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光の先に


 私は光の通路を一歩一歩手探りで、周りに障害物がないか探りつつ進んでいった。

光の通路といっても、私は今暗闇の眼鏡をかけているから周りをなにも見ることはできないのだが。

これでは、二層の暗闇の部屋と大して変わらない、唯一変わるのは後ろに信頼できる仲間が存在するということだ。

「それにしても暗闇の次は、光なんて随分と不親切な設計になっていますことね。 このダンジョン」

「ですね。 というか私はよくわからないんですが、みなさんは二層どんな感じだったんですか?」

「そうですわね、とりあえず暗くてモヤっとした薄い霧が常に張り詰めていましたわね。 それでいて時折なにか独り言のようなことが聞こえる不気味な空間でしたわ」

「……そっかあ、私の方はさっき言ったとおりみんなの偽物が出てきて大変だったよ」

そうみんなの偽物、自分を馬鹿だ屑だと罵ってくる最低な幻影だった。

だが最後は私の仲間がそんなことを言うわけがないと、強い私の気持ちが打ち勝ち霧を晴らすことができた。

「でも私目線でみれば、三層も真っ暗な部屋で一つをのぞけば二層と変わらないかもしれません」

「なんですの? 一つのことって」

「信頼できる仲間が後ろについていてくれるってことかな」

そういうとマルゲリータは、後ろから強い力で背中を押して来たため、私は思わずよろけそうになった。

「もー、びっくりした! もうちょっとで体勢が崩れるとこだったよ」

「あらごめんなさいな、オホホホ」


 先程の信頼できる仲間というのは少し取消けさないといけないかもと思ったその時であった。

これでは、本当に背中を預けられる信頼できる仲間とも少し思えないなとほんの少しだけ思ってしまう。

「あ、先程あげてた好きって話に戻ってもいいかしら?」

「はい?」

私は唐突に変わる話の展開についていけずにいたが、もしかすれば彼女なりの答えが見つかったのかもしれない。

「その……先程いっていた好きっていう気持ちは確かですわ。 それに信頼って気持ちも加わっているって感じですの」

「あ! それなら私も同じだ。 お姉ちゃんなら絶対なんとかしてくれるって信頼は百パーセントあるよ!」

私は胸を張ってそう答えた、お姉ちゃんは小さい頃から私より何でもできて、そして優しい。

もし次生まれ変わったとしても、お姉ちゃんの妹に生まれたいなとそんな感情を強く抱くほどだ。

「また同じ話に戻りましたわね。 だからあなたの言っている好きと私の好きはやはり微妙に違うんだという話を」

顔は見えなかったが声だけで少し呆れていることが見て取れた。

そんな時私にある考えがよぎった。

「もしかしてお嬢様のいう好きって、恋っていう意味なんじゃないですか?」

それを言った途端マルゲリータは押し黙ってしまった。


 私はもしかしたらマルゲリータが、私の背後からまた消えてしまったのかと一瞬心配になったが、そんなことはないと気がついた。

なぜならば、私の肩にきちんと手が触れているという感覚があるからだ。

ということは何かまずいことを私が言ってしまったのではないか?そういう方向に話が持っていかれそうになる。

「あのー私なにかまずいことを言ってしまいましたか?」

「……いや、ちょっと考え事をしていた。 ただそれだけだから。 少し黙っていて頂戴」

「あ、はい。 ごめんなさい」

どうやら私の思い過ごしのようであったが、ちょっとだけ何か苛立っているようなもしくは集中しているような感じを受けた。

「あーもうわかんない、何なんでしょうこの気持ち」

私はまだそういった気持ちになったことがないからわからないが、きっと素敵な感情なのだろうと察するに遠く及ばなかった。

そしてやはりこれは単なる好きではなく、恋なのでは?という憶測が真実味を帯びてきたように思えた。

それを思うと心の底から、何かこしょばゆい感覚が湧き上がってくる。

「フフフ……」

私の顔はきっと今ニヤニヤと気持ち悪い顔を浮かべていることだろう。

だが幸か不幸かそれを確認してくれる人はいなかった。


 私は暗闇の中を少しずつ牛歩のように進んでいたが、とある時何かの遮蔽物のようなものに手が触れる感覚があった。

「うわ! なんだろうこれ、何か大きな壁みたいなものに手が当たった」

「壁? ということはもしかして曲がり角があるんじゃないんですの? もうちょっと調べてみなさいな」

私は彼女のいうとおり、その遮蔽物の形状や形そして肌に触れるあたたかさなどを確かめてみた。

すると、この遮蔽物にはなにか突起物がついており、そして形はおそらく四角、温かさはとても冷たい鉄のような感覚を感じた。

「あれ……これってもしかして?」

「もしかして、なんですの?」

「これ扉だ! やったゴールに辿り着けたんだ」

扉がまだ開かれていないということは、お姉ちゃん達よりも先に辿り着けたということになるのではないか?

そう考えが浮かぶと余計に嬉しくなった。

もしかしたら扉は開くと数分後には、閉じる仕掛けになっているのかもしれないがそれでも一時の高揚感に浮足だった。


「それじゃあ扉をあけるよ!」

「ええ、はやく開けてみなさいな。 これで私達が一番乗りですわ」

この時私達はまだ気がついていなかった。

ここで二人が到着するまで待つのが正解だという当たり前の考えに。

だがそれが、私達を分断し先に次の部屋へと突入させたのが真の意図と気がつくのにそう時間は要さなかった。

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