第4話(ゲームと現実の違い)
ちょっと難産でした。
今回はリグルが今がゲームではなく現実であることを実感する話になります!
自分の死亡フラグを折るため、カインとマナに負けないために魔物と戦う目的で村の外に出たリグル。
村の外に出たリグルは、実戦経験とレベル上げの為に魔物の存在を探していた。
「…………全然魔物の姿が見かけないな」
しかし、魔物と戦う為にその存在を探していたリグルだが、肝心の魔物の存在が探し初めてから暫くしても見つからないようだ。
「う~ん、魔物の姿が中々見かけないのも仕方ないか。今はまだ時期的にもゲームが開始する前だし、それに魔王が完全に復活するゲーム中盤以降前には魔物の数や凶暴化も緩やかな増加の筈だからな」
リグルは中々見つからない魔物存在に、まだ魔王が復活していないゲーム開始前の時期もあって仕方ないかと思い、その後も気を長くして魔物の捜索を続ける。
──サワサワ、ピィーピィー
「しかし、村の外の自然も凄いな~。村と一緒で空気はキレイだし、木々は生い茂ってるし、地面はアスファルトではないのは当然として、村に訪れる商人とかが通る道でもデコボコしているし、日本では考えられないぐらい自然が残っているよな。待てよ?日本や世界でも人がいない所ならこれぐらいなら自然が残っているかも?…………まぁいっか。とりあえずこの世界の自然が凄いってことで。魔物の存在はまだ確認出来ていないことだし、この自然を堪能しながら引き続き魔物の捜索、捜索。」
リグルはこの世界の自然が凄いと感心して堪能しながら魔物の捜索を続けていく。
──ガサ、ガサガサッ!
「ッ魔物!」
──ガサガサ、ザッ!
「キュッ!?キュウキュウ!!」
「ッ!コイツは確か、ゲームのチュートリアルでも出てくる兎の魔物"ホーンラビット"ッ!」
物音がした草陰から鋭い角が生えた肉食兎の魔物"ホーンラビット"がリグルの目の前に現れる。
「──ッ!!キュウッ!!」
──ドンッ!
「ワァッ!?──つ、角で刺すつもりかッ!?」
──バッ、ドサッ────
"ホーンラビット"は目の前にいる人間を認識した途端に自分の獲物が目の前にいることを認識し、自分の武器である鋭い角を使って人間に攻撃を放つ。そのホーンラビットの角攻撃をリグルは慌てて身を逸らして躱す。
「あ、やっヤバイッ(さっきので体勢が……ッ!)」
しかしホーンラビットの初撃を躱したリグルだったが、その初攻撃を躱した際に体勢を崩してしまう。
そしてホーンラビットは、自分の攻撃を躱した獲物が体勢を崩しているのを見逃さずに追撃する。
「キュウッ!!」「ウ、ウワァァァァァアッ!!?」
──ドンッ!グサッ!
リグルが慌ててホーンラビットの追撃に備える為に体勢を立て直そうとするが、その前に追撃したホーンラビット。
自分の体勢が立て直す前に追撃され、ホーンラビットの鋭い角が自分に刺さるっ!とリグルは悲鳴を上げる。
悲鳴を上げる獲物にホーンラビットは自分の攻撃が決まったっと確信する。
しかし……
「………キュウ?」
「あ、危なかった…………!」(ドキドキッ!)
リグルは体勢を崩しながらもホーンラビットの角攻撃をギリギリの所で躱していた。
「キュウ、────キュッ!?」
「ッ!?──ホーンラビットの角が地面にッ!」
しかもリグルにとってラッキーなことに体勢を崩しながらギリギリホーンラビットの角攻撃を躱したことが功を成し、その結果ホーンラビットは自ら角を地面に向けて放った形になり、ホーンラビットの角は地面に深く刺さるのであった。
「キュウッ!?、キッ、キューーウッ!!」
──グッ、グググッ!!!
