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【コミカライズ5月1日発売】異世界ラーメン屋台、エルフの食通は『ラメン』が食べたい  作者: 森月真冬


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198/200

〆の『ラメン』

 煮込むことしばし……カチカチのメンが柔らかくほぐれて、薄く朱色に色づいてきた。

 二、三本を持ち上げて、味見したオーリが言う。


「よっしゃ、いい頃合いだぜ!」


 その声に私も、自分の皿へとメンを移す。

 以前、食べたインスタント・ラメンは平べったくてかなり細かったが、このメンは中細といった所か。

 食べてみるとやはり小麦の香りが薄く、柔らかくて油っぽい。悪い言い方をすれば、安っぽい味わいだ。

 だけど酒を飲みながらだと、この濃い味が染みたチープなメンが、なんとも言えず美味しく感じるな……。


 けっこうスープが残ってたはずだが、乾いたメンに吸われたのか、もはやわずかな汁が溜まるだけだ。 

 底に沈んでいた様々な具も、姿を現す。

 煮溶けたキムチや砕けたトウフ、豚肉の脂身などが絡んだメンをズルズルと啜り、合間、合間にエールを飲み干す。

 小さな欠片は、最初に入れた『ツナカン』だろう。つまんで食べると、特徴的な魚の風味がした。

 ツナカンの正体みたり、マグロの油漬けである!

 そんなこんなで私たちはすっかり酔っ払い、鍋に残ったスープも一滴残らず掬い上げ、二人で綺麗に食べ尽くしたのだった。



 各々のテーブルの鍋はそれぞれのペースで食べ進めるため、まだ食事が終わってないグループもある。

 一番早くに食べ終わったのはジュリアンヌの従者たちのテーブルで、私たちは二番目だ。食べ終わったダルゲとミヒャエルは、ジュリアンヌのそばに控えて、色々と世話を焼いているようだ。


 手持無沙汰になった私たちは、エールを片手に他のテーブルを冷やかしに行く。

 オーリはブラドとマリアのテーブルに、私はレンとジュリアンヌのテーブルに向かった。


「レン。鍋ラメン、美味かったよ。なんというか、()()()()()()雰囲気が、実に良いね」


「おう、リンスィールさん。そりゃよかったぜ」


「……おや? こちらは、さほど食が進んでいないようだね」


「ジュリアンヌが、あまり食わなくてな。……まあ、こいつが求める味とは方向性が違うのは、最初っからわかってたけどよ。こういう味も経験させておくべきだからな」


「うむ。辛くて味が濃いのは、貴族的な味わいじゃないからね。どちらかと言えば、肉体労働者が好む味だ」


「だよな。それに鍋料理ってのは、水分が多くて腹にたまりやすい。ボリューム的に、酒を飲みながら食うのが前提なとこがあるしな」


「へえ! そうなのかね?」


「ああ。ただの水を1リットル飲み干すのはキツくても、酒ならそれくらい飲めるだろ? アルコールが体内に吸収される時、水分を一緒に連れて行くんだよ。その分、胃や腸に空きが増えるのさ」


「タルタルが好きそうな知識だな。今度、話してやろう……。ジュリアンヌ嬢、ラメンはどうかね?」


 私が聞くと、ジュリアンヌはやや困惑した顔で言う。


「そ、そうですわね……。わたくし、料理というものはシェフが厨房で調理して、完璧な状態でお客様にお出しするものだと思ってましたわ。ですから材料を目の前で放り込んで、煮えた物から勝手に食べるというのは、少々驚きましたわね」


「なるほど。貴族らしい視点だね」


「ですが……」


「だが?」


 そう先を促すと、ジュリアンヌはフッと笑って、湯気越しにレンの顔を見つめる。


「誰かと同じ鍋を囲み、食事を共にする……色々な味を知り、見識を深めるという意味では、今回の食事はとても楽しいものでしたわ。よい経験をさせていただきましたわ」


「おお、そうかね!」


 二人は直接の会話ができぬはずだが、ジュリアンヌはレンの思惑を、ちゃんと読み取ったようだった。

 どうやら、良き食事会となったようである!


 それにしても、初めて会った時は所かまわず噛み付く狂犬のような危うさで、幼児のようなワガママ振りと、年頃の少女とは思えぬ生意気さに呆れたものだが……。

 気のせいか、今日のジュリアンヌは大人っぽく見える。一人前のレディとして、成長しつつあるのかもしれないな。


 と思ったら、急に椅子の上に立ち上がって、


「まあ、でもっ! どのようなお下品な料理も、わたくしならば貴族にふさわしく、エレガントに仕上げる事が可能ですわ! ごく近いうちに、あなたにもその証拠をお見せいたしますわよー! オーッホッホッホ!」


 と、高笑いを始めた。

 ……いや。生意気なのは、生意気か。


「しかし、まだ半分か。このペースじゃ、全部は食べきれないんじゃないか?」


 鍋を見つめて私が言うと、ミヒャエルとダルゲが胸をドンと叩いた。


「そういうことなら、お任せでヤンス!」


「わてらは、まだまだ食えまっせ!」


 呆れた私は、レンに言う。


「おいおい。こんなこと言ってるぞ、レン……」


「まあ、いいんじゃねえの? 残すよりは食ってもらった方がいい。俺も、そろそろ腹いっぱいだ」


「同感ですわね。ミヒャエル、ダルゲ。食べておしまいですわっ!」


「「あーいあいさー!」」


 二人はスチャッと敬礼すると、ワリバシとジョッキを手に、ものすごい勢いで鍋を食べ始めた。


「タダ飯タダ酒。ありがたいこっちゃで!」


「ウシシシシ、大樽エールが飲み放題! 夢のようでヤンスなぁ」


「こんな(もよお)しならば、毎週でもやって欲しいもんや」


「同感でヤンス。普段は他の使用人たちの目もあって、こんなに好き勝手飲めないでヤンス!」


 みるみる鍋が減っていく。

 と、オーリが私を「おーい!」と呼んだ。

今日は僕の誕生日です。

お゛酒゛飲゛む゛っ!!

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おめでとうございます!
誕生日おめでとうございます
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