目には武装機体兵が操作できるロボットがアンズを追いかけていた。ガションガションと油が足りない感じで音は出ていて、間抜けな顔をしているがさすがに見下ろされると迫力はある。

 ロボットがアンズを叩きつけようとする腕が地面に振り落とされると、ドドンっと振動があった。アンズは楽し気に避けて、ロボットを煽る仕草さえしている。


 アンズ! お前、ヤベエ奴を連れてきたな!


とんでもない状況なのに、フキノは「うわあ」と歓喜の声を上げる。


「すげー!」


 フキノ、なんで楽しそう声を出すんだよ。

 え? 俺は一体どうしたらいいんだ? と思っているとナズナは「さあ、ユウゴさん」と言った。なんだかちょっと楽し気である。


「コナツさんを電脳疎開に連れて行ってください」

『え? お前らはどうするんだ?』

「もちろん、戦います」


 量産機のようなロボットを前に当たり前のように言うナズナ。すでにフキノは窓から駆け出してロボットに向かっている。


「作業用ロボットとも言いますが、一応武装機体兵を制圧できるくらいの能力はあります。暴走した武装機体兵を止めるためとか」

『だったら、なおさらヤバいじゃん!』

「でもユウゴさんは戦えないじゃないですか」


 スパンッと言われて何にも言い返せない。俺は電脳空間にしか行動出来ないんだ。ちょっと心が痛くなっているとナズナは「ごめんなさい」と軽く笑う。


「ただ、映画みたいにこう言いたいんです。ここは私達に任せて行ってください」


 そう言って、ナズナは一日中つなげていた俺との通話を切った。





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