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あらあら、まあまあ。  作者: かたつむり3号
第一章 Vの愛
13/37


 ソフィアを長生きさせ隊、隊長の俺は唯一の隊員でもある。

 最初に目をつけたのは、ユーリ殿下だ。テオドール殿下の弟でヴァルツァー王国の第二王子。ユーリ殿下も免除さえている授業があるはずなんだけど、律義に参加しているようで姿はよく見かける。とはいえ殿下は大抵どこにいても人に囲まれているから話しかけるタイミングはない。けれど昼食の時だけは、友人も取り巻きもみんな追い払ってしまう。

 食堂の広いテーブルを贅沢にも独占して不機嫌な顔で食事している姿を度々、目撃している。狙うならここしかない。


 出会いイベントの場である図書館で張り込んでみたりもしたのだが、待てど暮らせど殿下は現れず会うことはなかった。古代バメル語の解説本を読むフリはまったくの無駄になった。


 と、いうわけでお昼休み。ユーリ殿下との出会いイベントを始めよう作戦、開始である。

 俺は張り切って食堂の様子を窺っていた。隅の方で、いかにもデザートを選んでいますという雰囲気を醸し出しつつ、あー困ったわ決められないわ、とわざとらしい小芝居も挟みつつ、殿下がテーブルを独占するのを待った。待ち続けた。

 そして、舞台が整った瞬間、自分のプレートを持って人の波をかき分ける。殿下の目の前に立ち、表情筋に喝を入れ、困り顔をつくりあげた。

 深く息を吸う。


「あ、あの! ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか」


 イベントはこなしたい、でも目立ちたくない。矛盾を孕んだ俺の心が、喉仏がどこかへ飛んで行ったような素っ頓狂な声になって口から滑り出た。

 殿下から送られる変な人を見るとき独特の、深い眉間の皺と胡乱な目がいたたまれない。


「あの、席がどこも空いていなくて……」


 首まで熱い。今、どんな顔になってるんだ、俺。

 警戒心はそのままに、用心深く周囲を見回した殿下がぎこちなく俺を見た。


「あ、ああ……好きにしろ」

「ありがとうございます」


 精一杯の笑顔でお礼を伝え、殿下の向かいの席に腰を下ろす。ぎょっとして肩を揺らした殿下の様子には、気づかないフリをした。

 他の席はともかく、殿下がいるテーブルは丸ごと空いている。親しいわけでもない俺は当然、端っこに座るのが妥当なところだろう。しかし、そんなことをしていたら話ができない。強引だろうが何だろうが、話ができなきゃ仲良くなれない。

 こちとらたった一つのイベントに人生賭けてるんだから、多少の失礼はその後の親密度で許してくれ。


「いただきます」


 何食わぬ顔で食事を始める。ちらり、と盗み見た殿下のプレートの上には、これでもかとデザートが盛られていた。

 ……甘党の設定なんてあったのか。


「何だじろじろ見て」

「ひゃ! し、失礼しました。……甘い物、お好きなんですか?」


 じっとりした目で睨まれるが、ここぞとばかりに話題を広げる。前世の俺はそうでもなかったけど、今生の俺は話題について行くことは容易い。

 そわそわと待つ俺に、殿下の返事は簡潔だった。


「ちっ」


 うわ~舌打ちだあ……。王子さまでも舌打ちするんだなあ。

 現実逃避するしかない。当たり障りのない質問をしたつもりだったのに、ここまで言葉のキャッチボールを拒絶されるとは思わなかった。


「お、お嫌いでしたか。申し訳ありません」


 そんなわけないだろ、と自分の発言が喉に引っかかる。

 殿下のプレートは二枚あって、片方は全部デザートだ。食堂が用意しているケーキにクッキー、チョコレート等々、ありったけ盛られている。これを見たら誰だって、殿下は甘い物が好きだと思う。

