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ナインを集めろ!

 この地には領主で、悪徳令嬢として名高いマルゲリータという人物がいる。

彼女は金髪の髪にシルクのような肌、そして紅色の頬にダイヤのような瞳という

美貌を生まれ持ち、周りからチヤホヤされて育ってきた。


それによりすっかりと我儘な乙女ゲームに登場する悪役令嬢のような性格に育ってしまった。

どの程度性格が悪いのかを説明するには、こんなエピソードが手っ取り早いだろう。

彼女の領地にとあるパレードの劇団員達がやって来た。


そこで、盛大なパレードを繰り広げたのだが、それがあまりに人気が出たのが彼女の逆鱗に触れた。※琴線とは、物事に感動し共鳴する胸奥の心情。「心の―に触れる話」 [注意]「琴線に触れる」を,触れられたくないこと,不快な話題に触れる意で使うのは誤り。だそうです。

なんと自分より目立つ人物は追放ということで、さっさとそのパレードの人々を追い出してしまったのである。


そうして今、このピッツァデリバリーサービスの噂も、彼女の耳に届くようになり密かに危機を迎えていた。

「……おい、そこの」

マルゲリータが従者を呼ぶ時は基本的に、名前を呼ばずそこのとか代名詞を使って人を呼びつける。

わざわざ覚える価値位もないと思っているからだ。


「はいなんでしょうかマルゲリータお嬢様」

ビクビクとした態度で従者は、対応をする。

「最近ピッツァデリバリーサービスなるものが、人気を集めているようだが、いかようにしたものか」

「……と言いましと?」


そう従者が返すと露骨にイライラとした態度を見せ、声を荒げる。

「どうやればピッツァデリバリーよりも私が人気者になれるかと聞いているんんだ!」

「ひいい」

怒鳴られた従者は、萎縮してしまい声も出せない。

そこで業を煮やしたマルゲリータは、従者長を呼びつけ意見を仰いだ。


「でしたら野球なるスポーツで対戦を挑んだらいかがでしょうか?」

「野球?」

「はい、九人対九人で対戦するスポーツのようで、どうやらオーナーの采配が光る

なかなかゲーム性の高いスポーツのようで」

「ほう、それは私に相応しいスポーツじゃないの! さっそく対戦を申し込みに行きましょう」

そういってマルゲリータは、護衛のものと従者長を連れクローネのピッツァ屋へと向かった。



 一方のクローネ店主が切り盛りするピッツァ屋は、丁度お昼と夕方のアイドルタイム

で人が空いてきている頃であった。

そこに偶々私とお姉ちゃんも遊びにきており、談笑を楽しんでいた丁度その時である。

「控えろ、控えろ。 マルゲリータご令嬢のおなりであるぞ!」

そうしたけたたましい声とともに、馬車にのって彼女はやってきた。


「ふん、ここが噂の店ね、庶民らしくこじんまりとしてるわねえ」

開口一番悪口と共に、彼女は馬車から降りてきた。

アリスとリリー、そしてクローネはどうやらお偉い人が来たということで

平伏し、他の客は面倒なことになったとそそくさと退散した。


「面をあげなさい、貴方達がピッツァデリバリーをやっている者達ね」

「はい、そうでございます」


店主は、なるべく彼女を刺激しないよううやうやしく答えた。

「ピッツァデリバリーなんてことやられると大変私の気持ちが不快なの? わかる」

「ははー、すみません」

「けれど私はとても優しくて慈悲深いから、一度だけ挽回のチャンスをあげるわ」

「何でございましょうか?」

「野球というスポーツで対戦を申し込むわ。明日までに九人集めて、郊外にある平地にやって来なさい。 わかった?」


「はい、仰せつかまつりました」

そうとだけ言い残すと、彼女はそそくさと去っていった。

「……もう面をあげてもいいよね?」

「んー? たぶん」


私とお姉ちゃんは一言もはっしまいと肝にめんじていたため、いなくなってしばらくしてからようやく顔をあげた。

チラチラと横目で周りを確認しながら、私達は顔をあげた。

「……いやー参ったな」

「参りましたね」

「お嬢ちゃん達野球っていうスポーツのルールって知ってるか?」

「いや、全然」

「とりあえず九人集めろって言われてもな……、どうする?」

「うーんとりあえず魔装を使えば、野球に詳しい人を集められるかもしれませんよ」

「おお、それだ!」


そういうことで私達は早速招き猫の魔装を起動した。

「魔法少女リリーが命ずる! 野球に詳しき者を五人呼び寄せよ『コール!』」

するとしばらく経つと、ちょうど五人なにやらユニフォームを着た者達がやって来た。

「もしかしてあなた達野球をさっきまで?」

「ああ、そうだけど?」

ユニフォームを着た一人が答える。

「なあ今日の飲食代はタダでいいから野球を俺たちに教えてくれないか?」

「マジっすか!」


タダという言葉に反応して、途端に浮足立つユニフォーム着た男たち。

そうしてユニフォームを着た男たちに一通りの事情を説明し、明日の試合に出てくれることも了承してもらった。

「俺たちは別にいいですけど、その子達はちゃんと戦力になるんですかね?」

「あの素人意見ですみませんが、野球というスポーツはとりあえず最強の投手がいれば外野が動く必

要ないんですよね?」


「まあ、そうだけど。 そんな簡単なスポーツじゃないぜ、これ?」

「でしたら私達魔法少女なので、ボールに魔法をこめることで役に立てます! ポジションはとりあえず外野を守りますね」

「魔法少女……?」

ユニフォームを着た男達は、訝しげな表情を浮かべてこちらを覗いてくる。

「では証拠をお見せしましょう、お願いリリー」

「魔法少女リリーが命じる、如何なるものも避ける球となれ『スルー!』」


そういって私達はボールを魔装にし、試しに外へ出て私が投げた球をうてるか実演してみせた。

すると球速はとてつもなく遅いが、バットを必ずすり抜けバットにはかすりもしなかった。

ただ問題として、投手から打者まで届くほどの距離を投げることができないため、本番では野球経験者に投げてもらうよう頼んだ。


問題はそればかりではない。

私とお姉ちゃん、店主、ユニフォームの男たちをあわせても八人しかいない。

これではナインが揃わないではないか。


そんな途方にくれていた時であった。

「おいおい、何しけたツラしてるんだよ」

意外な男が私達の元へ救援へとやってきたのである。



「マルゲリータお嬢様、最強のナインを集めてきました」

「よくやったわ、これで明日をもってピッツァデリバリーは閉店となるわ」

不安を抱える者達と怪しい陰謀を抱く悪役令嬢風の女。両者の戦いはいかに。

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