表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/67

ステインvs男

ステインはゆっくりと皆んなに目配せする。


「ス、ステイン殿・・・」


ケルピー・・・


「ステイン兄ちゃん・・・」


ハク・・・


「兄上・・・良かった」


フェニ・・・


「お、お父様なのです!お父様なのです!」


シトリン・・・


「ステイン・・・待ってたよ!」


そして、マリン。

皆んな傷だらけだった。


そして、吹き飛ばした男を見る。


「・・・お前、影の男か?本体がその姿か?」


「グ・・・『器』が!」


男が霧を集める。

霧を取り込み、今のステインの攻撃も意味がなくなったように回復する。


「宿屋のおっちゃんと奥さんも・・・ありがとう。マリン。皆んなと離れていてくれるか?」

「うん!おじちゃんとおばちゃんが守ってくれたよ!」


マリンを降ろす。

そして回復が終わった男と向き合う。


「お前、名前は?」

「私の名前ですか?今更聞いてどうします?」


ドンッ!!


地を蹴り一気に距離を詰めるステイン。


「!?」

「別にどうもしない。呼び名が無いと不便だと思ったが・・・」


ゴンッ!!!!


「ガハッ!?」

「確かにぶっ飛ばすのには関係ないな!!?」


男の腹に拳を叩き込む。

浮き上がった身体に追撃をかける!


「オラア!!!」


ドンッ!!!


「クウウッ!!!??」


ステインが放った蹴りを何とかガードした男。

それでも身体が流される。


その隙をステインは逃さない!


「『気功術』!!『エンチャント・アーム』!!」


気と魔力を併用するステインのスタイルで追撃した!


「その程度!!」


ガンッ!!!


男に防がれる。

ニヤリと笑う男。

ステインの拳を掴み、不敵に笑いながら言う。


「ハハハッ!!!随分弱っているようですね!?全く力が篭もっていませんよ?」

「・・・そうだな。俺の力は今、消耗しきっているな。」


男の言葉に拳を引き剥がしながら答えるステイン。

マリンを中心に集まっていた皆んなが心配そうに見ている。


「いかんな・・・ステイン殿に何時もの力が無い。」

「うん。今の攻撃も単純な身体強化だけだった・・・」

「兄上が意識を失った状態と変わりません・・・」

「うう、お父様・・・」


ケルピーがハクがフェニとシトリンが不安そうにステインを見る中、マリンは自信ありげに言う。


「大丈夫!!ステインだよ?」


マリンの言葉にケルピー達は顔を見合せると笑い始める。


「そうですな!ステイン殿でした!」

「僕等の兄ちゃんがこの程度なわけないよね!!」

「ええ!兄上が負けるはずありませんものね!」

「お父様が最強なのです!」


その様子を見ていた男は面白くなさそうに言う。


「随分な信頼ですね。」

「ああ。」


自慢げに頷くステイン。

男は顔を怒りの形相に変えていく。


「『器』が!!調子に乗るなよ!!!!」

「!!?」


ゴウッ!!


男の身体から赤黒いオーラが溢れる。


「魔人の力を思い知れ!!」


ゴウッ!!!!バキイイイイイイイッ!!!!!


男が繰り出した蹴りをステインはまともに受ける。


ズザザザザッ!!!!


滑るように吹き飛ばされるが、ステインは倒れることはない。

ぐいっと蹴られた顔を拭うと不敵に笑う。


「随分余裕がないな?弱っている俺に対して何を焦っている?」

「なんだと!?」


何時もの勢いがないステインだが、余裕がある行動を見せ、男の焦りを煽っている。


「影に逃げていた男が本体まで出してきてその程度か?立派なのは頭の角くらいだな?いや、見掛け倒しか?」

「・・・この角は魔人と繋がっている証明だ!!」


飛び込んでくる男。

ステインは冷静に真向から迎え撃つ。


「ふんっ!!!」

「はああっ!!!」


ドドドドッ!!!


お互いに攻撃の手を緩めずに撃ち合いをする。


ドゴンッ!!!ズザザザザーーー


またステインが吹き飛ばされるが、やはり倒れない。


男は不気味な物を見るようにステインを見る。

力は現状、男の方が上である。


というより、ステインが全開だったとしても今の自分なら互角の筈だと考える。

弱っているステインが自分の攻撃を耐えられる筈がなかった筈だ。


しかし、ステインは先程から幾らかの攻撃を受け、後ずさりながらも倒れる事だけは無かった。


「な、なんなんだ!?お前!!」

「はあ?何が?」

「私の攻撃を何故耐えられる!?」

「ああ。お前の攻撃が軽いからだろ?」


ニヤリと笑みを浮かべるステインに男のイライラが募る。


「舐めるな!!」


キイイイイイイイイイイイインッ!!!!!