 見せかけて実は、みたいな意外性は要らない。


「お前、誰だ? 友達だったか?」


 言葉の端々に敵意を感じる。初対面の人間、それも女の子にはもうちょっと柔らかい声で接した方がいいと思う。怯えさせちゃうから。

 マナー違反してる俺が悪いのは認めるけど、権力者が上から圧し潰すような態度だって褒められたもんじゃねえだろ。


「ソフィア・ジェーンと申します、殿下。お話させていただいたのは、今日が初めてです」

「社交界のルールは守れ。貴族でありたいならな」

「……はい、申し訳ございません」


 言葉もない。

 ユーリ殿下との出会いイベントを始めよう作戦、失敗!



 作戦変更。次のターゲットは、ゼルさまだ。

 こちらはユーリ殿下よりずっと難しかった。なにせ居場所がわからない。学園を隅から隅まで歩き回っても見つからない日だってある。見つけても、声をかけながら追いかけるのだが毎回、必ず見失う。絶対に聞こえてるはずなのに、立ち止まってくれないせいだ。


 ゼルさまとの距離を縮めるまでの期間で、俺はなんと、テオドール殿下と昼休みに中庭でおしゃべりする仲にまで進展した。予知夢で見た景色に似てる気がするって言い訳して、殿下とのイベントがある中庭まで連れ出すことに成功したんだ。

 姉さんにしつこく見せられて夢にまで出てきたイベントのスチルを思い出しながら、校内を歩き回ってやっと見つけた中庭だ。夢に見た景色なんだから、半分は本当のことを言った。

 まあ、楽しいおしゃべりにはならなかったけど。俺の振る話題はとことん外れたし、殿下の知りたいことに俺はまともな返事ができなかった、当然。ウィーリアは呼び出しに応じてくれないし、ヴァイオレットさまの情報も手に入らない。最終的に、今日の話し合いは無駄骨だったな、って殿下に鼻で笑われて解散だ。


 殿下の好感度上げはだから、ここでひとまず休憩。

 ゼルさまはもう、本当に、どうしようもないから、生徒会室の前で待ち伏せする作戦に出た。もちろん、ゼルさま以外の人が接近したらすぐに隠れるという不審者っぷりを発揮しつつ。

 そして時はきた。


「退いてくれる?」

「こんにちは、ゼルさま」

「ぼく、生徒会室の中に入りたいんだ。君がいると扉を開けられない」


 顔はにっこり笑っているが、目はちっとも笑ってない。前世の俺だったら歯ぎしりしてるようなイケメンなのに、何でこんなに胡散臭い顔してんだこの人。


「う~ん、困ったな。言葉が通じない?」

「少し、お話をさせていただきたいのですが、お時間いただけませんか?」


 こっちも負けじと笑みを貼り付け言葉をかけ続ける。誰かと、こんなに噛み合わない会話をしたのは初めてだ。


「あの、ゼルさま」


 ふいっとゼルさまが背を向けた。慌てて追いかけ正面に立つ。


「何してるの?」

「え、あの、お話を」

「今、少しだけしたでしょ? 足りない?」

「……ええ、できればゆっくり、お話させていただきたいです」


 今ので会話が成立していた、と判断されるのはまるで予想外だ。


「でも、ぼくは君と話をしたくない」


 絶句。

 そんなにはっきり言わなくてもいいのに。ソフィアの乙女心が、ぴゃあ、と泣いた。とっさに目からこぼれそうになった涙は飲み込んだ。びっくりしても泣きたくなるから、ソフィアの体は厄介だ。感受系が豊かで俺は好きだけど、貴族としてやっていくには苦労も多い。


