表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻11月1日発売】異世界ラーメン屋台、エルフの食通は『ラメン』が食べたい  作者: 森月真冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/195

すぐ美味しい『ラメン』

「みんな、どうして驚いているのかしら……?」


 まだピンときてないらしい、マリアが言う。

 ブラドがマリアの肩を掴んで、真剣な顔で問いかけた。


「マリア。ラメンが食べたい時って、普通はどうする!?」


 マリアは平然と答える。


「そんなの、ラメンが食べられるレストランに行くに決まってるでしょ」


 オーリが頷く。


「そうだ。ラメンを作るには、専門的な技術が必要だからな。素人が家で作れるもんじゃねえし、特殊な食材が必要だから、出す店も限られている」


 後を私が引き継ぐ。


「それが、今までの常識だった……」


 マリアが不思議そうに言う。


「今までの……ですって?」


 私は、目の前のドンブリを指さして言う。


「ああ。だが、このラメンは違う。専門的な技術も知識も材料も、料理道具さえいらぬのだ。最低限、必要なのは『インスタントラメン』と一杯のお湯、それを入れるドンブリだけ!」


 マリアがハッとして、口に手を当て目を丸くする。


「あっ!? あああーっ、そ、そういうことなのねーっ!」


 そう。これさえあれば、いつでもどこでも簡単にラメンが食べられるのである。

 ……想像してみたまえっ!


 例えば、旅の途中で野宿した朝。

 朝日に照らされた空の下で目を覚まし、盗んだとて(だれ)(はばか)る事も無い谷川の水を()んで湯を沸かす。

 持参したドンブリに『インスタントラメン』を放り込み、フツフツと煮える湯を掛けたら、小鳥たちの(さえず)りを聞きながら木の枝をナイフで削ってワリバシを作り、ヤクミを刻んで塩漬け肉(ハム)をスライスする。

 ややあって蓋を開けると、なんとそこには美味しそうなラメンが……切った塩漬け肉とヤクミを上にのせれば、完成だ。

 爽やかな朝の空気を吸いながら、大自然の中でラメンを食べられるなど、なんという至福っ!


 あるいは、自宅での気だるい昼。

 外はザアザアと大雨が降っている、腹は減ったが着替えて出かけるのは億劫(おっくう)だ。

 少しばかりの買い置き食材はあるが、料理するのは面倒だし、乾いたパンとチーズだけの食事なんて(わび)しすぎる……そんな時、ふと戸棚の奥に『インスタントラメン』があったのを思い出す。

 湯を沸かし、ドンブリにラメンを入れて生卵を落とし、お湯を注いで待つことしばし。

 蓋を取ると、そこにはホカホカと湯気をあげるラメンが……人目を気にすることもなく、だらしない格好のままでおもむろに半熟の卵を突き崩し、メンに絡めてズルズルと豪快に啜りこむ。

 家にいながらパジャマのままで、手軽にラメンが食べられるなど、なんという贅沢っ!


 もしくは、遠い異国の夜遅く。

 旅先の見知らぬ街で浮かれ、しこたま酒を飲んで酔っ払ってしまう。

 夜更けすぎに宿へと戻った後で、ふと空腹を覚えるが、もはや飲食店などやってる時間ではない。

 だけど慌てず宿の主人に一杯のお湯を所望し、持参したドンブリに『インスタントラメン』を入れるのだ……湯を持ってきてくれた主人に礼を言い、ドンブリに注いで蓋をして窓の外を見ると、月に照らされた静かな街並みが広がっている。

 幻想的な風景にしばし見惚(みと)れて、ふと気づくと良い匂いが漂ってくる。

 蓋を外すと、そこにはアツアツのラメンが……酔いが回った胃袋と舌に、汁気たっぷりでしょっぱいラメンは堪らんだろうなぁ。

 時間も場所も気にせずに、好き放題ラメンが食べられるなど、なんという極楽っ!


 私は改めて、目の前のラメンを味わった。


 メンが柔らかい?

 スープにコクとパンチが足りない?

 具材が貧弱?


 そんなもの、『お湯を掛けて待つだけ』という利便性の前では全てが消し飛ぶ!

 メンは長くてツルツルと啜れ、熱いスープはチキンエキスのショーユ味。

 ドンブリの中に存在するのは、紛れも無くラメンなのだから。


 言わば、こいつは『すぐ美味しい、どこでも美味しいラメン』なのであるっ!


 誰もが欲しがる。手土産に、日々の食事に、携行食(けいこうしょく)に……何にでも使える。

 もしもこいつをファーレンハイトで売り出せば、あっという間に億万長者になれるだろう。


 オーリが、喉をゴクリと鳴らして言った。


「な、なあ、レン……。この、『インスタントラメン』の製造法だけどよぉ……?」


ダルマさんが転んだ、ダルマさんがしゃがんだ、ダルマさんが政治に口出したぁーッ!


や、やっちゃったー……。

皆さまも、病気にお気をつけください。

ブクマ、評価をよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] この前みつけて一気に読ませていただきました いやー面白いです、どんどん読み進められますし ラーメンが食べたくなります 次の話しも待ってます インスタントラーメンはなんだかんだいって ○清の…
[良い点] 何か妙に文に実感があるのは作者様の実体験なのかと・・・w とくに『あるいは、自宅での気だるい昼~』のあたりからw まあ σ(^_^;)も似たような物ですがw [一言] 製法教えるんかなぁ?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