赤黒いオーラが男の手の平に集まる。

今までで一番のオーラが男から放たれようとしている。


「はあ・・・お前、それを俺に撃つのか?」


ステインは呆れた顔をする。


「自分の技でやられるが良い!!!」


ドシュンッーーーーーーーーーーーー!!!!


黒い光線、『ブラスター・レイ』である。


一瞬で目の前に迫る光線を避けようともしないステイン。


チュドオオオオオオオオオオンンンッーーーーーーーーーーーー!!!!


爆発がステインを包む。


「思い知ったか!魔人の力を!!」


その光景を誇らしげに見る男。

興奮した男は更に興奮して言葉を続ける。


「貴様が『器』として機能していれば私以上の力を行使出来たものを!!」


パラパラ・・・・・・


衝撃が収まり、破壊された地面や木々の破片が舞い落ちてくる。


「死んでいても構わないんだ!貴様の身体だけあれば『器』としては充分だ!私が魔人の為に活用してくれよう!死しても尚、破壊の魔人として貴様の肉体だけは生き続けるのだ!!!!」


感極まった男が空を見上げる。


チラッとマリン達の方に視線をやると、揃って笑顔を浮かべていた。


「・・・何を笑っている?『器』は死んだぞ!?」


「あははははっ!!!あの人、馬鹿だーー!!」

「クククッ!マ、マリン様、あまり言わないでください!」

「ふふふ!滑稽ですわね?」

「に、兄ちゃんが、あんなので?ブフッ!!!」

「お、お腹が、痛い、のです!」


男が声をかけると笑い転げるマリン達。


男は激昂する。


「何が可笑しい!!」


「お前の頭の中じゃないか?」

「!!??」


男の声に応えたのは、煙の中から現れたステインだった。

男は驚愕する。


確かに技はステインの物だったが、今の『ブラスター・レイ』は魔人のオーラを込めたオリジナルと言ってもいい。

威力はステインが放つものよりも絶対に上であった。


それを、傷もなく受け止めたのか?と男は驚いている。


「元々俺の技だったけど、気持ち悪い使い方をしてくれるな?」

「な、何故!?直撃した筈だ!!」


ゴウッ!!!


今度はステインの身体から白いオーラが溢れる。


「やっと現実でも身体に馴染んできたよ。待たせたな?」

「な、なんだ!?その力は!?」


確かに今まではステインの方が力負けしていた。

男は勝利を確信出来るくらいには力の差があった。


しかし、ステインは肉弾戦を仕掛ける事で時間を稼いでいただけだったのだ。

精神世界で使っていた『聖気』を現実世界で行使するために敢えて拳を交えていた。


肉弾戦でもステインが押されていたが、皆んなが勘違いしていた。

ステインの圧倒的な気と魔力にその力だけを皆んな注目してしまっている。


しかし、ステインは技術力も優れているのだ。

その技術でステインは肉弾戦において男の攻撃を受け流していた。

でなければ、ステインも男の攻撃を受けて平気な顔は出来なかった筈だ。


そして稼いだ時間で『聖気』の感覚を掴み終わった後、放たれた黒い光線を『聖気』を使って受け切って見せたのだった。


ザッ!!


男は思わず後ずさる。


白いオーラが溢れるステインはいよいよ男に向かって言い放つ。


「待たせたな?」

「く、来るな!!」


逃げようとする男。

しかし、ステインは逃がさない。


そして、言ってやるのだ。


「俺の家族に手を出して逃げられると思うなよ!!!」

「!!!!!?????」


ゴオオオッ!!!!


白い輝きが増していく。


握り込んだ拳を突き出しながら、ステインは宣言する。


「お前は、そこに、埋まっていろ!!!」

「!!?」


男の頭上に一瞬で詰め寄ったステインが拳を振り下ろす!


ゴシャッ!!ズゴオオオッ!!!!!!


地面にクレーターを作り上げ、男はその中心へと減り込んで行った。


スタッと着地したステインは満足げにその穴を見ていたのだった・・・




まだ続きます。

思ったよりも長い章になってしまいましたが、もう少しお付き合い下さい。

お読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