作戦会議
「え? マルゲリータさんが危ないってどういうこと?」
「考えてもみて、奴らこの政略結婚に八億もの賞金をかけるほど本気なのよ。だとしたらライバル候補になるご令嬢の身柄を確保することぐらいは普通にするはずよ」
私はハッとした表情になりしまったと内心焦りを覚えた。
「パーシヴァルさんご令嬢が今どこにいらっしゃるかわかったりしますか?」
「いえ……わかりません」
「クソ……どうしたら」
「落ち着いてお姉ちゃん、こういう時はコールの魔法を操作すれば呼び寄せることができるわ」
「確かに!」
私達は、魔装のある店主の店へと走った。
店主の店へと辿り着くと、挨拶も矢継ぎ早に魔装の調整を始めた。
「これでまだ身柄が無事ならここにやってくるはずだよ、お姉ちゃん」
私は、ドキドキしながらお客さんが一人また一人と入ってくる度に、顔をチラ見しその度に落胆した。
一時間ほど経った頃であろうか。
「なんだかこの店に来たくなったので来てやりましたわ」
あっけらかんとした様子で、ご令嬢はやってきた。
「よかった無事で」
私はご令嬢にハグして、喜びを表現した。
「あらあらいくら私が美しいからといって、お触りは厳禁ですわよ」
ご令嬢はイマイチ状況を理解しないままそう答えた。
「店主さん今日はこれでお暇します。 ありがとうございましたー」
「おう、また寄ってきてなよ」
そう言って店主は私達を見送った。
私達は、自分たちの住むアパートへ四人を集めると今後の作戦について話しあいを始めた。
「要点だけまとめて説明するわ。 この四人で地下大墳墓にある指輪を取りに行く」
「ええ私もですの?」
そういってご令嬢は不服そうな顔をして、反感の意を示した。
「ご令嬢、実はあなたの身柄が拘束されるかもしれないんです。ですから私達についてきてください」
「私が? 誰に?」
「……頭取にです」
そういうとご令嬢の紅色の頬は、一気に青ざめた様子になった。
「どうやら何かお心当たりがあるようですね」
「……ええ、彼らならやりかねませんわ」
「けどお嬢様を連れて行くのは私は反対です。 危険が伴い過ぎます」
男性化したアルテミスことパーシヴァルが反論する。
「誰ですの? この男は」
「えーと、説明するのめんどくさいので指輪を外してください」
そういって私が促すと、指輪を外しアルテミスへと戻った。
その変貌の様子を見て、ご令嬢は驚き腰を抜かしていた。
「改めていいますけど、お嬢様を危険なところに連れて行くのは反対です」
「それは考え方次第ね。 案外追手が来づらい地下大墳墓の方が安全という見方もできるわ」
そう返すとアルテミスは、なにか言いたさげに口をもごつかせるが何も言い返すことはできない様子であった。
「ここにいる皆が異存ないなら、次はダンジョン攻略について話そうと思うわ」
この場にいる者すべてが口をつぐんで、肯定の意を示した。
私は情報共有のため、選抜試験を勝ち抜いて得た情報を教えた。
「……で、地下大墳墓がある北東の街とは具体的にどこなんですの?」
「それはまだわからない」
お姉ちゃんはきっぱりと言うが、皆呆れた顔をした。
「それじゃあ全然ダメじゃないですの」
「ただ思い返して欲しい、あの部屋に不自然なものが一つだけ置かれてあったことに」
「えーなにかあったっけ?」
私は朧気な記憶を掘り返すが、何も浮かんでこない。
「私は見た。あの頭取の席になぜか聖典が置かれていることに」
「聖典が? けどこの国の大部分は聖典の信者だしおかしくはないんじゃ?」
「けどその聖典に付箋が貼られていたとしたら?」
「確かにそうなってくると怪しいですわね」
聖典というのは、基本信者なら子供の頃に暗記させられるものなので、わざわざ付箋を貼るというのは不自然である。
「んーじゃあもしかすれば、その付箋が貼られているページに街の名前が書いてある可能性があるってこと?」
「そういうことになるわね」
私達の地下大墳墓攻略がいよいよ本格的に始まろうとしていた。




