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【2巻11月1日発売】異世界ラーメン屋台、エルフの食通は『ラメン』が食べたい  作者: 森月真冬


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禍々しき『ラメン』

 そのラメンを一目見て、全身の毛穴が開いて汗が噴き出た。 

 レンの作ってくれるラメンは、どれも私たちの予想のつかない味だった。

 だが今回ばかりは、そのラメンが『どんな味』なのか、簡単に想像がついてしまった。

 だってその『ラメン』からは刺すようなトウガラシの匂いが漂っており、スープの色は禍々(まがまが)しくも煮えたぎる地獄の溶岩のように真っ赤なのだから……。


 これは間違いなく、『辛い』ラメンであるっ! 


 三日前のことだ。

 レンは帰ろうとする私たちに、「みんな、次のラーメンを食べにくる時は、万全の体調で来てくれよ。もしも調子が悪かったら、家で大人しく寝てるのが身のためだぜ?」と不敵に笑った。

 まるで、決闘前の捨て台詞である。私たちは「なに冗談を言ってるんだよ、レン!」と笑いあっていたのだが……むむう、あれは決して、冗談を言ってるわけではなかったのだな。

 引きつった顔の私たちを見回して、レンが腕組み顎上げのポーズで言う、


「こいつは、『激辛系』ってジャンルのラーメンだ。まあ、見りゃわかるだろうが……とにかく辛いっ! めちゃくちゃ辛い! ひたすら辛いっ! ……しかし、ただ辛いだけじゃねえんだぜ? このラーメンの真の魅力は、言葉じゃ語り切れねえんだよ。とにかく、身体で試してもらうしかねえ。さあ、食ってくんな!」


 しかし誰一人、ラメンに手を付けようとしない。

 みんな怖じ気ついて、ワリバシを手に取ったまま固まって、動けない。

 ……正直、私も怖かった。

 だってこのラメン、見るからにヤバそうなんだもんっ!


 だが、いつまでもこうして固まっているわけにはいかぬ。

 ラメンとは、出来上がりが一番美味い料理なのだ。時間が経てば経った分だけ、味がどんどん落ちていく。メンが伸びるし、スープも冷める。せっかく作ってくれたラメンを不味く食べるなど、一生懸命に作ってくれたレンに悪いではないか?

 この状況を打破(だは)するには、まずは誰かが動かねばならぬ……ならば、私だ。

 だって私の心は、レンへの信頼感でいっぱいだから。

 私は、レンが好きだ。レンのラメンが大好きだ。

 レンが出してくれるものが、マズイはずなかろうなのだ!

 ベジポタケイのラメンではオーリに先を越されたが、今度は私が率先(そっせん)してラメンを食べて、皆を導こう!


 深呼吸をひとつ……私は、ワリバシをパチンと割った。

 その音で、他の三人がハッと気づく。

 彼らを安心させるように、私は明るく笑いかけた。


「みんな、今までレンが作ってくれたラメンが、不味かった事があったかね? さあ、今宵(こよい)もまた、共に新しきラメンの扉を開こうじゃないか!」


 毒々しいほど真っ赤なスープの上には、真っ白なモヤシが乗っている。そのコントラストは色も鮮やかで美しく、溶岩の中に浮かぶ雪白(せっぱく)の流氷を思わせた。

 ワリバシをドンブリに突っ込むと、モヤシが崩れてスープへと沈む。それをかきわけ黄色いメンを持ち上げると、トウガラシの粒が無数に絡まっている。

 それを、数秒だけジッと見つめ……覚悟を決めて、皆に見せつけるように笑顔のままで、真っ直ぐに口へと運んで、勢いよく(すす)りこんだ。ズルルルルーッ!

ズルルルルーッ。……その後は?


次回は……今度こそ、燃えよド『ラメン』!


今回、短くてすみません。ちょっと事故にあって怪我してしまい、予定に間に合いませんでした。

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― 新着の感想 ―
読んでるだけで汗が出ます
[一言] 某スープカレーの涅槃辺りから入れる唐辛子が合わなくて15分毎にトイレに駆け込む苦行を12時間味わったのを思い出した。
[良い点] ある意味 最後の一手 ともいえるラーメンが出てきましたね・・・ これは天国か地獄か・・・どっちだ? [気になる点] 異世界にも唐辛子やハバネロ、ブートジョロキアとかあるんだろうか・・・ […
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