魔法少女リリー
私の推測通り、目の前の遮蔽物は扉であった。
私は扉を開けると、そこにはマルゲリータ曰く三層よりもまたいっそう大きな光が待ち受けていたらしい。
それは私の陰になっている部分すら通り越して、光が届くほどの強烈なものだそうだ。
おそらくこの光が源となり、三層にまで漏れ出して行く手を阻んでいたのであろう。
私はまた同じギミックか……と少々辟易としていたのも束の間、なにやら部屋が大きな地響きをし始めた。
一瞬何が起きているかわからなかったが、次の瞬間マルゲリータの叫び声で朦朧としていた意識が目覚める。
「リリー! 眼鏡を外してこのままじゃあ危ない」
私はその言葉通り眼鏡を外し、周りを見た。
が、次の瞬間私はいきなりの暗闇からの光で目がなれておらず、目が焼かれる程の眩しさを感じた。
まずい……!
視界がぼんやりとしていて、何が起きているか正確にはわからない。
だが、何となくわかるのは部屋の中央に何やら人形の光の物体が存在するということだ。
私はあまりの眩しさに目をつむっていたが、少しずつ目が慣れていきようやく見開くことができた。
がその瞬間見えたものは絶望であった。
マルゲリータが、その光を放つひとがたの物体に首を締め付けられていたのだ。
「やめろ! 離せ」
私がそう叫ぶと今度はその光のひとがたのもの、名付けて光の虚人は私へと行動を向けてきた。
「ひい」
私は光の虚人の標的になり、思わず逃げ出した。
だがその一方で、マルゲリータは助かった。
私が叫び声をあげなければ、あともう一瞬で気絶させられていたことであろう。
「気をつけてくださいな! そいつ凄い力で女の私達じゃあかないっこありませんわ」
そうマルゲリータが忠告をすると、それに腹を立てたのか今度はマルゲリータへと攻撃の標的を移した。
光の虚人は、光を模しているだけあって物凄いスピードで、対象を追いかけてくる。
追いかけられた者は逃げ惑うしかないのだが、虚人はハイスピードでかつスタミナは魔法後からでおそらくは無限にある。※スタミナは魔法後?ちょっと意味が:(;゛゜'ω゜'):
いつかは力尽き果てて、嬲り殺しにされてしまう。
「ちょっと! あなた魔法少女なんでしょ? 何か魔法を使ってどうにかしてくださいな!」
ダメだ。
私は魔法の才能はあるが、魔法の知識がない。
お姉ちゃんがいなければ、簡単な魔法すら使うことができない。
このまま当てずっぽうで魔法を唱えてみようか、必死になって考えを巡らせてみた。
いやダメだ、私が適当に魔法を使って成功した試しはない。
それこそ今一日に一回しか使えない魔法を使って、無駄に終わらせたらこのまま全員があの虚人にやられてしまう。
どうにか打開策を考えなければ……。
「ごめんなさい、お嬢様。 今はとにかく逃げ惑ってください。 ここで魔法は使えません」
するとどうしたことだろう、その虚人は今度は私に向かって突進を始めてきた。
不味い、私が魔法少女だということを悟られてこちらから潰しに来られてしまった。
虚人は逃げる私に瞬く間に追いつき、例のごとく首絞めを始めた。
マルゲリータは、その手を振りほどこうと必死に腕に殴りかかるが、虚人は全く無反応を貫く。
万策尽き果てた。
段々と意識が遠のき始めていく、最後に見るものはこの虚人の姿なのかそう考えていたときであった。
「リリー!」
いつもよく聞いている声が聞こえてきた。
この声はお姉ちゃんだ、走馬灯というやつであろうか?
いや違う、そこには確かにお姉ちゃんがいた。
虚人は今度お姉ちゃんに向かって、突進を始めた。
「お姉ちゃん不味い! そいつ凄い速さとパワーと無尽蔵のスタミナがある!」
そう私が叫びと今度は私へと、踵を返して襲いかかってきた。
不味い、こいつ声をあげた者を優先的に攻撃してくるんだ。
私はようやくこいつの性質を悟った。
ならばせめてこの気付きをお姉ちゃんに伝えなければ。
「お姉ちゃん声を絶対にあげないで! こいつ声を出した人を攻撃してくる」
「イヤダ!」
お姉ちゃんの声が空間中にこだました。
もう馬鹿!
私の忠告をなんで無駄にするの、そう思いながらお姉ちゃんの方が向くが虚人は別の方を向いていた。
どういうことだろう、この虚人は声を出した者に攻撃を加えるのではないのか。
しかし次の瞬間なにが起きているのか察した。
確かに声はお姉ちゃんのものであったが、声をあげたのはお姉ちゃんではない。
あのオウム返ししかしてこないマリオネットがあげたのであった。
そうこうしているうちにパーシヴァルさんが部屋へと辿り着き、私達は晴れて全員集合することができた。
「え? これ何が起きているんですか」
「事情を説明するのは後になります、リリー今のうちに魔装を作るわよ!」
「わかった! どの魔法でいく?」
「ストレングスで行きましょう」
「魔法少女リリーが命ずる、グローブよ我が力を増幅させよ!『ストレングス!』」
久々に感じる魔法詠唱であったが、私の手の中に物凄い力を感じる。
エンチャントは成功したようだ。
「パーシヴァルさん、剣を借りますね」
「あ、はい」
そういって私はパーシヴァルさんの、腰に掛けられていた剣を鞘から抜き臨戦体勢をとった。
「さあ勝負よ来なさい! 虚人さん」
感想、ポイント、コメント頂けると嬉しいです。




