あなたのバロメッツ
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ぬいぐるみをつくるには、なにがひつよう?
糸でしょ。
綿でしょ。
えーと、それに布もほしいかな?
うん、やっぱり糸と綿と布がぬいぐるみにはかかせません。
これはぬいぐるみがうまれてくるまでのおはなしです。
まずは糸です。
糸はほそくてながくてつよくって、布と布をぬいあわせるためにたいせつです。
糸はおみせに売っていますね。
けれど、糸はどこからおみせにやってくるのでしょう?
例えばここにある糸は、綿の糸です。
まっしろふわふわとしたお空の雲みたいな綿を、糸車でねじりあわせて糸にします。
つぎに綿です。
ぬいぐるみの中に詰まっているふわふわもこもこの、あの綿です。
でも、綿ってなんでしょう?
あの白くてふんわりとしたお空の雲にそっくりの、綿はどこからくるのでしょう?
まっしろでふわもこの綿は、ひつじさんにそっくりですがちょっとちがいます。
むかーしむかしのおはなしです。
西の国のひとたちは、海の向こうから船につまれて運ばれてくる綿をフシギがりました。
綿はひつじのもこもこではありません。
東の国のひとたちは、このもこもこは木綿という草花だといいます。
けれど西の国のひとたちは、木綿というものをみたことがありません。
木綿とは、どんな草花でしょう?
西の国のひとたちは、きっとその草花にはもこもこの子羊がみのるのではとかんがえました。
しゅうかくのじきになると、子羊たちが野にところせましとさきほこるのです。
めーめーもこもこ。
めーめーもこもこ。
ちいさなちいさなひつじたちがそこかしこでないているのを、ひろいあつめて綿にするのです。
このふしぎないきものを、バロメッツとよびました。
そうしてあつめられた綿はお船で海をこえて、糸車で糸になるのです。
お次は布です。
ぬいぐるみの布をつくるざいりょうにも綿がつかわれることがあります。
おや、するとどうでしょう?
ぬいぐるみは糸と綿と布でつくられるのに、糸と布も、綿でつくられているのです。
糸と綿と布を、針でぬいあわせていきます。
ぬいぬいちくちく。
ぬいぬいちくちく。
かわいいおめめをわすれずに。
ぬいぬいちくちく。
ぬいぬいちくちく。
あいじょうをいっぱいこめて。
ぬいぬいちくちく。
ぬいぬいちくちく。
ふかふかのぬいぐるみのできあがり!
そう、お気づきでしょう。
あなたのよく知るぬいぐるみ、これから出会うぬいぐるみは……。
もしかしたら、バロメッツの生まれ変わりなのです。
そう考えると、もっとぬいぐるみが愛おしくなりませんか?
どうぞ、あなたのバロメッツをかわいがってあげてくださいね。