意地悪な門番
「それじゃあ気を取り直して第二問行ってみよー!」
妖精は次の部屋の真ん中に陣どり、また一つしかなかった扉を三つに分裂させた。
つまり今度も三択問題、最悪三分の一の確率で当たる問題だということだ。
「オーケー、フレンズ達。 準備はできた? それじゃあ次は高慢ちきそうなそこのガールに答えてもらおうかな」
高慢ちきとあだ名されたマルゲリータは周りをキョロキョロと見渡すが、徐々に自分に視線が自分に集まってくることで気がつく。
自分がその高慢ちきな女だと思われていることに。
「は! 私のどこが高慢ちきそうですの? 絶対正解してやりますわ!」
「オーケー、ナイス高慢ちきな応対」
妖精は更に彼女のことを煽り、熱をヒートアップさせていく。
冷静さを失わせて、問題をミスらせようという魂胆なのだろうか?
魂胆は読めないが次の問題が発表された。
「それでは問題です。世界の中心にいる虫ってなーんだ?一番ハエ、二番カ、三番アブ」
「なんですのそのイージー問題! 答えは二番目ですわ」
そういってマルゲリータは特に躊躇なく二番目の扉を開けた。
マルゲリータが開けた扉は、また次の部屋へと繋がっていた。
つまりは正解の扉を引いたということだ!
「うおーやった!」
私は答えが全くわからなかったので、内心ドキドキであったが正解にたどり着けたことに素直に喜びを覚えた。
「ちなみになんで真ん中の扉なの?」
「世界の中心つまり真ん中の扉を開ければ正解という問題ですわ!」
マルゲリータは自信満々に胸を張ってそう答えた。
「ブッブッー、正解は世界という言葉の真ん中にカが含まれているから、二番目のカが正解でした」
その解説を聞いて私はゾッとした、一歩間違えれば全滅していたかもしれないからだ。
「ちょっと! 間違ってるんじゃん」
「結果的に正解だったんだからいいでしょう?」
私の突っ込みに勢いよく青筋を立て反論をするマルゲリータ。
「オーケー、オーケー。 こうやって馬鹿だクズだと罵り合う様を見るのはぼくも心苦しいから次はちゃんと解かないといけない問題を用意しておくよ」
「ちょっと! あなたのせいで問題の難易度が上がったじゃないのよ」
私は何も言い返せなかった、いやあえて言い返さなかった。
この時私は本当にこの妖精が、私のせいで問題の難易度をあげたのか疑問に思ったからだ。
二問続けてイージー問題をこの意地悪そうな門番が果たして出すだろうか?
性格的に三問目からが本番で、一気に絶望の底に撃ち落とすということもなくはなさそうだと感じとったのである。
「それじゃあいよいよ本番のショータイム行ってみよー!フォオオオオオオオ!」
この言葉で私は確信した、やはり二問目まではイージー問題をわざと出していたみたいだ。
といっても二問ともまぐれで正解したのだが。
「それでは問題です、次赤毛のボーイに解いてもらおうかな? 銀行強盗を行った男が盗んだ金額を確認しようともしなかったなぜ?」
「……難しいですね」
この問題はおそらくなにかしらの引掛けが用意されているものだ。
例えば金にあまり執着していなかったとか、金額を指定して盗んでいたとかの真っ先にあがりそうな答えは引掛けに違いない。
それをくみ取っての難しいという発言であろう、これならばもしかしたら解いてくれるかもしれない。
こういう時は視点を変えて考えてみるのが一番てっとり早い時が多い。
もしかしたら犯人は確認しなくても知る術を持っていたのではないのか?
そういった視点の転換だ。
「ねえこの問題って制限時間ってあるの?」
「んー特にはないかな? けど考えれば考えるほどわからなくなっていくものだから早く回答したほうがいいかな?」
考えれば考えるほどわからなくなる?
どういうことだろうか、もしかしたら何かしらのヒントなのか?
「随分と意地悪な門番さんね」
「あんまり褒めないでよー」
そういって妖精はひょうひょうとした様子で、嫌味を受け流す。
「もう焦れったいわね、私に何を考えているのか言ってみなさいな」
マルゲリータは激昂して、パーシヴァルに詰め寄った。
「申し訳ございませんお嬢様、今しがた答えをお教えますので……」
そうパーシヴァルさんがいいかけた時であった。
妖精とパーシヴァルさんの顔が微かにだが歪んだのがわかった。
パーシヴァルさんは解けたぞという満足した表情、妖精のほうは不味いといった焦りの表情であった。
「ありがとうございます。 お嬢様、さっきので解くことができました。 犯人には、金額を教えてくれる人がいたんです。 そうマスコミ等の新聞紙でいくら盗まれた
等という情報を」
妖精は焦りの表情から一転悔しいという表情に変わったのも束の間、次には正解を褒め称えるなんとも奇天烈な表情を浮かべた。
「正解! でも次こそが本当の本番だから覚悟しててね?」
妖精は不気味な表情を浮かべて次の部屋へと移っていった。
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