地面に角が刺さって身動きが取れなくなって慌てるホーンラビット。
「い、今がチャンスだ…………!」
──チャキ
そしてリグルはホーンラビットが地面に角が刺さって身動きが取れなくなっている今がチャンスだと自分の剣をホーンラビットを斬ろうと構える。
ホーンラビットも角が地面に刺さって自分が身動きが取れない今が獲物にとって自分を倒すチャンスなことを感じ、その為必死に角を地面から抜こうと踠く。
「(よし!ホーンラビットが地面から角を抜くよりも僕が剣を振り下ろす方が早いッ!!)」
──フッ、ヒューーッ!
「キュウッ!キュウッ!キューーウッ!!」
──グッ、ググググググッ!!!
このチャンスにリグルはホーンラビットが地面から角を抜く前に首をめがけて剣を振り下ろそうとする。
リグルが剣を振り下ろそうとしているのを感じたホーンラビットは、声を上げながら角を地面から必死に抜こうとする。
だがそんな必死で角を地面から抜こうとするホーンラビットだったが、残念ながらリグルの剣がホーンラビットの首に振り下ろす方が早く、ホーンラビットは自分が斬られるのを覚悟する。
しかし……
「……………………ッ!」
──ヒューー、ピタッ!
「────キュ、キュウ?」
リグルの剣はホーンラビットの首を斬る直前の所で止められていた。
自分が斬られるっと覚悟していたホーンラビットだったが、いつまでも経っても斬られないことに不思議そうに声を漏らす。
──今がチャンスなんだ!
──斬れ、斬ってレベルを上げないと。
──相手は魔物だ、魔物なんだ。
──ゲームではさんざん斬ったりしてただろ!?それなのに何で?何でこれ以上手が震えて力が入らないんだ?
──────そうだ、これはゲームとは違って現実。ゲームではさんざんしてきた行為だが、今自分がしようとしていることは命を奪う行為。僕は魔物とはいえ首を斬ることで命を奪おうとしている…………だから恐いのか。…………情けないな僕は。ゲーム感覚で、レベルを上げようと思って、魔物とはいえ命を奪うことを認識せずに魔物と戦おうとしていたのか。それで今になってそれを実感して剣を振り下ろすのを止めてしまった…………何しているんだ僕は………
リグルはホーンラビットを斬ろうとした瞬間、これがゲームじゃなくて現実で、自分が魔物とはいえど他の生き物の命を奪おうとしていると恐怖する。
その為リグルはホーンラビットを倒すビッグチャンスにも関わらず、剣をホーンラビットの首を斬る手前で止めていた。
「キュウ?キュウッ!!キュキュキュッ!!」
──ググググググ………スポッ
「………ッ!?」
「キュウッ!!────キューーウッ!!」
「あ、あ、う、ウァァァァァァアァァァアッーー!!」
リグルが剣を振り下ろすのを躊躇っている間に、ホーンラビットは自分の角を地面から引き抜く。
そのことに気づいたリグル。しかし今している命の奪い合いがゲームじゃなくて現実だと認識したリグルは剣を振り下ろそうとしたまま固まっており、ホーンラビットはそのまま固まっているリグルに再度角攻撃を仕掛ける。
そしてホーンラビットから攻撃を仕掛けられたリグルは、その自分の命を奪おうとする攻撃に悲鳴を上げ、その恐怖からホーンラビットのに振り下ろそうと固まっていた剣を自分の命を守るために振り下ろす。
──ザンッ!
