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脳しか無い俺はレモンクラッシュな現実を見る 【第二話 アウラな青春 完結】  作者: 恵京玖
【第一話】戦争が終わったのに電脳疎開している少女を現実に戻せ!
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途方もない検索を


 【ネットは壮大だ】と言う言葉がある。

 まさにそれを実感するくらい、俺は宇宙のように壮大な電脳空間の中からツチミと言う老人の家族写真を探し出していた。

 膨大な量の情報の中からようやくツチミの両親が成長記録を乗せていたサイトを発見したが、そのサイトもまたバグりにバグっていた。ツチミの両親が掲載したとされる画像の一覧は、なぜか成長記録どころか風景画や漫画の一ページだったり、無料イラストや大昔の歌の動画だったり、と全く関係のない物がいっぱいだった。

 この画像一覧から俺は家族写真があるものを見つけて、ナズナが事前に作ったツチミの子供時代のイメージと照合して探している。ちなみにナズナの視覚と聴覚のリンクは外した。

 だがナズナが動かしている矢印が止まっている。


『おい、ナズナ? 探しているか?』

「……あ、う、はい! 探してますよ」

『本当は?』

「……昔のかわいいキャラの動画を見てました」


 ちゃんと探せよ!

 でも確かに画像も動画も誘惑がいっぱいで、ナズナを強く責められないなと思う。

 そんな事を考えながら俺は画像を探していると、ある画像を目にして俺は『わあ』と思わず声を上げた。


「え? 見つけたんですか?」


 俺が見ている画像をナズナがパッと取って見た。一秒ほど絶句したのち、画像はポイッと消した。


『あああああああ!』

「もう! アダルトのイラスト画像を見てクリスマスプレゼントを見つけた子供みたいな反応をしないでください!」

『問答無用に捨てるなよ! もう見つからないかもしれないじゃないか!』


 ナズナは鼻で笑って「見つかりますよ。地下鉄の駅で落としたお財布が見つかるくらいには」と言った。それは見つからないに等しいのでは。

 その時、画像がどんどんと消えているのに、気が付いた。


「あ! まずい! 規制が始まったんだ!」

『規制って?』

「AIが不適切・不愉快、暴力的と判断した動画やサイトや画像が削除されてしまうんです!」

『でもボクシングの試合動画とかは残っているけど』

「このAIもバグっているんです! このままだとなぜか家族写真まで規制されて削除されますよ!」

『嘘だろ!』


 そう言っている間にガンガン消えてしまった。全部一通り画像を見たが三分の一くらい削除されてしまった気がする。それでも大量にあるけど。

 ナズナは「さ、探しましょう」とうんざりしたような声で言った。




 どのくらいの時間がたったのだろう。いたずらに時間が経っていて、全然見つからない。

 先ほどの検索で全部探したが見つからなかった。なのでもう一度検索をして探す。同じ検索ワードでもなぜか出るものが違ったり量が増えたりすることもある。本当になんでそうなるんだろう?

 ちなみに俺はそろそろこの家族写真を探すのに飽きている。適当な画像を選んで渡せばいいんじゃねえかって思う。あー、でも幼少の頃のツチミをイメージ画像と耳や目など個人特定できる部位を記憶したナズナがガンガンに照合している。真面目なナズナは嫌がるだろうな。

 その時、ナズナが興奮気味に「ユウゴさん!」と呼んだ。


「照合一致九十九%!」

『なんだって!』


 ナズナが出した写真を見る。三歳くらいのツチミとにっこり微笑む両親が神社をバックに撮られている。恐らく七五三の記念写真だろう。


『神社も昔、ツチミさんが住んでいた場所と近いし、画像の日付はツチミさんが三歳児の時ですね。一生変らない部位の形の照合結果も合っていますし、本人でしょう』


 もし違っていても老人だから忘れているから、しらばっくれる事が出来るだろ。と言うのを我慢した。




 ここの旧ネット検索ルームはたまに貴重な資料が検索で出てくることがある。それを売り買いすることもあるため【電脳鉱山】とも言われている。


「ちょっとした小遣い稼ぎにもなるんです」


 そう言ってナズナはツチミの写真をプリントアウトするため席に立った。プリンターは別の場所にあるようだ。

 俺は電脳空間の検索で【電脳鉱山】【旧ネット検索ルーム】を調べると、このルームのアクセスコードと一緒に【高値で探している動画・画像】などの一覧や無造作に集めて数百円から取引してくれるものもあった。また【高値で売れる動画や画像の探し方】などもあって、人気のようだ。

 それに目を引くサムネの動画や漫画などもあって、暇つぶしにはいいかもしれない。かつてはネットで暇をつぶす事を【ネットサーフィン】と言うらしいが、壮大な情報量のせいで【宇宙遊泳】になっているけど。

 今度、トウマと一緒に来ようかなって思っていると、ナズナが「ユウゴさん。リュウドウさんの空間を見ますね」と言った。


『あ、どうぞ……じゃない! ちょっと、待った!』


 まずいぞ! もしかしたらコナツがいるかもしれない! だが俺の言葉を聞かずにナズナはリュウドウの空間を展開した。

 急いで空間に入って見ると、案の定コナツはトランクから出ていた。


「この子、可愛い!」


 そう言いながらナズナはコナツの頭に矢印を付けてクリック連打していた。

 一方のコナツは呆然とマウスを眺めているだけだった。トウマも突然現れた矢印に驚くが俺が来ると何とかしろと言う目で見ていた。


「ユウゴさんってキモオタみたいな趣味があったんですね」

『ねえよ! 何、しれっと悪口言ってんだよ!』

「でもこんなかわいい女の子の人形を部屋に置いていて、更にトウマさんをチェシャ猫にしてバリバリ楽しんでんじゃないですか」

『それが気持ち悪いオタクの趣味って思うなよ!』

『あ、あのう……。どちら様ですか?』


 おずおずとコナツが喋るとナズナが「え? 喋っている! これ人形じゃなくてアバターって事?」とドン引きした声で言った。


「ユウゴさんは女の子を連れ込んだんですね! こんなペットボトルのアバターでよくやりますね!」

『違う! と言うか女の子のアバター付けているから、女性って思うんじゃねえ! この世には、【ネカマ】って言う女のフリする罪深い男がいるんだよ!』


 いろんな出来事が立て続けに起こって意味のよく分からない言い訳を口走っている。

 ふと、トウマを見ると面白そうな顔で見ていた。




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