「あ、それから、」


 これ以上は少し時間を置いてからにしてもらえると嬉しいです。

 俺の心の声なんて当然、クリストファーさまには聞こえないので遠慮なく続いた。


「ぼくのことはクリストファーって呼んでくれる? 好きな子にしか名前で呼んでほしくないんだ」


 はい、もう無理。

 よく考えたら俺、恋愛の対象として男とお近づきになる方法なんて知らないもん。友達は自然とできて気づいたら増えてた方だから、今更、作り方なんて思い出せないし。


「はい、クリストファーさま。申し訳ございません」

「ん? 謝ることはないよ。呼び方をお願いしただけだ」


 そこは素直に謝罪を受け取ってくれ。


「じゃあ、もういいかな? ケーキを食べに行きたいんだ」


 生徒会室に用があったんじゃねえのかよ。

 顔に出た。自分でわかる。

 ゼルさま……じゃなかったクリストファーさまが笑みを深くした。それはそれは、意地の悪い笑みだ。


「今日のケーキは苺がたっぷり使われてるんだよ」


 言葉は存外、明るく発せられた。そのズレが不気味で、恐ろしい。


「あ、甘い物がお好きなんですか?」


 うわ、有り得ない俺、最悪。ユーリ殿下を相手に失敗が確定した時も、このセリフをぶつけたぞ。

 さては前世の俺、本物の友達そんなに多くなかったな。こんな会話術で友達と楽しくおしゃべるできるわけがない。少なくとも、ソフィアの友達だったら有り得ない。


「うん、そう。甘い物が好きなんだ」


 おや、好感触。


「甘い物が好きだからね、美味しい物を食べてほしいんだ。そのためには、自分が食べなきゃ。味がわからないのに、おすすめできない」


 う~ん、話が見えなくなった。

 クリストファーさまの話じゃなさそうってことは、ぼんやりわかった。何で自分の話をしてくれないのかは、わからない。そんなに俺と話すの嫌なのかな。


「クリストファーさまが、お好きなわけではないのですか?」

「そうだよ。どうしてぼくが甘い物を好きだと思ったの?」


 どうして今の流れで他人の話をしてると思えると思ったの?


「どなたのお話をなさっているのか、主語がなかったので」

「ないものを勝手に補完する。人とのおしゃべりは難しいね」

「そ、そうですね……」


 おかしい。絶対におかしい。

 人との会話ってこんなに難解なものだったろうか。少なくとも俺の知っている限り、おしゃべりは貴族に必須のスキルで、かつ無限に時間を食い潰すものだ。男達は姦しいとか言って敬遠するけど、女になればわかる。おしゃべりだって有益な情報をもたらすことはあるし、女にとっておしゃべりの場は戦場でもあるんだ。

 楽しくないのは俺の話術がくそだからで済むとしても、何だってこんなに話がすれ違うんだ。前世で、ガキの頃ふざけてアルミホイルを噛んだ時だって、ここまでの違和感じゃなかった。


「じゃあ、ぼくはもう行くね」


 声を出すのも億劫になるくらい疲れた。溜め息のような返事を辛うじて伝えて、カーテシーをとって誤魔化す。


「あ、そういえば、」


 もう勘弁してくれ。思わず眉根に寄ったしわは、頭を下げていたおかげで隠れた。


「社交界では、噂で人が死ぬんだよ」


 話が見えず、まじまじとクリストファーさまの顔を凝視してしまう。睫が長い。


「節操なく色んな男に声をかけて回るような真似は、自分の首を絞めてるって気づかないと死んじゃうよ? 女の嫉妬は醜いって、本に書いてあった」


 顔から血の気が引いたのが自分でわかった。

 俺、色んな男に声をかけまくってる尻軽女って噂が立ってんの!?

 マジで? 何で?

 確かに、テオドール殿下には声をかけた。ユーリ殿下と、クリストファーさまにも。でも、節操くらいある。節度を守って、攻略キャラに限定してマナー違反してる。しかもテオドール殿下に関しては情報提供、という名目ができたから公式な関係だ。自己紹介し合って、俺から話しかけることも明確に許可を得た。はっきり言われた時はちょっと傷ついたけど、最初にマナー違反をしたからしかたない。


「……」


 生徒会室に通うようになって、友達との交流はほんのちょっとだけ減ったけど、孤立するほどじゃない。授業にだって真面目に出席してるし、サボったのはあの日だけ。先生にはちゃんとしっかりしつこいくらい謝罪したから、ドン引きされて叱られることもなかったから問題ない。

 噂の出処は探すだけ無駄だろうけど、理由は何だ?

