『オイメシ』、美味しいぞ!
レンの言葉を聞いて、私は笑った。
「君のことだから、また驚くような仕掛けだろう? ぜひ、『オイメシ』をお願いするよ!」
「よっしゃ、追い飯いっちょう!」
すると、いつぞやのミニ・ドンブリに控えめに盛られたライスと、大振りスプーンのレンゲ、小鉢が出てきた。
私は、それを受け取りながら呟く。
「ライスとレンゲは分かるが、この小鉢は一体……?」
中を覗くと、プルプル揺れる固まりかけの卵と、植物を刻んだ赤い物体が入ってる。
「卵か! それと、これは漬物かな?」
「そう、温玉と福神漬けだ。スープの残りにライスを混ぜて、卵と福神漬けを落として食ってくれ」
「ふむ、やってみよう」
私は言われた通り、ホカホカのライスをスープに入れると、レンゲでザックリかき混ぜる。
すると、残っていたスープがライスの一粒一粒に染み込んで、茶色いリゾットができあがる。
さらに上から『オンタマ』と『フクジンヅケ』を落とし、レンゲで卵を突き崩すと……。
「おおおっ……黄身がトロトロと流れ出て、これは旨そう!」
最初は悪趣味でドン引きしてたスープの色も、今は白と黄と赤のコントラストが見事に映えて、美しいとすら思うほどだ……。
と言うか、カレーはめっちゃくちゃ美味しいからな。
それがわかった今となっては、もはや嫌悪感など抱くはずない。
私は、美味しい物にはとことん甘いエルフなのである。
ああ、カレーは偉い。偉いなぁ!
もしもカレーをバカにする奴がいたら、私に言え。
助走つけてジャンプして蹴りくれてやる。
カレー、ライス、温泉卵。
この組み合わせ、マズいはずがないだろう。
胸を高鳴らせながら、レンゲでリゾットを掬って口に入れる。はぐっ。
……むううっ!?
き、期待通りの……いや、それ以上の味だっ!
卵黄のコクがたっぷり絡んで、口に入れてすぐは甘みを感じる。
しかし、一瞬後でスパイスの香りが立ち上がり、だんだん口の中が辛くなる。
その辛さが食欲を刺激して、また次の一口が食べたくなる。
まだらに混ざったゼリー状の白身も淡泊で冷たく、変化があって飽きの来ない美味しさだ。
また、このカレーとライスの合うこと、合うことっ!
『イエケイ』の時にも似たような食べ方をしたが、ライスとの親和性という点では、こちらの方が上に感じる。
粒がそろった弾力のある噛み心地が、メンとは違った存在感で食べるのが楽しい。素朴で優しいライスの味がカレーと劇的にマッチして、濃厚だけどちっとも胃にもたれない。
フクジンヅケは真っ赤なので、さぞ辛いだろうと覚悟して口に入れたが、意外にも辛味は一切なく、ショーユと出汁の効いた甘じょっぱい味だった。
歯応えがポリポリしてて、いいアクセントになっている。色んな野菜を刻んで漬けてあるようだが、数が多い上に味が濃く、赤く染まっているのもあって、よくわからんな。
まあ、こいつもカレーにピッタリなのは間違いあるまい!
ああ、カレー・リゾットを口に入れるたびに、幸せを感じる……。
奇妙な美味だ。
例えようもない美味だ。
味わったこともない美味だ。
異常に美味い。
脳が痺れるほど美味い。
レンゲがカツカツと底に当たって、もう残り少ない事が伝わる……。
カレー味。食べられるのが今回だけなんて、寂しすぎる。
こいつは、私の人生に大きな楔を打ち込んでしまった。
またいつか、レンに頼んで作ってもらおう!
絶対、作ってもらおう。
そして今度は、大盛にしよう!
そんなとりとめもない事を考えながら私はオイメシを平らげて、『カレーラメン』を完食したのであった。
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次回は……『カレー』と『ラメン』




