服を脱がしても……いいかい?
夜、川田はキャバ嬢とホテル街を歩いていた。
足取りがおぼつかないのはズボンの中のモノが猛り、膨張しているからであったが
酒に酔った振りでごまかしつつ、でも取り繕う必要もないかぁとニヤつく。
そして彼女があっ、と声を上げ目を輝かせた比較的煌びやかなホテルに入った。
部屋に入ると二人はベッドになだれ込み、お互いの顔を見合い、笑った。
「ねぇ、あなたのを見せて……」
「あ、あぁ!」
鼻息荒く、声を上げた川田。もう興奮を抑えきれなかった。
「あぁ、いいわぁ……ねぇ、あれはあるの?」
「勿論さ……それにほら、そこにもあるよ」
「ホテルのは嫌よ……ちゃんとした高いのがいいわ」
「ああ、これでどうだい?」
「あぁ! いい、いいわぁ。じゃあ、はやくシて」
「ああ、いいとも、へへ……ほら、君も準備を」
「ええ、いいわ……じゃあ、アレ見せてぇ」
「ははは、ほら、こいつでいいかい?」
「ええ、いいわ。それじゃあ、ココにちょうだい……」
「ああ、いいとも……はぁはぁ、押すよ? 押すよ?」
「ああ! いい! いいわ! ああん!」
「はぁはぁ、最高の気分だぁ……じゃ、じゃあいよいよ呼ぶよ」
「ええ、はぁはぁ、いいわぁ」
「……よぉし、ふふふ、アプリで呼んだからねぇ、この辺りはホテル街だし
待機所があるはずだからすぐ来る、ああ! ほら、もう来た! ドアを開けるからねぇ!」
「失礼します。XY保険会社から来ました立会人の海島と申します。
本日は私がお二人の性行為を両者、同意の下であると――」
「あぁぁ! 海島さぁぁん! い、い、いいから、ほら、はやくこの同意書を見て!」
「そうよ! も、もうは、はやくぅ!」
「かしこまりました。ではまず、川田さん。性行為許可書をお持ちですね。
はい、確かに。では、同意書を拝見します……サイン確認。
身分証の確認はお済みですね? はい、運転免許証を確認と。
ハンコも押してますね。おや? 項目にチェックがついていませんね」
「あん! はぁ、ああん、うっかりしてたわぁ、はぁはぁ」
「もう、ははははぁ、頼むよ、ふぅふぅ」
「では私がチェックをつけるので口頭で確認の方をお願いします。まず、キス」
「あぅん! いい!」
「はい、OKと。ディープキス」
「うくぅ、いいわ!」
「服を脱がす」
「い、イイ! 構わないわ!」
「よぉし!」
「胸、及び尻など体に触れる」
「どういぃ! さいこぉ! い、い、いぃ!」
「ひ、ひ、ひ、はぁはぁはぁ」
「性器に触れる、これは女性側のですね」
「きょかよきょかぁぁぁぁん!」
「や、やったぁ、は、は、は、すご、すごぃ」
「では性器に触れる。男性側のですね」
「はぁはぁ、んー、どうしようかなぁ」
「ひ、ひ、ひ、そ、そんな、た、た、たのむよぉ」
「ふふふふ、じゃあ、OKで」
「は、は、はふぅ、あ、あ、あぁぁぁん!」
「はい。男性の性器を舌や唇で愛撫する」
「はぁはぁはぁ、んー、それはぁ……」
「え、え、え、し、して! しししてほしいで! す!」
「ふふふふしょうがないなぁ、いいわよ、いい!」
「や、やったぁぁぁぁ! ああああううううぅぅぅ!」
「挿入、これはコンドームあり」
「んーっとぉ……」
「は、は、は、はお、おねがい、おねがいしますぅ……」
「きょかしまぁ……すぅぅ!」
「ふぉ、ふぉおおおおう! う、うああああ!」
「では、コンドームなし」
「あ、それは不許可で」
「はい、では以上になります。後、項目外のプレイ内容の追加は申し出ていただき
都度、同意の確認。
また行為中、チェックした項目の変更がございましたら申し上げください。
男性側がそれに応じなければ即刻中止とさせていただきます。
また、女性側が後に今回の性行為を不当だと仰っても
当、立会人がこの性行為は両者、合意の上のものだと証言させていただきます。
では、どうぞ」
「は、は、はぁぁぁぁぁぁぁぁい」
「うっ、ううううううぅぅぅぅ!」
「はぁはぁ、ふぅ……じゃあ、服は自分で脱ぐわね」
「ああ、僕も」
「はい、じゃあ触って」
「はーい、こっちも頼むよ」
「あ、キス忘れてた」
「あ、そうだね。はい」
『性行為に至る、その過程が一番興奮する』
そんな話は昔からあったが性行為に同意書が必要となった現代
それは顕著なものとなった。
同意書の入念な確認。それにより性的興奮の波にズレが生じ
性行為の同意が完了した瞬間にそれはピークに達し両者、絶頂。
オーガズムに到達する。
その後は流れ作業のように同意した項目通りに事を運ぶ。
不満や疑問を持つことはない。そういう世の中なのだから。
「ふぅ……えっと君、良かったよ」
「はぁ……あなたも良かったわ」
「はい、終了ですね。お疲れさまでした……あ、お酒臭い。
両人とも飲酒しておられますね。
でしたら、今回の性行為は不当なものとさせていただきます。
後に女性側に訴えを起こされたとしても
男性側に対し当保険会社は一切の補償ができかねますのでご容赦を」
「え、嘘」
「よっし」