 いや、わかってるけど。明白だよな。婚約者のいる男性に声をかけて結構な頻度で会ってる。相手はこの国の王太子で、婚約者はあのヴァイオレット・ベルシュタインだ。

 大問題。自覚はある。


「……?」


 そういえば、悪役令嬢ってヒロインの行く先々に現れてはイベントを掻っ攫って行くはずだった。何で俺、一度も出会ってないんだ?

 イベントのために、ていうかイベントに繋げるためにあちこち歩き回ってるし、放課後のほとんどの時間を殿下と過ごしてる。クリストファーさまの追っかけもやってる。なのに、ヴァイオレットさまに遭遇したことは一度もない。


 ウィーリアと契約した。これは揺るがない。そして契約した以上、ゲームのシナリオは始まってるはずだ。

 ……もし、万が一。ゲームのシナリオなんて物が存在しないとして。そう仮定して。


「無理、だな……」


 強制バッドエンドの内容は知らない。知ってるのは、死ぬってことだけ。


『ファンの間では製作者の、やる気あんのか、っていう怒りのメッセージだろうって噂』


 つまり、何もせずいたら死ぬってことだ。確証がなくたって足掻くのをやめるわけにはいかない。何がどうやって俺を殺すのかもわからないのに、のほほんと過ごしていられるもんか。

 深く息を吐いて顔を上げる。クリストファーさまは、もういなかった。


「……」


 今日は帰ろう。明日からまたやり直し。ウィーリアと仲直りもしないといけないし、傷ついたソフィアの心も癒してやらないと。アニーが心配する。

 俺のやることは変わらない。

 頑張れ、俺。



 セシルさまとの出会いイベントを始めよう作戦は、決行する気力が湧かなくて保留中。誰だって気が滅入る。

 あの後、寮に帰って心配するアニーを泣き落とした。夕飯が入らないくらいチョコレートを用意してもらって、全部、残さず食べたけど、にきびができただけで気分は上がらなかった。おかげで数日は節制を強いられて、おまけに、にきびが治るまで外出禁止を言い渡された。

 一日でも間を開けるともう作戦どころじゃないってのに。


 ウィーリアとは、仲直りできなかった。話をしようにも最近は帰ってこない。契約したって精霊の居場所はわからないらしい。俺の心の声は筒抜けだってのに、不公平だろ。俺にはあいつの気持ちなんて、これっぽっちもわからないって。

 精霊ってのは長生きだからか、喧嘩も長引くのかもしれない。でも長期的に喧嘩を継続できるほど、気が長い方じゃないだろ。どっちかと言えば、あいつは短気だ。


「はぁ……」


 今日の授業はサボってしまおうか。


「やあ、ソフィア・ジェーンだよね」


 はい、ソフィアです。今日は放っておいてください。

 胸の内で毒を吐き出して、微笑みを貼り付け振り返る。――息が止まるかと思った。ていうか一瞬は止まったかもしれない。


 セシル・ベルシュタインさま。

 攻略キャラの一人で、ヴァイオレットさまの義理の弟だ。


「セシルさま……おはようございます」

「うん、おはよう。話があるんだけど、いいかな?」

「はい、もちろんです」


 有り得ない。セシルさまから声をかけてくるなんて、普通に考えたら有り得ないことだ。接点がない。

 でも今は普通じゃない。俺は自分の生存のために彼の義姉さんの婚約者に近づいてる。距離を詰める気満々。おまけに、俺には嫌な噂も立ってるらしいし。自分の義姉さんの婚約者に、尻の軽い子爵家の令嬢が付き纏ってたら、俺でも声かける。セシルさまは紳士的だ。本物の貴族。俺だったらバット持って行く。


