表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ5月1日発売】異世界ラーメン屋台、エルフの食通は『ラメン』が食べたい  作者: 森月真冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/200

おてがる簡単『キムチ』鍋

 レンが、サラに目配せをする。

 サラが指をパチンと鳴らすと、コンロの火が次々と灯り、弱火で鍋を熱し始めた。


「本来、キムチ鍋には熟成が進んだ酸っぱいキムチを使うんだがな。今回は日本風の浅漬けキムチだから、それ用の作り方でいくぜ! まず、ツナ缶をオイルごと鍋に入れる」


 レンは机の上から、小さな何かを手に取った。

 オーリも、同じ品を手に取る。それは平べったい円筒で、上面には金属のリングがあった。

 振ってみると中でタポタポと、液体が揺れる音がする。

 レンがリングを引っ張って、蓋を開けた。オーリが同じようにしてみると、金属がメリメリとめくれてパッカンと開いた。


 おおっ、そうやって開けるものなのか!?

 中に入っていたのは、ベージュ色した何かの身の油漬けだ。熱を通してあるらしい。

 ツナカンはおそらく、『瓶詰の金属版』である。密封することで、保存性を高めているのだ。我々の世界でも似た物は作れるだろうが、指で引っ張っただけで蓋が開くというのは、一体どういう原理か見当もつかない。

 ドワーフのオーリも目を丸くしているから、かなり高度な技術に違いない。

 後で、私も開けてみたいなぁ……。


「次に、キムチの葉っぱの部分を油で炒めて、香りを出す! 熟成キムチだと、ここで白い部分も入れて、弱火でよーく炒めて酸味を飛ばすぜ。それから、ニンニクと生姜のチューブをひと垂らし」


 オーリがツナカンを鍋に入れて、キムチの薄い葉と、回ってきた生姜とニンニクの『チューブ』とやらを入れた。おそらく、おろし生姜とおろしニンニクである。

 そこかしこのテーブルで、ジュウジュウと材料が焼ける音がする。


「豚肉だ。脂身が三分の一くらいの豚バラで、厚さは8ミリ前後だな。ちなみにこの肉は、ジュリアンヌからの提供だぜ」


 ジュリアンヌが立ち上がり、優雅な一礼をしてみせた。

 ふむ? てっきり、高笑いでもして、「オーッホッホッホ! わたくしが一流の豚肉を食べさせてさしあげますわー! 庶民の皆様、感謝なさぁい!」とでも言うかと思ったが……。

 疲れてるのか機嫌がいいのか、今夜はずいぶん大人しいな。


 オーリが豚バラ肉を入れる。

 じっくり両面を焼くと、やがて全体に脂が滲み、端っこがカリカリに香ばしく焼けてきた。


「肉に熱が回ったら、水を一リットル。それから、残ったキムチと汁を加える。鍋のベースは、今回は味噌だ。机に置いてあるインスタントラーメンを開けて、銀色の小袋の中身を入れてくれ」


 レンが掲げたインスタント・ラメンを見て、サラが歓声を上げた。


「で、出た~! サポ(いち)っ! 机に置いてあるの、ずっと気になってたのよねえ」


 レンが苦笑しつつ、尋ねる。


「サラさんは、インスタントはサポ一派かよ?」


 サラは遠い目をして語りだす。


「大学の生協に置いてたのが、それだからね。青春の味だわ! 思い出すなぁ……深夜の研究室。誰が置いて行ったかわからない古ぼけた雪平鍋で、ラーメン作ってハフハフ食べたっけ」


 銀の小袋には、褐色の粉末が入っていた。

 鍋に振りかけるとあっという間にお湯に溶けて、スープに色がつく。


「最後に、野菜炒め用のカット野菜一袋と切った豆腐、今回は絹ごしだな。を入れて、味の仕上げは七味スパイスと塩コショウだ。この塩コショウにはアミノ酸、いわゆる化調も配合されてるぜ!」


 指示通りに残った材料を全て入れて、軽く塩コショウ……。

 インスタント・ラメンはまだ、入れないらしい。

 鍋からは唐辛子の香りと湯気が立ち上り、材料がグツグツと煮えている。

 作り手のオーリも、そろそろ頃合いと判断したようだ。


「よっし、もういいだろ」


 と、声をかけた。

 本当に、ビックリするくらい簡単だったな!

 私がワリバシをパチンと割ると、他のテーブルでもパチン、パチンとワリバシの音が次々に鳴る。


 さて、どれから食べるかな?

 まずはメインの食材である、キムチの味を見てみるか!

 熱が通って半透明のキムチを取り皿に移し、口に入れると……ほほう!

 生の時とは違って、葉っぱはクタクタ、白い部分はわずかにシャッキリ。熱いスープをたっぷり吸い込み、噛むとジュワっとピリ辛の汁が滲み出る。


 他に野菜類は、モヤシ、キャベツ、ニンジンに、タマネギとニラか……。

 どれも一口サイズで食べやすい。ミソの塩気が、キムチの辛味やコクと良く合うな。

 適度に熱が通っていて、しょっぱ辛いスープの中で野菜の甘さが際立っている。


 お次は豚肉だ。おお、これは……!

 脂身を前歯でサックリ噛み切ると、口の中で甘く脂肪がとろけるよっ!

 スープの味がやや濃い目だから、この油っこさが堪らぬな。

 赤身の部分はギュムギュムとして、噛むほどに肉の旨味が滲み出る。なんともワイルドな食感だ。


 最後は『トウフ』。

 実は、私が一番気になっていたのが、この謎の食材である。

 こいつは一体、なんなのだ……?

 真っ白くて真四角で綺麗にピンと角が立ってて、とても自然の物には見えぬ!

 今は朱色のスープに煮立てられ、薄く色がついている。


 ワリバシを伸ばして、掴み取ろうとすると……なんとっ!?

 トウフは無残にも、中胴(ちゅうどう)から真っ二つに千切れてしまった。

 慌てて片割れを掴もうとすると、それもまた二つに割れた。


 ……こ、これは……困ったぞ。

 トウフの身はあまりに柔らかく、食べたいのにワリバシで掴めぬのだ! 

 持ち上げようにも重さで崩れる。一応、砕けてスープに浮いた欠片くらいは、掬い取ることはできる。が……あまりにも量が少なくて、食べても味がよくわからぬ。

 実体があるのに持つことができず、口に入るのはわずかな欠片ばかりとは……。

 な、なんと(かそけ)き食べ物かっ! 理不尽(りふじん)すら感じるぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
豆腐初心者は大人しくレンゲで掬うがよい……
くそ!〆ラメンなんて犯罪だ!逮捕する!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