病弱少女リリー
「大丈夫リリー?」
「……うん」
最近の過労がたたり私は体調を崩し、床に臥していた。
こうしていると、私の昔の頃を思い出す。
「じゃあとりあえずだけど私仕事行ってくるから」
「うん、わかった」
……またお姉ちゃんに迷惑かけちゃったな。
私は最近は、自分の魔法で少しはお姉ちゃんの役に立てていると思っていた。
しかし元々病弱な体質のため、大きな魔法を使うことも働くこともあまり
するべきではない。
実は両親が莫大な借金をすることになったのには、私の病弱体質が絡んでくる。
★
「お願いします、薬を薬を売ってください」
そういって薬屋に泣きつく男がいた、私の父だ。
私は小さい頃大病を発症し、一年に二、三度花を咲かせる花の蜜を原料とする妙薬を何本も与えられていた。
しかし、私の家は元々魔王を倒した勇者パーティの魔法使いの末裔とされてはいるが、今ではただの一般庶民だ。
そんな貴重な薬を何本も与えられる程裕福ではない。
今日もいろんな薬屋を歩き回っては借金をして、薬を買っていた。
そんな家庭環境であったため、父も母も働き詰めで、お姉ちゃんも私の看病につきっきりになっていた。
しかし不幸な家庭に一筋の光明が差す出来事があった。
「おい聞いたか、どんな病気でも治すと言われる名医がやって来てるらしいぞ」
そんな他愛もない噂であったが、父はすぐにこの情報を聞きつけその名医の元へ訪れた。
「お願いします、私の娘を治してください」
父は必死に頼み込んだというが、その名医は腕は抜群によいが、高額な報酬を要求するという。
当然そんなお金払えるわけがないのだが、後払いで払うと必死に懇願した。
「ダメだね、最低でも前金五千万それが用意できなければ運がなかったということさ」
「そこをなんとかお願いします、お願いします」
「あなたね、一般庶民が稼げる生涯年収四人分ぐらいの値段を私は要求してるんだよ? あなたが倍働いても間に合いっこない」
「私の妻も一生かけて働いて返します、それでなんとか」
「ダメだ、まだ全然計算が合わない」
その時父は咄嗟にこんなことを言った。
「……私には病気の娘と元気な娘がいます、もし借金の督促に遅れたら遊郭なりなんなりに売り飛ばしてください」
「ほう面白い。見に行こうじゃないか」
「本当ですか、ありがとうございます」
「勘違いするんじゃない、ちゃんと遊郭で買って貰えそうな顔立ちなのか見に行くだけさ」
そう言って偏屈な医者は、私達の元へとやってきた。
私のもとへとやってきたその偏屈な医者は、まるで死神のような風体をしていた。
げっそりと痩せた顎に、青白い肌色。これではどちらが患者なのかわかったものではない。
医者は私達姉妹のことを、じっくりと観察した。
私のお姉ちゃんは、長いパーマを巻いた銀髪に青い瞳そして紅色の頬と街一番の美人と評判高い。
そして次に医者は私の方を見た、私は銀髪のショートのストレートヘアにエメラルドの瞳と自分でいうのもあれだがどちらかという可愛いよりだ。
「よし気に入った、問診を開始しよう」
「ありがとうございます」
父は思いっきり地べたに這いつくばり、その場から動くことはなかった。
偏屈な医者の腕は評判通り確かで、私の病気とその原因をズバリと言い当てた。
「なるほど、なるほど。 この子には莫大な魔力が眠っている、ただそれに体の成長が追いつききれていないんだ。
この魔力を抑える薬を大きくなるまで飲ませ続けなさい、そうすればもう二年もすれば立派な魔法少女になってるよ」
「わかりました、ありがとうございます」
「それよりも約束、ちゃんと家族には説明したのか?」
「今から……」
そういって父は家族の前で、事情を説明しだした。
「そんな我が子を遊郭になんて!」
激昂する母、だがそれに対して父は負けじとこう返す。
「だから俺たちが一生懸命働いてそうならないようにすればいいんだ」
「それはそうだけれど、アリスの了承は得たの?」
「……私はいい」
お姉ちゃんは顔を真っ青にしながら、静かに答えた。
「ただ遊郭にいくなら姉妹一緒のところがいい」
私はその時遊郭の意味を知らなかったが、お姉ちゃんの反応を見るに辛い場所なのだということは容易に想像がついた。
「……私もお姉ちゃんと一緒がいい」
「よし、決まりのようだな」
そういって偏屈な医者は私に処置を施した。
処置は見事うまくいき、私は普通の少女として生きてくことができるようになった。
偏屈な医者は最後に一言こう一言残して、去っていった。
「大きな魔法を使うと体に支障が出る、まあゆっくりコツコツと返していきなさいな」
「ありがとうございます」
私達家族は、深々と頭を下げて偏屈な医者にお礼を言った。
私達の民家から出るとその偏屈な医者の助手が出てきた。
「先生、本当にあの人達がお金を支払えるとでも?」
「勿論さ、耳を揃えて取り立てるつもりでいる」
「けど先生一度治した患者さんの顔覚えてないでしょ」
「ああ、私達を待っている患者はこの世にごまんといる。 いちいち治した患者のことなんて覚えちゃいれないね」
「ふーん」
「さ、行くぞ」
そういうと医者は小走り気味に歩いていく、それを見て助手はニコリと笑っておいかけていった。
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