「キュウ………キュ」
──バタッ
「…………ッ!」
リグルに攻撃を仕掛けたホーンラビット。
しかし、ホーンラビットの攻撃に怯えたリグルがそのホーンラビットの攻撃から自分の身を守るために振り下ろした剣によって身体を縦に斬られる。
ホーンラビットの身体を斬ったリグル。
リグルはホーンラビットの身体を斬った後、動かなくなったホーンラビットの死体を見ては目に涙を浮かべて顔を歪ませる。
ホーンラビットを倒したリグルはその後暫くホーンラビットの死体から離れた位置で身体を休ませ、そして気持ちの整理がついてからホーンラビットの死体を顔を歪ませながらも回収するのであった。
「…………何とか魔物との初戦闘を終えたよ。………出てきた魔物がゲームのチュートリアルで出てくる最弱ランクの魔物だったことと、運がよかったから何とか傷を負うことなく倒すことが出来たけど、もし………出てきたのがもう少し上のランクの魔物だったら、運が悪かったら僕の命が危なかった………。本当によかった。現実で魔物を1人で相手にするのが、命を奪う行為がこんなに怖いことなんて想像していなかった………う、うぅ……。」
リグルは魔物との戦闘を終えた後、その時の様子と思い出しては、現実での魔物との戦闘や魔物とはいえ命を奪う行為に恐怖していた。
「…………ここは現実。ゲームじゃないんだ、いつまでもゲーム感覚でいたら死んでしまう…………」
──もし、出てくる魔物がもっと強い魔物だった場合は?
──もし、出てくる魔物が想定しているよりも多ければ?
──もし、出てきた魔物に負けたら?
──もし、魔物との戦闘で大怪我を負って帰ることが出来なくなればどうなる?
とリグルはここがゲームではなく現実だということをホーンラビットとの戦闘で深く自覚し、そしていつまでもゲーム感覚でいたら死んでしまうと実感した。
そしてそんな現実だということを実感したリグルの頭の中に、万が一の場合についての考えが浮かんできた。
もしこれが自分の前に現れたのがホーンラビットのような弱い魔物ではもっと強い魔物だった場合や怪我をした場合など不測の事態が起きた場合命を落としかねなかった。
そう、リグルが村の外に出て魔物との戦闘をして成長しようと考えたのもゲームの知識では今のこの時期でこの辺りで出てくる魔物ぐらいなら自分1人でも大丈夫だ、今の自分の力ならゲーム序盤に出てくる魔物との戦闘ぐらいなら1人でもいける、とゲームからの知識だけで判断したことが今回深く物事を考えずに行動した原因だ。
だが実際にリグルがしたのはゲームでのレベル上げ行為ではなく命の奪い合いだ。魔物との戦闘を終えたリグルは、何故そんなことも想像が出来なかったことに恐怖し、しっかりここが現実であることを認識していなかった自分自身に腹を立てる。もしそんな自覚をしていたら、村の外を出る時には魔物との初めての戦闘についてもっとしっかり考えて、準備をして行動に移したのに、と反省するのであった。
リグルはそんな反省をした後、その後の魔物との戦闘に備え気を引き締めた上で退路を確認し、万が一に自分が想定している魔物よりも強い魔物が出てきたら直ぐに逃げることを決めて魔物の捜索を続ける。
そしてここがゲームの世界だけど今は自分にとっては現実なことを認識した上で魔物との戦闘を行うことを決めたリグル。
幸いにもホーンラビットとの戦闘後からリグルの目の前に現れた魔物は、ゴブリン5体(武器無し)、スライム10体等最弱ランクの魔物達のみで問題なく倒すことが出来た。
最弱ランクの魔物達が相手だった為、魔物との戦闘が終えたリグルの身体は大きな怪我はなく、小さな傷はリグルの回復魔法によって癒して身体に傷を残すことはなかった。
その後大きな問題もなく、リグルは無事にレベルを1→3に上げることに成功する。
レベルを3まで上げれたリグルは空も夕焼けになったこともあって無理せずに村に帰っていくのであった。
───ワオォォォォーーッ!!
村に帰って行くリグル。その後直ぐにリグルがいた辺りに犬の遠吠えのような声が響く。
しかし、その遠吠えはリグル、他の誰もが気づくこともなかったのだ。
リグルの魔物との初戦闘でしたが、今回はあえて運がよくて倒せたみたいな形にしました。
(誰もが初めての命の奪い合いになればテンパるかなって思って………)
ちなみに今回のことでリグルは今がゲームではなく現実であることを認識しましたが、完全にはゲームの感覚が無くなった訳ではありません。(ゲームの世界観にいたらそれに頭が引きずられるためです)
次の更新は、異世界トラブルを更新してからになります。