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脳しか無い俺はレモンクラッシュな現実を見る 【第二話 アウラな青春 完結】  作者: 恵京玖
【第一話】戦争が終わったのに電脳疎開している少女を現実に戻せ!
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トキオ・シティから逃げろ!


『バグ処理を始めます』


 花クラゲはそう宣言して、俺達が立っている小道がどんどん狭まっていく。おい! 俺達をバグだと思っているのか!

 コナツを抱っこして狭まる道を走った。


『ユウゴ、壁を走れ!』


 突然、トウマが叫んだ。


『出来るわけないだろ!』

『このアバターは壁を地面みたいに走ることが出来る! このままだと俺達、潰れるぞ!』

『ああ、もう分かった!』


 本当に大丈夫かと思ったが、トウマの言う通り壁を伝って走る。確かに落ちず、壁に挟まれずに屋上まで走り切った。

 だがユリの花クラゲが俺達の方に向かって、花弁を広げている。まさか、捕まえようとしているのか?


『ユウゴ! 別の空間に移動させる!』


 花弁が俺達を捕まえようとする中、トウマの操作でトキオ・シティから出て行った。



 竜と巨大クジラが激しい戦いをする夜空の下、グレイ系の宇宙人たちが愉快に神輿を担ぎ行進し、虚無顔のサメの胴体に肌色の手足を付けてブレイクダンスをして、真っ赤な炎のフードと被ったマッチ売りの少女が炎のパフォーマンスをしている。


 相変わらずカオスな夢のような空間、シープシティ。箱形のレトロなテレビがいくつも積み重なったテレビジョンタワーの通りはパフォーマンスをして通る人の足を止める。

 そのテレビジョンタワーのテレビの画面には現実世界の中継映像やゲーム実況、電脳空間で開かれているライブ中継などなどの映像が流れている。


『この空間はいろんな奴ら大勢いるから、逃げ込むにはちょうどいい。それに偽のレモンクラッシュのアバターも大量にいるし』


 路上パフォーマンスの中でレモンクラッシュをパクったアバター達を横目にトウマは言う。


『更に俺達は、はちみつレモンのペットボトルアバターだしね』


 シープシティに入った瞬間、俺はレモンクラッシュからはちみつレモンのペットボトルのアバターに変えた。ドヤ顔のトウマは液体猫アバターになり、ペットボトルの中にコナツさんと一緒に入っている。


『うわあ! すごいですね、トウマさんのアバター。モチモチしてスライムみたいに柔らかい。肌触りも気持ちいい』

『そうだろう! すごいだろう!』


 トウマは得意になっている。褒めてくれる人間が俺くらいしかいないから、嬉しくて仕方がないのだろう。ただコナツには聞こえていないようだけど。

 コナツもトウマもペットボトルのラベルに隠れているので見つからないだろう。


『わあ、シープシティは変わらないな』

『行ったことがあるの?』

『はい、戦前ですけど』


 ちょっと恥ずかし気に言うコナツ。


『トキオ・シティが出来る前に疎開しちゃったから、行けなかった。もっとじっくり見たかったな。お兄さんも完成したら一番に見せてあげるって言っていたし』

『悪いね。でもあのままだとバグ処理されちゃうから』

『ごめんなさい。責めているわけじゃないんです』


 申し訳なさそうにコナツは謝るので、俺も『ごめん。棘がある言い方だったね』と返した。

 シープシティはずっと夜の空間、永遠に朝が来ない夢の中なのだ。そして大通りを歩いているとダンスや演奏、パフォーマンスしているアバターをよく見かける。ここでは戦前にやっていた路上パフォーマンスのような事を電脳空間でやっているらしい。だが戦後はそんな景気のいい事はもうできないし、入れない人間は多すぎる。

 だからこの通りにいるパフォーマンスをしているアバターはほとんどAIだ。シープシティって閑散としていると本当に寂しい空間になる。だからこうしてAIのアバターをいっぱい出して混雑しているように見せているのだ

 通りでブレイクダンスをしているサメ人間のアバターもそして黄色い声や歓声を上げているアバターたちが全部AIって言うのも切ないなと思った。


 トウマの解説を思い出していると、本人から『ああ、あっちの路地に入って』と言われ、その通りに歩く。

 コナツに詳しい話を聞きたいので、アバターがいないサイバーパンクの建物の屋上を目指して歩いて行った。


 着いた屋上は大通りを大体見下ろせるくらいの高さだった。まるでおもちゃをひっくり返したようにアバター達が見える。でも他の建物はほとんど高いので見下ろされている圧迫感もあった。様々な建物から発せられるイルミネーションが照らしているので暗くはない。

 そんな場所でコナツとトウマを出してあげた。

いつの間にかトウマは紫と薄紫の縞々の猫に変っていた。


 するとトウマの頭にシュポンっと百合の花が咲いた。


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