表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳しか無い俺はレモンクラッシュな現実を見る 【第二話 アウラな青春 完結】  作者: 恵京玖
【第一話】戦争が終わったのに電脳疎開している少女を現実に戻せ!
29/106

武装機体兵たちと一緒にトキオ・ランドまで ①


 トキオ・ランドに行く当日。俺は三人が乗るワゴン車のドライブレコーダーの映像見ていた。


『よく借りられたな、この車』

「あ、無断です。言うと絶対にお金を取るんで。でも大丈夫ですよ。今日はリュウドウさん、知り合いの人と麻雀で遊ぶみたいなので明日までバレないです!」


 いけしゃあしゃあと助手席に座るナズナは言った。フキノはアニメソングのような曲を鼻歌しながら運転し、アンズはやっぱり後部座席で爆睡していた。


『あのさ、アンズってトキオ・ランドに行く目的ってわかっている?』

「あー、分かってないんじゃないですか。車に乗る前、ずっと何を食べるか悩んでいた様子ですし」


 だろうな。でも起こして説明するのも面倒くさい。

 会話を聞いていたフキノは得意げに「俺はわかっているぜ」と言った。


「トキオ・ランドの地下にある悪の組織の秘密基地で眠っているコナツさんを探すんだろ」

『目的はあっているけど、そんな場所に囚われていないぞ。漫画の読みすぎ』


 そんな会話をしていると、高速道路の看板が見えたので俺が『おい、高速道路が使うな』と言った。

 フキノは「えー、何で?」と尋ねる。


「普通の道だと整備されていない所もあって、遠回りになっちゃうだろ」


 フキノ、お前が不思議そうに言うな! 誰のせいでこうなったんだよ!


『お前ら高速道路の料金所をぶっちぎって料金踏み倒した上に、追いかけた料金所の車を事故らせただろ!』

「ああ、あれか。みんな忘れているよ。俺もユウゴの話で思い出したくらいだし」

『お前が忘れても絶対に料金所の奴らは覚えているぞ!』

「確かにそうね。遠回りになっちゃうけど、そっちから行った方がいいね」


 ナズナの言葉にフキノはちょっと不満げだったが素直に普通の道へ車を走らせた。




 普通の国道を走るが、結構整備されていない道が長く走りづらそうだった。ガタガタと車体が揺れて、一度アンズが起きた。


「おい! それは私のステーキだぞ!」


 そんな寝言を言い放ち、ナズナに「まだ着いていないよ」と言うと「ステーキ返せ」と言って再び、寝た。夢の中でステーキを取り返しているのだろう。


『アンズって、よくガタガタ道でも寝ていられるな』

「と言うか、よく寝る子だよな。アンズ」

「なんか乗り物に乗ると眠くなるらしいです」

『でも銃撃戦になったりしても寝ているってどうなんだよ』

「ユウゴが繊細なだけなんじゃないか?」


 いたずらっぽくフキノが言い、ナズナはちょっと吹き出した。くっそう! なんも言えねえ!

 そんな会話をしながらアンズを見ると、「ステーキ美味しい」と幸せそうな寝顔で言った。どうやらステーキは取り戻せたようだ。

 はあ、こいつの図太さを見習いたいよ。

 



 ガタガタな国道はすぐに終わった。するとすぐにショッピングモールの駐車場にはキャンピングカーのようなトラックや窓がついたコンテナがいくつか立ち並ぶのが見えた。

 俺が『なんだ、あそこ?』と言うとナズナはすぐに答えた。


「あそこはショッピングモール住宅街です。駐車場にあるキャンピングカーなどが住む場所で、ショッピングモール内はお店や学校とかもあるらしいです」

『あの乱痴気騒ぎのショッピングモールみたいじゃないのか』

「全く違いますね。ここは農業連合 ユタカが雇っている人達が住んでいるんです。ショッピングモールの中にもハウス栽培みたいなことをしているみたいですね。あと秋になると収穫祭があるんです」


 ショッピングモールの中庭にも畑もあったり、グリーンカーテンが壁いっぱいに覆われていて、麻薬と酒のショッピングモールとは違っていた。

 ショッピングモールを通り過ぎて、しばらくすると田んぼが永遠と広がっていた。また田んぼをまたぐように、太陽光と風力発電の塔が見えた。トキオの物とは比べ物にならないくらい巨大だった。

 また畑もあり武装機体兵達がせっせと働いていた。


『電脳空間があるのに未だに農作業って百年前から変わらないんだな』

「気候が一定しない国ですからね。去年は酷暑でしたけど、今年はまだマシです。でも来年は冷夏かもしれないなどと予想が出来ない場所です。こんな感じだから天気予報はAIですが結局、人間の判断と手でやる人が多いです。それと田んぼがちゃんと長方形になっていない所とか棚田みたいな所もあるのでAIで動く機械が入りにくいんですよ」

「後は思いっきり食料を輸入に頼って、こういう機械とか作ってこなかったんだって。イツヤが言っていた」

「戦前、この国の主な産業は電脳空間関連ですからね。他は超精密機械とか」


 俺は『なるほどね』と言おうとする前に、奇妙なオレンジのウリがなっている棚を見つけた。ゴーヤのようなイボがたくさんあるが、普通は緑色の時に収穫するはずだ。


『オレンジのゴーヤっぽい奴、何だ? 普通のゴーヤだったら完熟すると実が割れるけど』

「あれは甘ゴーヤです。品種改良を繰り返して完熟しても実が割れなくて食べられる、ほんのり甘いゴーヤです」

「苦いゴーヤが嫌いだけど、あれは甘くておいしいぞ。でもリュウドウはメロンの方が甘いって言っていたけど」


 こいつら、いろいろ知っているな。それ以降も道行く先で知らない物が多かったので、ナズナとフキノがのんびりと解説してくれた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