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脳しか無い俺はレモンクラッシュな現実を見る 【第二話 アウラな青春 完結】  作者: 恵京玖
【第一話】戦争が終わったのに電脳疎開している少女を現実に戻せ!
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コナツの体を捜索①


 夕日が山を赤く染め上げる頃、フキノがドローンを動かして施設とその周辺を見る。それをナズナと俺はカメラで見ていた。四つのドローンを一気に回してもらっているので四分割の映像で見る。


 登山道を少し歩いた所で分かれ道があり、【関係者以外立ち入り禁止】と言う鉄線を乗り越えて施設の周りを見る。夕方なのでちょっと暗いが鳥の声が聞こえて、目ざといフキノが「あ、リスがいた!」と見つけたりと自然豊かだ。ハイキングにピッタリな場所と思う。

 まあ、陰キャの俺は現実に戻っても行く気が無いな。山に登って、何か得るわけないし。

 施設の周りを見るとあまり使用している気配が無い。保養所って感じだ。そしてフキノが三階の窓の鍵が開いていることに気が付いて、そこから入ることに決める。


「うーん。見張りの人がいないな、監視カメラとかもない。と言うか、人気が無い」

「本当に工事のお兄さんが言っていた施設なのかな? ここ」

「あと、ここから北の場所に……チネツ? ……発電建設所がある。でもそこはもうずっと使われていないみたい」

『地熱発電ねえ。まあ、ここは火山だから作ろうと思ったのかな』

「あ、見て! ロボットがある!」


 フキノは声を弾ませてカメラを寄せる。カメラ映像だから分からないが全長三メートルの玩具のブリキのロボットのような人型のロボットがあった。特殊な金属で作られているようで、全体的に角張った感じで四角い顔には間抜けな目と鼻と口がついていた。


「久しぶりに見た! あのロボット!」

『なんか、アニメに出てきそうな量産機型ロボットだな。何だ、あれ?』

「作業用ロボットと言う名の、武装機体兵イメージアップロボットです」


 ナズナのよくわからない説明に『どういう事?』と聞いた。


「初め武装機体兵が働くようになったけど、イメージが悪かったんです。今もですけど。そこでとある工場が武装機体兵の能力を使って動かせるロボットを作ったんですよ。割とロボットが動くって面白いので結構、好評だったんですよ。でも壊れやすいから、見なくなりましたね」

「うわー、すげー」


 フキノがちょっと興奮気味にロボットの周りを飛び回る。それをナズナはつまらなそうに見て「別の所を見てよ」と不満げに見る。男はロマンを感じるが女はくだらない物と思う、見本を見ているような気がした。

 楽しそうにロボットを眺めてみたフキノだったが突然「あれ?」と言って、ロボットの映像から施設周辺の方のドローンのカメラを動かす。


「どうしたの? フキノ?」

「んー、アンズがいた気がする。……あ、いた!」

『あ、いた! じゃねえよ!』


 ドローンのカメラに気が付いたアンズは満面の笑みを浮かべて手を振った。そして施設を調べていた時に見つけた、鍵がかかっていない三階の窓に向かってサルのごとく登って入っていった。いや、おい、入っちゃったよ!


『あああ! あいつ! 周囲を確認してから行こうって言ったのに!』

「しょうがない。そろそろ、行こうか」

「そうね。フキノ」


 俺の絶叫をよそにフキノの操縦でドローンを回収して車にしまって、すぐさまアンズの入った施設に向かった。

 



 ナズナとフキノはコナツがいるとされる施設に着いた。窓から建物の中を見るとここの山の写真などが飾ってあり、また自動販売機もあった。三階建てと随分と大きな休憩所だが、使われていないようだ。コナツさんがいる気配はない。

 フキノはさっさと入りたそうだったが、ナズナはそれを止めて施設の周りを細かく確認する。ちなみに俺はナズナの視覚と聴覚をリンクさせている。


「でも使っていないにしては、電気の使用が激しいですね」


 端末機で調べて、施設の電気使用を確認したナズナ。フキノは「やっぱり秘密基地になっているのか!」と目を輝かせて力強く言う。そうだった。こいつは秘密組織にコナツさんが囚われているって思っているんだっけ。


「でもちょっと怪しいと言えば……え?」


 ナズナは何かに気が付いて立ち止まる。施設の西にある窓で多目的室のような部屋だった。灯りはなく部屋はドアがなぜか開いていると思った瞬間だった。



 バン!



「ばああああ!」



 髪の長い女がいきなり窓を叩いて現れた。それをまともに見たナズナと俺は山頂の人間にも聞こえるくらいの絶叫を発した。


「あはははは。ナズナ、ナイスリアクション!」


 そう言いながら、脅かしてきたアンズは髪をかき上げて窓を開けた。ナズナは反論もしないで走ってフキノに抱きついた。怖かったからか恥ずかしかったから、ナズナはフキノの胸に顔を埋めている。


「やめろよ、アンズ。ナズナは幽霊とか苦手なんだから」

「だから面白いんだろ」


 フキノの方に視点と聴覚をリンクさせて、二人の会話を聞いた。


「ここ、マジで何にもなかったぞ。つまんない施設!」

「でも電気は結構使っているみたいだぞ」


 抱きついているナズナの頭を撫でながらフキノは言うと、アンズは「そんなこと知らねえよ」とスタスタとどこかに行こうとしていた。


「どこ行くんだ? アンズ」

「あの施設の屋根に登った時、別の施設を見つけたんだ。そっち行ってみるよ」

「地熱発電の建設の所?」

「さあ、知らねえ。とにかくコナツの体を最初に見つけるのは私だ!」


 なぜか高笑いしながらアンズは走り去っていった。フキノは「別に競争してないけど」と言ったが、アンズには聞こえていないだろう。

 アンズが走り去るのを見た後、フキノが「ナズナ、大丈夫?」と聞いた。ナズナは埋めながら頷いた。


「アンズが開けた窓から入ろう」

「うん」

「……ナズナ」

「うん?」

「ずっと抱きついていると、入れない」


 フキノの軽くナズナを離そうとするが、更にギュッと抱きついたままだった。





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