「最近、変な噂が流れてるって聞いたよ。大丈夫?」


 本当に紳士的だ。心配してる素振りなんて、俺なら嘘でも見せられない。単刀直入に本題をぶつけて、人目も気にせずバットを見せつけて脅すね。


「お心遣いありがとうございます。わたしは大丈夫です」

「休んでたでしょ? 体調は平気?」

「おかげさまで、もう大丈夫です」


 ただの、にきびだし。休んでる間、アニーに徹底的にスキンケアされたんだ。おかげで俺の頬つるっつるのもちもちだ。触らせてあげたいくらい。今なら赤ちゃんの肌とも競えるぞ。


「義姉さんも気にしてたよ。どこかで噂を聞いたみたい」

「……それは、ご心配をおかけしてしまったようで、申し訳ございません」


 眉一つ動かさず笑顔をキープしてるセシルさまは、いっそ不気味だ。

 言葉を選んだけど、イラッとしたくらいの反応はぶつけられるって覚悟してた。殿下といいクリストファーさまといいセシルさまといい、笑顔を浮かべるなら感情も伴わせてほしい。せめて微笑くらいに留めてくれれば、貴族の鑑って尊敬できるのに。


「なるほど。そこで謝罪するんだ」


 喧騒に紛れる程度の小声だった。つまり本題に食い込む発言ってことだ。

 そりゃ謝罪するよ。俺の生存のために、殿下と過ごす時間を減らしてもらってるんだから。申し訳なくて、震えてる。俺の噂を聞いたなら気になるだろうし。何せ生徒会室で二人きりになることも多い。ウィーリアがいないうえ、クリストファーさまも来てくれない。かといって他人にべらべら話せる内容でもない。どうしても二人きりになる。


「俺と君はどこかの通りで一緒に歩いたことがあるんだって。知ってた?」


 それも噂だろうか。

 殿下達を追っかけ回すのに必死で、自分の噂に関する情報収集は後回しにしがちだ。知りたくないって気持ちもあるし、俺の男心がげんなりしてる。でも、そうも言ってられないみたいだ。


「申し訳ございません。初めて聞いた話です」


 セシルさまがわずかに目を細めた。

 俺の表情から何かを読み取ろうってことかもしれないけど、何も知らないから安心していいよ。噂はマジで、俺も頭を痛めてるんだ。


「そう、わかった。あ、そうそう。猫は好き?」


 腹の底に鉛が溜まっていくような感覚がした。


「……はい。猫は好きです」

「あっちの角を曲がって行ったよ」


 視線だけで示された方を追う。けれどそこに、もうヴァイオレットさまの姿はなかった。


「気をつけてね」


 妙に優しい声だった。猫撫で声のお手本みたいだ。


「猫はすぐ引っ掻くから、飼い猫でも鼠を見たら飛び掛かってくる」


 鼠。仮にも女の子を鼠扱い。イケメンでも許される範囲か怪しいな。

 少なくとも、相手が俺でなきゃ泣いてたぞ。まあ、ソフィアはしっかり泣きそうだけど。


「気をつけてね。それじゃ」


 バイバイ、と。

 社交辞令でもなく、ストレートに拒絶を示された。完全に嫌われたな。ちゃんと頭を下げた俺を、自分で褒めてあげる。

 何だろう。俺が思ってるより、状況が悪い。そんな気がする。

 死にたくない。俺にあるのはそればっかりだけど、それだけじゃ駄目かもしれない。もう少し色々、考えなくちゃ。まずは落ち着いて、一つずつ。

 今どういう状況なのか。俺に関する噂の全容。何が問題で、俺が何を間違えたのか。それから俺が、何を知らないのか


 そうして奮闘している俺の耳に飛び込んできたのは、殿下が真実の愛を見つけた、という背筋が凍りつくような噂だった。

 

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