eternal eclipse
こんばんは、遊月です!!
『鍵は閉めておいて~囀ずる声も逃がさない~』エピローグの公開です! どこか謎に包まれていた千佳ちゃん……彼女の心は、どこにあるのか?
本編スタートです!!
「ふふふ、理恵、可愛い……♪」
「ち、か……、千佳――っ、」
シーツをきつく掴んで身体を震わせながら、おとがいを反らした彼女が月光を浴びている様は、やはり私まで昂りを覚えてしまうほど官能的で、やはり彼女がここにいてくれてよかった、と心の底から思ってしまう。
本当は、そんなことじゃいけないはずなのに。
止まることのない心臓が、軋むように痛んだ。
* * * * * * *
理恵が私の知る理恵ではないことには、もう気付いている。
本当の彼女は、あの日、わたしを置いていってしまった、きっともう戻ってくることはない。わたしにはいくことのできない、お父様やお母様と同じところへいってしまったのだ……泣きながら追い縋って、それでも止められなかった。
それからどれくらい経ったかわからないくらいの時間のあと、目の前で息を切らせてぐったりしている彼女が来てくれたのだ。どこか理恵の面影を感じる、けれど幸せに満ちていた彼女とは違う雰囲気を持った、この子が。
『理恵……?』
期待しなかったと言えば、嘘になる。
理恵とよく似ているのに理恵ではない彼女を見て、落胆しなかったわけではない。
だけど、今にして思えばたぶん理恵じゃなくてよかったのかもしれない。長い孤独で擦り切れた心では、理恵のような無償の優しさは苦しいだけだったから。
「は、る、か」
夢の中にいてすらも、泣きそうな声が聞こえてくる。
そうよね、あなたは、理恵じゃない。そのことには気付いているの。
けどね、それを認めてはいけない、あなたも、私も……“あなた”を愛してしまう前に、“はるか”、“はるか”、“はるか”……呼びたくない、“あなた”を知ってしまったら、きっと、私はまた、いつか来る孤独に怯えなくてはいけなくなる。
あなたを求めれば求めるほど、理恵が最後に見せた顔を思い出してしまうの、『千佳を置いていかなくてはいけないことだけが悲しい』と泣いた顔を、思い出してしまう。
最後に握り締めた、シワだらけの手。
あなたもいつかはそうなるんでしょう?
お父様やお母様のように、理恵のように、私を置いて逝ってしまうに違いない……、どうか私の幸せを願うなら、“あなた”の名前なんて教えないで。
理恵、理恵、理恵。
私はこの“優しい日々”を続けるために、理恵とは違う指先で、理恵とは違う声で、理恵とは違う愛撫をしてくる彼女のことを、理恵と呼ぶ。
愛さないように、愛されないように。
夜明けの訪れないこの命が、孤独を思い出さないように。
優しさと共感と愛欲の皮を被ったこの日々を、ただ繰り返す。今日も、明日も、きっと“理恵”がまたどこかへ逝くまで。
前書きに引き続き、遊月です!!
最後は千佳ちゃん視点のお話でした。最愛の人たちに置いていかれた過去を持つ彼女は、きっとこれからも置いていかれるのでしょう。
それぞれに孤独から逃れるため、自身を守るために偽りの言葉を囁き続けるふたりは、どのような未来を歩むのでしょうね。
また別作品でお会いしましょう!
ではではっ!!