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脳しか無い俺はレモンクラッシュな現実を見る 【第二話 アウラな青春 完結】  作者: 恵京玖
【第一話】戦争が終わったのに電脳疎開している少女を現実に戻せ!
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体験版 電脳疎開 保護者用


 ナズナが無事に人生微糖に着き、無人レジで俺はバイトをする。それが終わった後、トウマと二人で再び、体験版 電脳疎開に入った。


『ナズナの指摘は鋭かったな、保護者用が存在するんじゃないかって』


 どうでもいいような感じで『確かにそうだな』と言ったので、俺はわざと逆なでするような事を言う。


『ぬいぐるみ風のリスのアバターになったコナツさんに嫉妬しているだろ?』

『なんで?』

『だってナズナがあんなにかわいいって言っていたから』

『ふん、あんなの僕だって作れるさ!』


 そう言うと一瞬にして、コナツのぬいぐるみ風のリスのアバターに変化したトウマ。本当にこいつ、アバター作りがうまいなあ。アバターの作り方と言う動画サイトを見たことがあるが、それよりも速いし何より作り方が普通とは違う気がする。


『コナツのアリスなどのアバターはテンプレ制作だからね。唯一、このリスは立体言語だけど』

『トウマは立体言語と多重言語は出来るの?』

『もちろん! 液体猫やレモンクラッシュのようなアバターやトキオ・シティやシープシティなどの情報が多く繊細かつ個性的な電脳空間を作るにはこの言語が必要なんだよ』


 そう言って再びトウマは液体猫のアバターになった。


『でも立体言語をすぐに理解できる人間って珍しいんだ。僕はすぐに理解したけど』


 ナルシスト・トウマとそんな会話をしながら、電脳疎開の空間に入った。案内のアナウンスが流れる前に、メニュー画面を見る。


 その時、再び百合の花が出てきた。


 そして相変わらず黒いウィンドウが出てきて【進展あったようだね】とメッセージを綴った。


『まあね。雇い主の武装機体兵の子がナイスな指摘をしてくれたんだ』

『というか、ハルキって電脳疎開の制作に関わっていなかったの?』


 社長なのに呼び捨てする慇懃無礼なトウマに俺は『呼び捨てやめろ』と言ったが、ハルキは聞こえていないようだ。すぐに俺はトウマの質問を丁寧に聞いた。


【電脳疎開は父親と旧電脳空間研究所、今のアクアリウム・クオリアが管轄していた。今はベルがやっている状況だな。電脳疎開の制作には僕は関わっていない】


 なるほどね……。


【僕はまた仕事に戻る】


 そうメッセージを綴ると百合と黒いウィンドウは消えていった。


『お、見っけ!』


 確かに電脳疎開の入り口で保護者用があった。真っ白い空間でいろんなトウマはプログラムを起動したり、変な動きをしたりして見つけた。俺にはどういう事をしているのか全く分からなかったけど、

タッチすると初期設定に画面に映った。

 ラッキー、適当に打って入ろう! と思ったが、名前や生年月日、住所などはもちろん職業や最終学歴、そして子育てで気を付けている事は? 将来の子供の姿などのアンケートがあり、面倒くさかった。

 名前と住所など適当に埋めて、職業は弁護士で最終学歴は国立大学を選び、ようやく子育てのアンケートの欄にたどり着いた。


『ねえ、トウマ。子育てしたことある?』

『思い出せないから、分からない。でも俺達、こんな感じだから子供どころか彼女さえいないと思うぜ』


 記憶はないのにお互い妻子も彼女はいないという確信だけはある。悲しいけれど。


『しょうがない。子育てのサイトを見て参考にしてアンケートを埋めるか』

『はあ? そんな面倒な事しなくてもいいんじゃない?』


 どういう事と思っていると、トウマは俺の腕に巻き付いて【あ】のキーボードを押し続けた。


『俺達の子育て論を参考にする奴なんていないんだから、適当に埋めようぜ』


 トウマの言う通りだが、これで大丈夫なのか? と思ったが四百字の【あ】で埋め尽くされたアンケートを提出すると無事に受理され、保護者用が空間に変化した。



 保護者用の空間は上品なソファのみしかなかった。そのソファに座ると同時に頭上から子供用の説明する人と同じ女性の声が聞こえた。


【このたびはお子様を電脳疎開へご参加いただき、ありがとうございます。それでは概要をご説明させていただきます】


 すっと目の前にあの電脳疎開に入る薬型のカプセルがゆっくりと回りながら現れた。


【戦争と言うのは子供たちの心身共に悪影響を及ぼします。今後の明るい未来に影を落とすでしょう。そうならないようにこのカプセルに入り、電脳疎開空間に行き、戦禍から離れることができます。そして空間内では質の高い授業を受けたり、情緒を豊かにするカリキュラムも受けられ、平和的な日常を送ることができます。また敵からのハッキングなど出来ないように外部からの通信は遮断しています。あとカプセル内では微弱な電流などを流すことで、お子様の体力低下を予防します】


 あれ? これは知っている内容しか喋らない可能性かあるな……。

 案の定、子供用の説明に毛が生えたような内容だった。聞いていて飽きてきて、早送り機能はあるのか調べたり、別の事をやろうかなと思っているとようやく【何か、質問はございますか?】と聞いてきた。

 ふとトウマを見るとすでに眠っていた。お気楽な奴と思いつつ、俺は質問をする。


『このカプセルの中には何年間いられるのか?』

【政府の予想ではこの戦争は、一か月から一年で終えると発表がありました。しかし様々な可能性を考えて、五年は入ることが可能でございます】


 この当時は長くて一年で終わると思っていたんだよな。結果は三年続いて、ほぼ壊滅状態。だが実を言うと戦勝国でもあったりする。五年経って復興もままならないけどな! ってリュウドウは笑っていたけど。

 さて、普通にこのカプセルの場所は? と聞くのも芸がない。機密情報らしいから保護者にだって疎開させるカプセルの場所は教えてくれないだろう。


『食糧や精神安定剤などの補充は?』

【五年分カプセル内に入っております】

『五年以上、戦争が長引く場合は?』

【その場合はメンテナンスとして五年分の補充をして、再び電脳疎開ワールドの中で過ごしてもらいます】


 へえ……。そうなんだ。俺は心の中で悪い笑みを浮かべる。


『その食料と精神安定剤の具体的な名前とメーカーは?』




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