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暁の光は遠く霞んで

こんばんは、遊月です!!

2話目の投稿です。慈悲というのは優しさではあるのですが、はたしてその優しさは誰に向いた優しさなのか、ふと考えてみたくなりますよね


ということで、本編スタートです!!

 月も見えないような雨の夜。梅雨時だから仕方ないとは言っても、外を見ていても雨に(けぶ)る暗い街並みが見えるだけではあまりに退屈で、こんなときにはやっぱり、ひとりじゃなくてよかった、と心から思う。

 こんな夜にひとりだったら、きっとわたしは押し潰されていた。そう思いながら見つめる先には、わたしよりもそれなりに幼く見えるひとりの少女。千佳(ちか)は行儀よく手を合わせたあと、じっとわたしを見つめて尋ねてきた。


「ねぇ、理恵(りえ)

「どうしたの、千佳?」

「どうして理恵は、ここにいてくれるの?」

「え?」

「だって、もうお父様もお母様もいないのに、ここにいるのはただの無力で小さな子どもだけだもの。それなのに、理恵はまだここにいてくれるのね」

「もちろんだよ、だって」


 わたしはそんなの知ったことじゃないし。

 一瞬、そう言いたくなった。理恵なんて人は関係ない、千佳のご両親がいないとかそういうのも一切関係なく、遥香(わたし)がただここにいたいからいるだけ。

 けど、もちろんそんな言い方をできるはずがない。


「わたしは、千佳のことが好きなんだから」

「ほんと!?」

 あーあー、そんなに顔赤くしちゃって。

 けど、この顔が1回“そういう”時間になったらあそこまで艶かしくなってしまうんだから、人ってわからない。もしかしたら、わたしじゃない“理恵”との日々で身に付けたものなのだとしたら……そう思うと嫉妬せずにはいられない。

 だって、その今はいない“理恵”は、千佳がそういうことを知らなかった頃からきっと傍で仕えていて、どちらが先に誘ったのかは知らないけど、きっと今ほど慣れていなくて、まだ羞恥を覚えてぎこちない様子での愛撫なんかも経験していそうだから。

 そうか、やっぱりそういうことなのかな。

 千佳と出会う前に言われたことがあったっけ、『もうしちゃってるんだ、つまんないの』って。


 相手からしたら身体目当てでしかなかったのかもって悲しくなって、それっきり連絡もとらなくなって、そんなこと言わないような人とばかり付き合って。

 だけど不思議なもので、みんな“自分の知らないわたし”をわたしの中に見た瞬間、急にわたしに冷たくなった。物を扱うように乱暴に扱われて、用が済んだらそのまま放っておかれっぱなし。また次の人、次の人、と付き合っていくうちに、もう誰も彼も同じに見えるようになってしまった。人というものが怖くて、悲しくて、寂しくて。

 それが全部嫌になって、わたしはここに辿り着いた。

 どんな道のりだったかも思い出せないくらい歩いて、辿り着いたここで、『理恵?』と呼び掛けられたんだ。


 わたしは、千佳の中に自分とよく似た、孤独を見てしまったんだと思う。だから、彼女の勘違いを利用してまで、ここにいたいと願ってしまったんだ。

「ねぇ、理恵?」

「なに?」

「今日も、いい?」

「もちろん」

 わたしは、きっとわたしを捨ててきた人たちと同類だ。でもね、違うことだってある――わたしは、目の前の少女の夢を壊すようなことは絶対にしない。

 もし壊れる兆しが見えたら、そんなものはないと否定する。

 わたしと彼女の間には、“今”があればいい。


 千佳と、千佳の大事な人の思い出を、全部わたしとの“今”で塗り潰してしまいたい。わたしが、“理恵”に代わってしまえばいい、“理恵”は最初からいなくなってなんかいなくて、わたしなんだ、わたしが……千佳に全部教えたんだ。

 そうなってしまえたら、きっと千佳の孤独は癒される。ずっと続く優しい日々のなかで生きていけるんだから、これ以上の幸せはないんじゃないの?


 わたしは今日も、“理恵”の名前を呼ぶ喉を絞めながら、彼女を愛し続けている。誰よりも、彼女を想っているから。


 可愛い、優しい、純粋な千佳。

 どうか明日からも、あなたの世界があなたに優しくありますように――――心の底から願いながら、わたしは彼女の過去を押し潰すように、祈り続ける。

前書きに引き続き、遊月です!!

自分としては受け入れられないながらも、それでもいいと千佳ちゃんの幸せを願うことにした遥香。けれどそれは、同時に遥香にとっても、誰かを愛していられるという意味で、それまで彼女を苛んでいた孤独からの解放をも意味するものでした。


次回、エピローグ的なお話を公開いたします♪

また次回お会いしましょう!

ではではっ!!

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