到着
戦前の駅の中には様々なモノがあった。土産屋はもちろんスーパーや飲食店、ホテルなどもあり、更には病院もあったそうだ。ちょっとした街である。
だが今はただの真っ暗な廃墟であり、一角は闇医者の住処になっている。
アンズやコナ、ラパンは消して、目標へと向かう。一方、フキノとナズナは俺が調べて手に入れた駅内部を見て別の道から目標へと進む。リュカとクラウは俺達がいる場所の見張りをしている。モヤシ君はドラム缶ロボットに座ってぼんやりしている。オオツ曰く、モヤシ君は荷物持ちくらいしか役目が無いそうだ。キュウリの子も近くにいる。
「あ、あった」
小声でコナは闇医者が付けたセンサーを見つけて視覚から小さな箱に入れる。このセンサーは人が通ると反応する代物だ。だが熱で反応するので無機質な箱に詰めればセンサーは反応せず、闇医者の仲間には分からない。
「ハンゾウさん。闇医者の電子端末や機器を全部ハックしました」
「さすが、コセンスイ所属。盗聴とかも出来るかい?」
「もちろん。カメラも起動していますよ」
そう言うとハンゾウの電子端末に闇医者のクリニック内部が映し出され、会話も聞こえる。
『どうする? このまま……』
『警察には捕まらない。だから大丈夫さ』
『そうだけど……。お前の代わりに捕まった奴、多分元少年兵だろ? あいつに仲間がいたら』
『だから大丈夫だって。捕まってもシスマさんに任せれば……』
何やら今後の事を話しあっているようだ。
近くにはロッカーを蹴っ飛ばしていた奴もいるし、『おい、いつ機体持ちになれるんだよ!』とキレている奴もいる。どうやら次の患者のようだ。だがメンツを見ると闇医者本人であるシスマはいないようだ。
アンズとコナ、ナズナ達もクリニックに到着して、待機状態だ。
「……そろそろ突入するか」
ハンゾウはそう言うと、オオツに合図を送る。オオツがすぐさまキーボードを打つと、クリニックの照明が落ちた。
そしてなぜかアンズがご機嫌に「突入!」と勝手に命令を出した。
真っ暗になったクリニックに闇医者の仲間たちはパニックになった。そこからナズナ達が素早く突入する。武装機体兵は感覚が鋭いため、集中していれば暗い場所でも人の位置くらいは把握できる。
ガタガタと音が鳴り響いたが、すぐに静かになった。
「明かりをつけてくれ」
ハンゾウの言葉でオオツは明かりをつける。クリニックにいた闇医者の仲間の周りには武装機体兵がスタンガン銃を持っていた。なすすべもなく闇医者達は手を上げて、降伏のポーズをとっていた。
だがハンゾウが到着すると……。
「どけ!」
「きゃあ!」
一人の仲間がラパンを蹴っ飛ばした。
あ、こいつはロッカーをボコボコにしていた奴! そうだ、こいつは機体持ちだったんだ。リュカとクラウが「ラパン!」と言う叫び声が聞こえた。
セトがすぐさま確保しようとしたが、ロッカー野郎は蹴りを入れてけん制をする。そして部屋に入ってきたハンゾウに向かって叫ぶ。
「俺は機体持ちだ! お前なんか、何にもしない、何も出来ない、お前なんかより、すごい力を……、って、あれ?」
バシュッとハンゾウが持っていたスタンガン銃の銃声が鳴る。機体持ちのロッカー野郎は撃たれた瞬間、バタンと倒れた。
「え? なんで俺にスタンガン銃を撃つんだよ」
「はあ? なんでって、お前はもう化け物だからだよ。何、一般人面してんだよ」
ハンゾウの言葉に「意味わかんねえ」と言って、機体持ちの男は気絶する。
普通の人間を超える強い力を持って襲い掛かる者は駆逐対象だよと言わんばかりの目を全員していた。